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土木学会 平成29年度全国大会報告
西保幸

キーワード:土木学会全国大会、国民生活に関係、第72 回年次学術講演会

1.はじめに
土木学会平成29 年度全国大会は、9 月11 日(月)~ 13 日(水)の3 日間、九州大学伊都キャンパス、アクロス福岡、ソラリアプラザを主会場に開催された。
大会テーマは、「土木の将来と国際化~世界的課題への挑戦、世界に通じるDOBOKU へ~」。
これは、現在、我が国が急激な高齢化、人口減少、財政状況の悪化など、多くの課題に直面しこれらの解決に取り組んでいることと、国際社会においては、特に発展途上国における急激な経済成長、都市化に対応するための膨大な社会基盤整備の需要があること及び先進国、発展途上国を問わず甚大化する自然災害への対応に迫られていることに由来する。

2.主な大会プログラムと会場
大会では、大会実行委員長である九州地方整備局長増田博行氏の開会挨拶、土木学会会長大石久和氏による基調講演会、東京女子大学教授栗田恵子氏による「ともに生きるための公共事業-フレンチ・エンジニアの「社会経済」思想-」と題した特別講演会1、一般社団法人九州経済連合会会長麻生泰氏による「九州から日本を動かす!」と題した特別講演会2、九州大学大学院工学研究院教授塚原健一氏をコーディネーターに「土木と公共、地域と世界の観点から」をテーマとしたパネルディスカッション形式の全体討論会(以上はアクロス福岡シンフォニーホール)、3,656 題の論文が寄せられた第72 回年次学術講演会、30 題のテーマで討論された研究討論会、ラウンドテーブルミーティングなど7 つのプログラムからなる国際関連行事、平成28 年度土木学会映画コンクール受賞作品や九州の土木技術映像など13 題の映像を放映した映画会(以上は九州大学伊都キャンパス)、「九州の土木遺産とトピックス」、「熊本地震と復興」などをテーマとしたパネル展示(天神ソラリアプラザ1F イベントスペース)が開催され、官営八幡製鐵所旧本事務所などをめぐる見学会や最終日午後には九州大学平成29 年7 月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団主催の「2017 年九州北部豪雨災害被害調査報告(速報)」が開催された。

3.主な個別プログラムの概要
①基調講演会
・講演者:土木学会会長 大石久和 氏
・講演概要
土木事業は、国民生活に最も直接的に関係し、国民の暮らしの安全性、効率性、快適性を保障する技術、産業、学問に関連する分野である。土木技術者は、土木事業に関する行政上の問題点や経済波及効果について常に気を配り、また事業の成果が国民生活に寄与できているかに関心を持たなければならない。さらに、土木事業の予算が国会で決まる以上、主権者である国民との対話、地域の皆様とのコミュニケーションができているかを確認しなければならない。最後に、われわれは土木人としての矜持を持っているか心に問いかけなければならないと締めくくられた。

②特別講演会1
・講演者:東京女子大学教授 栗田啓子 氏
・講演概要
「ともに生きるための公共事業-フレンチ・エンジニアの「社会経済」思想-」と題して、19世紀後半から20 世紀初頭におけるフランスの土木エンジニアの経済思想について、当時のシビルエンジニアがどう考え、どう行動したかが述べられた。
特に、費用便益分析を開始したフランスでは、土木技術者は経済学者としての視座をもち、インフラの整備による地域開発や、住宅問題、人口問題、環境問題への対応について、社会経済的な関連性を含めた多様な切り口から事後評価がなされてきたことなどが紹介され、土木技術者は、減災、国土強靱化、地域経済格差の是正、環境保全という目的に対し、それぞれの時代における社会問題へ対応していくことが重要であることが述べられた。

③基調講演会2
・講演者:( 一財) 九州経済連合会会長 麻生泰 氏
・講演概要
「九州から日本を動かす!」と題して、日本経済GDP の世界におけるシェアが1990 年の16%から2016 年では6.6% に落ち込んでいる現状を踏まえて、現役世代が積極的に行動していくことの重要性と、そのためにリーダーが明るいビジョンを持つこと、それぞれの地域が尖りを見つけ、ストレッチゴールを設定すること、日本ブランドの信頼性の維持の重要性などを述べられた。また、九州は、今後経済成長していくアジア諸国に近く、農水産物の輸出拡大、林業の再生、観光の振興に力を注いでいることが語られ、そのためには交通をはじめとしたインフラの整備、自然災害リスクの低減、インフラの老朽化対策などが重要であり、社会資本整備への投資額の減少傾向を課題として認識し、安全・安心という日本のブランドイメージを壊してはいけない、ということを強調された。

④全体討論会(パネルディスカッション)
・コーディネーター
 九州大学大学院工学研究院 教授 塚原健一 氏
・パネラー
 宮崎県商工会議所連合会 会長 米良充典 氏
 ( 一社) 九州観光推進機構九州観光広報センター 次長 濱崎隆 氏
 株式会社River Village 代表取締役 村川友美 氏
 九州大学大学院工学研究院 助教 松永千晶 氏
・討論会概要
「土木と公共、地域と世界の観点から」というテーマで、各パネリストの活躍分野を軸足に、地域人口の減少、働き方改革等の観点からの道路インフラの有りかたに関する意見、将来的に九州における観光産業を発展させるためには、交通インフラの充実が必要であるという意見、変化する価値に柔軟に対応できる社会資本を整備することが重要であるという意見、国や地域の持続性を評価する新国富指標を用いた九州の評価結果から、停滞している状況を解決するためには、女性の社会進出を促進させ、人的資本を増加させることが重要であり、そのために土木業界も貢献すべきであるという意見などが出された。
また、プライベートジェットの利用促進のための空港の規制緩和や法整備の必要性、育児の問題を解決するなど公共福祉の向上のためにも、交通計画を考慮した土木整備の必要性などが議論され、最後にコーディネーターより、パネリストからいただいた意見を、今後土木学会として十分に活用していくことが確認された。

⑤第72 回年次学術講演会
九州大学伊都キャンパスにおいて、第Ⅰ部門(構造)、第Ⅱ部門(水理)、第Ⅲ部門(地盤)、第Ⅳ部門(計画)、第Ⅴ部門(材料)、第Ⅵ部門(施工)、第Ⅶ部門(環境)及び共通セッションの計8 部門に分かれて全56 会場で並行して開催された。
今年度の発表論文数は3,656 編で、近5 年で最多であった昨年度大会より約70 編多かった。
また、今大会では、発表論文の中から市民生活に密接に関連する内容のものを抽出して、事前に記者発表するという取り組みを行った。

⑥研究討論会
研究討論会は、大会初日と3 日目に九州大学伊都キャンパスで開催された。テーマ数は初日が16 件で3 日目が14 件であった。地域防災、橋梁の維持管理、コンクリートの品質・耐久性、建設用ロボット、広報に関するもの等、多岐にわたる内容で2 日間延べ2,569 名の参加者があった。

⑦その他
九州大学伊都キャンパスにおいては、国際ラウンドテーブルミーティングなどの国際行事、平成28 年度土木学会映画コンクール受賞作品や九州の土木技術映像などを上映した映画会が開催され、天神のソラリアプラザ1F イベントスペースゼファでは、「九州の土木~その過去・現在・未来と世界的課題への挑戦~」をコンセプトに、九州の土木遺産と最近のトピックス、九州の土木、世界へ、熊本地震と復興の3 テーマでパネル展示が行われた。

また、「今津元寇防塁」や「博多港・香椎パークポートコンテナターミナル」などを巡る半日コース、2016 年土木学会デザイン賞を受賞した上西郷川(福津市)や世界遺産に登録された官営八幡製鐵所関連施設などを巡る1 日コースの見学会も開催された。

4.平成29 年7 月九州北部豪雨災害報告会(速報)
大会最終日である9 月13 日13 時から、九州大学平成29 年7 月九州豪雨災害調査・復旧・復興支援団主催、土木学会、地盤工学会、砂防学会、応用生態工学会、廃棄物資源循環学会、農業農村工学会の協力による、「平成29 年7 月九州北部豪雨災害報告会(速報)」が、九大伊都キャンパス椎木講堂コンサートホールにて、330 人の参加者のもと開催された。
報告会では,豪雨災害の概要,河川災害,土砂災害,災害廃棄物,農地・ため池,森林,グリーンインフラ,ボランティア活動,災害と地域の文化の9 つの観点からこれまでの調査で明かとなった点が報告された。

5.おわりに
土木学会平成29 年度全国大会は、大きな天候の崩れもなく、3 日間のべ2 万7 千人以上の参加者があり、関係する皆様のご協力により成功裡に終了した。
開催にあたっては、九州大学、福岡県、福岡市、九州電力、九州旅客鉄道、西日本高速道路をはじめとした主要企業、独立行政法人、関係公益法人等及び九州地方整備局が実行委員会を構成し、関係する企業や法人の皆様等のご協力を得ることによって、準備、運営を行うことができた。また、九州各県、政令指定都市、各種業団体法人、学術研究会等、多数の後援をいただいた。
なお、今回の報告文は、土木学会誌平成30 年1 月号(全国大会報告号)の大会報告の内容を一部引用させていただいた。

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