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変わりやすいもの
荒木翠子
秋澄む気候の良い週末、登山に出掛けた。向かったのは大分県由布市にそびえる標高1,583m の活火山である由布岳。最近登山にハマっている。山に対して心躍らせているわけではなく、山ガールという響きに憧れているのかもしれない。
福岡から高速に乗り、1 時間半かけて登山口に到着した。一緒に登り始めたのは職場の陽気な先輩たち。既に標高が高く肌寒いため、上着を羽織り、軽やかな足取りで歩み始める。まずは緩やかな丘を登る。すぐに息が切れ、暑くなってきた。上着を脱ぎ、さっそく息が切れてしまう日頃の運動不足さを恨めしく思う。20 分ほど丘を登ると、広場に着き、最初の分かれ道。私たちは由布岳正面登山道を進む、はずだった。始めは岩階段が続き、前日までの雨で濡れている岩面に足を滑らせまいと、足元ばかり注意して登っていた。途端に先輩が「あ、鹿だ!」と。野生の鹿だなんて物珍しくて、一同は興奮していた。おまけに数匹の可愛らしい群れで走っており、早くも登山に来た甲斐があったなぁ、とほくほくしていた。一通り鹿を楽しみ、再びそのまま道を進む。あれ?こんなに特徴のないルート、何を頼りに進んでいるの?私たちの中に微かな懐疑の念が。しかし、そうこうしていると後ろから他の登山者たちが追いついてきた。この登山者たちはずいぶん前に私たちを追い越していった人たち…。いつの間にやら私たちはショートカットをしていたらしく、「あれ~、いつの間に追い越されました~?」「僕たち迷ったかと思っていましたけど、人がいて安心しました!」なんて声を掛けられ合流し、初対面の人たちと安心し合ったのも束の間。進めば進むほど勾配は急になり、ぬかるむ足下。必死で木の幹を掴みながら、一歩、一歩、登る。どこで道を間違えたのだろうか。そうは言っても私たちは土木屋。道を開拓していくことには強い…はず。そこから頭を悩ませ、どうにか土木的に解決したいという想いを押し殺しながら、文明の利器であるスマホアプリを駆使すると、正規のルートから大きく東に逸れていることが判明した。であれば、西に進むしかない。そこから1 時間ほど、岩をよじ登り、更に沢を越えると、まだだいぶ西側にようやく登山者の姿が見えた。私たちはどれほど東に逸れていたのか。この最後の雑木林を真横に抜けると、ようやく正規ルート。雑木林に入ると、硬い枝の低木が肌を刺激する。あ、ここは有名なミヤマキリシマの群生地。花期のシーズンであれば、きっとうっとりするほど一面鮮やかなピンクの花の絨毯。しかし今はただ痛い。そういえば、半ズボンで来ていた先輩の足は大丈夫だろうか。その後は子供の背丈ほどあるススキの草原を抜け、ようやく正規ルートに出た。突如草むらから笑顔で飛び出てきた一向を見て、通り掛かりの登山者は驚いていた。誰にとっても、登山ってハプニングだらけ。
あとはひたすらルートに沿って登り、ようやく山頂目前。由布岳には西峰と東峰という二つの山頂があり、最後の岐路をマタエという。実は、山頂よりもマタエから見た景色がとても素晴らしかった。汗ばむ身体に冷たい風が心地よく、雲の流れはとても早い。雲の流れの切れ間を縫って、何度もシャッターを押した。この辺りは晴れたり、曇ったり、暑くなったり、寒くなったり。紆余曲折あり、とても疲れた登山だったが、すっかり景色に心を奪われ、そしてまた、登りたいと思う。やはり、山の天気と秋の空、そして女心は変わりやすい。

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