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台風14号による大淀川・小丸川の出水概要と対策

国土交通省 九州地方整備局
 宮崎河川国道事務所 副所長
永 野 和 博

国土交通省 九州地方整備局
 宮崎河川国道事務所 調査第一課長
的 場 孝 文

1.はじめに
平成17年9月台風14号は、これまでに経験したことのない未曾有の出水で大きな水害を被った。昭和29年9月の台風以来、半世紀での出来事であった。
今回の台風14号は、猛威を振るったことで大淀川と小丸川とも観測を始めて以来、最大の降水量、最大の流量、最高の水位を更新した。

2.気象概要
台風14号は、5日夜に屋久島の西海上を通過、6日には九州の西岸に沿って北上し、14時過ぎに長崎県に上陸した。
台風14号の特徴は、1時間に10㎞から20㎞とゆっくり北上し、九州山地東面を有する宮崎県へ5日から6日にかけて多量の雨域を運び、総降水量で1,000mmを越える記録的な雨量となった。

2.1 降水量
大淀川流域での総降水量は、霧島観測所で1,374mm(既往最大836mm、平成9年9月)、三股観測所で1,356mm(既往最大873mm、平成9年9月)、四家観測所で1,160mm(既往最大534mm,平成5年7月)と軒並み記録を更新した。昭和28年から観測を始めて19観測所の内、15観測所で最大の総降水量を記録した。
小丸川流域での総降水量は、神門観測所で1,219mm(既往最大912mm、平成9年9月)、上栂尾観測所で823mm(既往最大466mm、平成9年9月)の2観測所では、昭和28年に観測を始めてから最大を記録した。

2.2 水位・流量
大淀川の顔で宮崎市内の上流にある柏田水位観測所は、5日の10時過ぎに指定水位(市町村水防団の待機)4.70mを越え、12時過ぎには警戒水位(市町村水防団の出動)5.40mを越えた。更に水位は上昇して6日の深夜2時には、堤防の氾濫が強く予想される危険水位(市町村の避難勧告の目安)8.40mを突破した。ますます水位は上昇し、6日の明け方7時には堤防の設計水位である計画高水位9.36mも突破し、11時にはこれまでの既往最高水位8.21m(平成9年9月)を超え9.89mを記録し、18時に計画高水位を下り、23時に危険水位を下り、7日9時に警戒水位を下回った。大淀川流域にある10観測所の内6観測所で最高水位を更新した。(図-3)

今回の出水は、計画高水位を12時間もの長い時間にも関わらず堤防は決壊しなかった。
小丸川は、小丸大橋観測所で6日6時に計画高水位5.82mを突破し、11時に6.09mの最高水位を記録し、13時には計画高水位を下った。
今回出水での大淀川と小丸川の流量については、想定外の降水量を記録し発生したものであり、近年このような出水が多発している。今後、過去の出水も考慮して検討する。

2.3 風速
5日の18時頃に宮崎県南部は、風速25m/sの暴風雨域に入り、6日の5時頃には宮崎県全域が入った。暴風域が抜けたのは、台風14号の速度が非常に遅いため6日21時頃となった。宮崎市霧島町では、6日8時に東南東の風21.1m/sの最大風速8時54分に南東の風43.1m/sの最大瞬間風速を記録した。

3.被害状況
大淀川及び小丸川流域では、かつてない降水量で、未曾有の被害が発生した。(表-1)
特に、大淀川下流地区は、計画高水位を12時間にも及ぶ長い継続時間であったため、本支川の14箇所で越水し、更に内水被害が至るところで発生した。

また、流域内に存在する治水・利水ダムでは、流木等の堆積が確認され、大淀川で約8千m3、小丸川では約8千m3が報告された。

4.事務所水防体制
事務所は、宮崎・都城地区に大雨洪水警報が発令されたため、4日(日)16時30分に注意体制に入った。翌、5日(月)大淀川下流の高岡水位観測所と柏田水位観測所で警戒水位に達すると予想されたため11時に警戒体制に入った。19時には、大淀川下流支川本庄川嵐田水位観測所で危険水位に達したため、非常体制に入った。その後、水防警報観測所で危険水位を超えた水位観測所は、大淀川4観測所、小丸川1観測所となった。
更に水位は上昇し、水防警報観測所で既往最高水位を超えた水位観測所は、大淀川3観測所、小丸川で1観測所となり、これまでの記録を更新した。大淀川、小丸川で発生した緊急復旧工事を終えた12日(日)19時に注意体制に切り替え、宮崎県へ支援していた人員・機材に目処がついたことで、事務所体制を23日(木)14時に解除した。

5.水防活動等(平成17年10月31日現在)
台風14号は、同時多発的に至る所で水害を起こした。このため、全消防団(水防団)に加え、陸上自衛隊航空自衛隊への派遣要請もあり、水防活動、救助活動、救援活動を精力的に実施した。

6.避難状況
大淀川での避難勧告・避難指示は、2市3町の4,735世帯10,910人に出された。小丸川では、2町の3,149世帯7,627人に避難勧告・避難指示が出された。

7.水防活動等への支援
宮崎県災害対策本部及び市町災害対策本部への初期的な支援は、電話、FAXでの情報提供支援を実施した。特に、宮崎市吾妻町の水防活動では、暴風雨の中、土のう積みにあたっては工法の指導と臨時の水位観測を実施し、宮崎西消防団、宮崎県警察署、新田原航空自衛隊、協力会社の方々へ二次災害を防ぐために万全をはかった。また、長崎河川国道事務所からは、緊急的配置として大淀川支川大谷川に排水ポンプ車の支援を実施した。更に、宮崎県災害対策本部へ九州地整及び当事務所から人員を派遣し、情報収集に努めた。

8.緊急復旧工事
大淀川1箇所、小丸川3箇所では、次の出水での堤防への危険度が大きいため、「災害時における応急対策業務に関する基本協定」に基づき、協力会社と早急に契約し、24時間体制で8日から12日の5日間ですべての箇所を復旧し、完成させた。

9.防災ボランティア
九州防災エキスパートの方には、5日19時10分に出動要請を行い、暴雨風域が抜けた7日8時45分から被災箇所等の情報収集に大変なご尽力を頂いた。9日10時には、巡視結果の報告を受け、今後の災害対策等への貴重な資料を得た。誌面を借りて厚くお礼を申し上げます。

10.今後の対策
大淀川及び小丸川の河川施設災害復旧については、平成17年10月に査定を終え、これから本格的な復旧工事に取りかかることになる。
特に、被害の大きかった大淀川下流地区については、平成17年度から平成21年度の五カ年で集中的に完成させる「河川激甚災害対策特別緊急事業」(激特事業)が平成17年11月18日に新規事業として採択され、事業費272億円(直轄240億円、補助32億円)もって被害軽減対策に取り組むことになった。
事業内容は、外水対策の越水箇所には築堤を新設、計画高水位を長時間超えた洪水時間に対しては、
河道掘削を実施し、水位の低減と半分の継続時間で流下させ、内水対策についても効果が期待できる。今回の出水は、至る所で内水被害が発生した。このため、高いダメージを受けた内水対策にあたっては、国と自治体が連携して実施する河川整備のハード対策と避難計画、土地利用規制等も含めた都市計画のソフト対策と一体となった総合的な浸水被害軽減対策を樹立することが重要である。このため、学識者、自治体、消防関係者、自治会、マスコミ等からなる「水害に強い地域づくり委員会」を平成17年11月29日に立ち上げ、大淀川流城で取り組む防災・減災対策の提言を取りまとめる考えである。

参考文献
宮崎地方気象台「災害時気象資料」平成17年9月16日
宮崎県「防災・危機管理情報」 平成17年10月28日

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