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地すべりにより被災した瀬目トンネルの
迂回トンネル工事への取り組みについて
児玉多美

キーワード:地すべり、トンネル、分岐施工

1.はじめに
一般国道445 号は一級河川球磨川の右支川川辺川に並走しており、熊本市と人吉市を結ぶ主要幹線道路(第二次緊急輸送道路)で地域住民の日常生活や地域産業にとって重要な路線となっている。
その国道445 号上にある瀬目トンネルは、熊本県球磨郡五木村に位置(図- 1 参照)し、川辺川ダム建設事業に伴い水没する国道445 号の付替道路として、平成5 年から平成7 年にかけて、国土交通省(当時:建設省)により造られ、完成後の平成8 年3 月に熊本県が管理を引き継いだ。

平成12 年には、トンネルの覆工コンクリートに亀裂が発見され、それ以降亀裂やコンクリートの剥離が進行したため、専門家からなる委員会に諮った結果、トンネル中央付近において当初の想定よりも深い位置に地すべり面が存在していることが原因であることが判明した。
その後、応急対策を行い効果を検証した結果、依然としてトンネルの変状が進行していたことから、大規模地すべりを回避した迂回トンネルによる恒久対策を実施した。
本稿では、瀬目トンネルに変状を来した地すべりの概要や迂回トンネル工事の概要について報告する。

2.既設トンネルについて
(1)瀬目トンネルの概要
既設トンネルの諸元は下の図表のとおりである。

(2)建設当時の計画
建設当時の計画は、トンネル案、土工案及び橋梁案を比較した中で、図- 4 のように当時の調査で把握されていた層厚40m 級の地すべりの影響に配慮し、トンネルで地すべりを回避する案を採用していた。
また、一般に地すべりとトンネルの離隔は2D(D:トンネル径)であるが、安全側に3D 以上離した位置に設けていた。

3.地すべりの概要
既設トンネルに影響を与えていた地すべりは、幅約310m、長さ約555m、層厚約100m と非常に大規模であり(図- 5、6 参照)、西側(谷方向)に滑動している。
トンネルの中央付近約140m 区間において、地すべり土塊がトンネルを東側(山側)上方から西側(谷側)下方に押し潰すような形で、すべり面が接している(図- 5 参照)。

このため、側壁~アーチ部分には亀裂・剥離等が多数発生(写真- 1 ~ 3 参照)しているが、道路面や両側の坑口には変状が認められなかった。また、地すべりそのものは5㎜ / 年程度の緩慢な動きで、降雨時には変位量が増大する傾向があった。

4.維持管理について
本トンネルでは、覆工コンクリートの変状を確認した後も、(1)応急対策工事、(2)監視体制の強化により通行の安全を確保したうえで、一般通行への供用を継続していた。

(1)応急対策工事
 ①H型支保工
覆工コンクリートの補強対策として、平成13年から26 年までの間にH型支保工(H125 又はH200)を約50㎝の間隔で設置した。併せて、コンクリートの落下防止のため金網を設置した(写真- 1 ~ 3、図- 7 参照)。

 ②水抜き対策工
地すべり抑制工として、平成21 年から24 年までの間に水抜きボーリングをトンネル山側に17 本、谷側に6 本施工した(図- 8 参照)

(2)監視体制の強化
日常点検や緊急点検、変状の観測等、表- 2 に示す監視体制により一般通行の安全を確保した。

5.恒久対策工
(1)対策工法の検討
本トンネルでは、恒久対策として表- 3 に示す工法を比較、検討した。

地すべり活動を停止させる規模の対策を実施する場合、地すべり規模が非常に大きいため、案1-1 ~ 1-4 の4 案では、工費、工期、周辺環境への影響の面から課題が多く、採用は難しいと判断した。
そこで、地すべりを回避する方針とし、案2-1~ 2-3 の3 案中から、経済的かつ短期間で工事完了が見込まれる案2-1 の迂回トンネルルート案を採用することとした(図- 9 参照)。

(2)迂回トンネルのルート選定
迂回トンネルのルート選定では、一般的にすべり面からの離隔を2D 以上とすることが目安とされているが、本トンネルでは委員会での提言を基に、離隔を考慮せず、Sh-4(地すべりの影響範囲や将来地すべりに発展する可能性のある弱面層)を回避できるルートを選定する方針とした(図-10、11 参照)。

(3)迂回トンネル工事の特徴
今回の迂回トンネル工事の特徴を述べる。

 ①トンネル分岐部の施工
迂回トンネル工事は、既設の坑口を利用し、既設トンネルの途中から分岐して新たにトンネルを構築するものである。
トンネル内から分岐する施工方法としては、大きく分けて以下の2 案が考えられた。
 第1 案 既設トンネルに拡幅断面を設け新設トンネルを発進する方法(図- 12 参照)
 第2 案 既設トンネルを埋戻し、地山状態に戻してから新設トンネルを施工する方法(図- 13 参照)

第1 案の拡幅工法では2 トンネル分を抱合する掘削断面(内空断面239㎡)が必要であり、新設トンネルの標準断面の約4 倍となるため、工費のほか施工性、安全面で不利となる。また、この工法は現況の通行を確保しなければならない場合に採用されることが多く、本工事では既設トンネルを全面通行止めとして作業できる(迂回路が確保できる)こと、施工時の安全性が高いことや施工事例もあることなどから、第2 案の既設トンネルの充填閉塞方法を採用した。
分岐部は新設トンネルの安全な施工と既設トンネルへの影響を考慮した構造とする必要がある。既設トンネルは将来的にも供用が無いことを考慮し、両トンネル間の壁面間隔で1D(≒ 10.3m)が確保できるまでの区間を分岐部とし、既設トンネルの充填閉塞を行った。使用する閉塞材は土砂、砕石等では均等な転圧が困難であり、掘削時の天端および切羽の安定が期待できないことからエアミルクを採用した(図- 14、写真- 4 参照)

 ②既設トンネル内部の閉塞
迂回トンネルの施工により残置されることとなる既設トンネルは、分岐部を除く大半のトンネル断面内が永久的に空洞となるため、さらなる地すべり変形の進行による既設トンネル内部の崩壊や地下水等の既設トンネルへの滞留によって、迂回トンネルに悪影響を及ぼすことが懸念された。このため空洞部分を切羽で発生する掘削残土を用いて埋戻しを行う閉塞工を実施した。

既設トンネルの埋戻しに際して、迂回トンネル内から既設トンネルへ作業坑を設置し、工事用車両の走路を確保した。作業坑の設置にあたっては、地山状況を見定めたうえで作業坑延長が短くなるように既設トンネルとの分岐部に近い位置を選定した(図- 15、16 参照)。

土砂の運搬はトンネル掘削の10t ダンプを使用し、切羽で発生したずりを切羽から直送するもので、運搬後、バックホウとブルドーザにて敷均しを行った。
ずりによる埋戻しは重機作業が可能なトンネル天端から2.5m 下までの部分とし、それより上部の残存部分については、転圧が不要で、確実な充填が可能なエアミルクを用いて閉塞を行った(図- 17 参照)。

6.おわりに
今回のトンネル工事は、平成27 年10 月に着工し、平成29 年3 月に本体工事が完了した。その後、付帯設備工事(照明及び非常用施設)を行いながら、平成29 年6 月に片側交互通行での供用を開始し、7 月には当初の予定より約2 か月前倒しし、全ての工事を完了、全面開通することができた。
この工事が無事故でかつ当初の予定より早期に完了したのは、元請である戸田・丸昭・味岡・橋口特定建設工事共同企業体、㈱球磨電設、㈱電盛社の安全教育や工程管理、品質管理等に対する取り組みの成果であると考えている。
また、瀬目トンネル検討委員会、地盤検討委員会の委員の皆様や国土交通省の皆様からは、原因の究明や応急対策工、恒久対策工の検討等について多くの助言、指導をいただいた。
今回の執筆にあたり、本工事に関係した全ての皆様に感謝の意を表す。

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