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九州地方建設局における「公共工事コスト縮減対策に関する
行動計画」と多様な入札・契約制度の取り組みについて

建設省 九州地方建設局
 企画部 技術調整管理官
増 元 四 郎

建設省 九州地方建設局
 企画部 技術審査官
木 下 茂 広

1 はじめに
現在我が国の国家財政は危機的状況にあるとして,財政構造改革が進められ,公共工事の執行にあたって,実施方法や経済効果などについて,様々な指摘がなされています。
この様な中にあって,政府はより一層のコスト縮減のために,平成9年1月全閣僚を構成員とする,「公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議」を設置し,全省庁で精力的な検討が行われた結果,4分野19項目にわたる施策を含む「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」が,4月4日同閣僚会議において決定され,これとあわせて建設省の新たな行動計画が策定されました。
政府の行動指針および建設省行動計画の新たな取り組みには,3点の特筆すべき特長があります。
1点目は,平成6年度版の行動計画が建設省のみの取り組みであったことに比べ,今回の取り組みは,全省庁あげた総合的な取り組みとなっています。
2点目は,コスト縮減についての具体的数値目標を設定し,国民にわかりやすい指標を示しています。
3点目は,平成6年度版の行動計画は,施工を主眼としていたが,今回の取り組みは,計画・設計段階から施工までのコストに影響を与える要因を考慮しています。

九州地方建設局では,各部に作業部会を設置し,政府の行動指針並びに建設省行動計画を踏まえ,九州地方の独自性を活かした「九州地方建設局公共工事コスト縮減対策に関する行動計画」を,平成9年7月8日に策定し公表しました。
以下に概要等を紹介します。

2 公共工事コスト縮減の基本的な考え方
(1)広範な取り組み
関係協力省庁も含めた総合的な取り組みが図られることにより,さらに実効的な効果を期待。
(2)機能・品質の確保
所要の機能,品質と両立させつつ進める。
(3)不当なしわ寄せの防止
諸施策を総合的かつ持続的に実施し,公共工事をとりまく諸環境を改善し,低いコストで,適正な機能・品質を持つ目的物を建設できる環境作りを行うことにあり,「いわゆる歩切り」的な安易な施策は禁止する。
(4)不正行為の防止
◦透明性・客観性及び競争性をより高めるための入札・契約制度の改善
◦発注者による指名停止措置や建設業法に基づく監督処分
◦公正取引の確保に関する法律等の遵守の徹底
◦一括下請負等を排除するための所要の対策
など,これらの措置を通じて,入札談合等の不正行為の根絶に努め,適切な公共工事コスト形成に資すること。

3 九州地方建設局の行動計画の特長
(1)九州地方建設局職員の意識の徹底
工事発注毎に,コスト縮減のチェックリストを作成し,施策の実施を行います。
(2)新技術等の積極的活用
民間の保有する技術の情報収集などにより,新技術等の積極的な活用を図るとともに,それらの新技術等を採用した試験施工を積極的に実施し,効果の得られた新技術の普及拡大を図ります。
(3)横断的な取り組みの実施
関係省庁や地方公共団体等と連携し,公共工事全体を念頭においたコスト縮減に対する取り組みを行います。

4 コスト縮減のための具体的施策
(1)具体的施策
政府行動指針および建設省行動計画に定める4分野19項目の施策を他省庁と連携しつつ,平成9年度から平成11年度末までに実施します。なお,九州地方建設局として実施可能な施策4分野13項目を具体的施策として策定しました。
以下に取り組み事例を紹介すると共に,多様な入札・契約制度について中間状況等報告を掲載します。
① 小型樋門・樋管の基礎構造の規定の見直し
従来良好な地盤以外は,すべて杭基礎等の基礎工を施し,本体は現場打ちコンクリートで施工してきたが,内径2m以下の小型樋門・樋管についは,柔構造にすることで,“たわみ性’’のある新素材を用いた試験施工を実施する。
  縮減効果:基礎工の削減
       本体工の縮減
       工期の短縮  等
② 砂防ダムの材料の見直し
従来の建設では,現場打ちコンクリートにより施工してきたが,雲仙普賢岳のような膨大な火山堆積物の有効利用が図られるCSG工法RCC工法を採用する。
  縮減効果:火山堆積物の有効活用
       ダム本体建設費の縮減  等
③ 軽量盛土工法の採用
山間部の盛土箇所等の施工は,擁壁等の強固な,構造物を構築し,盛土を施工しているが,軽量盛土用の新材料・新工法等を採用する。
  縮減効果:仮設工の縮減
       工期の短縮
       トータルコストの縮減  等
④ 広幅鋼矢板の活用
鋼矢板の幅は現在400mmであるが,新たに開発された幅600mmの製品を採用する。
  縮減効果:材料費の縮減
       打設費の縮減
       工期の短縮  等
⑤ 揚・排水機場のポンプ設備の新技術の活用
揚・排水機場は,土木,建築施設と機械設備からなり,新たに開発された技術を取り入れ,施設のコンパクト化を図る。
  縮減効果:施設の規模縮小
       施設の省略  等
⑥ 共同溝の仮設工に新工法を採用
共同溝の施工にあたり,従来鋼矢板土留工法等の仮設工法で施工していたが,この仮設工法に新オープンシールド工法を採用する。
  縮減効果:仮設工材料の縮減
       工期の短縮  等
⑦多様な入札・契約制度について
1)「多様な入札・契約方式」とは?
「VE」とは「Value Engineering(価値工学)」の概念の総称で,技術活用・技術力向上を図りつつ,目的物の機能を低下させずにコストを縮減する,または同等のコストで機能を向上させるための技術のことです。
公共工事における「VE」は実施する段階に応じて,「設計VE」,「入札時VE」,「契約後VE」に分類されます。
また,工事価格のみではなく,維持管理費等を含めたライフサイクルコスト等の提案を求める「技術提案総合評価方式」および設計・施工技術の一体的活用を図る「デザインビルド方式」等を含めて多様な入札・契約方式と呼んでいます。
これらの方式導入の必要性は一連のコスト縮減行動計画に基づくと共に,民間技術を積極的に活用し,民間技術開発にインセンティブを与えることを目的として,平成9年7月3日に建設本省より「公共工事の品質確保等のための行動指針中間報告」として,直轄工事(業務)への積極的試行が提唱されたところです。
九州地建においても,民間技術を積極的に活用するこれらの多様な入札・契約方式について積極的な試行を図っています。

2)九州地建における多様な入札・契約方式の試行状況について
九州地建では,平成8年度に入札時VEを2件試行しました。平成9年度の試行状況(予定を含む)は次のとおりです。

3)多様な入札・契約方式の概要について
多様な入札・契約方式の制度,審査体制,および評価方法等について簡単に説明します。

ア)設計VE
【制 度】
基本設計,詳細設計の段階でコスト縮減につながる代替案を受け付ける方式です。
基本設計,詳細設計の各段階で当初設計と代替案を比較検討し,コスト縮減の観点から最も有効な設計案を取り入れることとなります。
この際,比較検討および評価等は「VE検討組織」により実施することになります。
【対象業務】
平成9年度は九州地建で1件(堰の予備設計)の試行を予定しています。
今後の予定としては,民間技術開発が著しい分野,新規の大規模構造物,施工条件に制約が大きいなど,代替案を見い出せる可能性の高い設計業務は,原則として設計業務の対象となります。
【審査体制】
建設省内外の専門家からなる「VE検討組織」を設置します。「VE検討組織」には必要に応じてゼネコン等民間の技術者を加えることができますが,組織のメンバーが所属する会社は原則として当該工事への応札が制限されます。
【審査方法】
「VE検討組織」による審査は公開を原則とします。ただし,企業秘密保護については充分留意することになっています。
【特許工法などの扱い]
代替案の検討にあたっては,工業所有権や特許権など排他的権利に係わる工法も排除しないこととしています。そのような工法が最適な場合には代替案の公幕を行うこととしています。
【評価の考え方】
代替案の評価は,安全性,耐久性などの機能を損なわない範囲内で,可能な限り維持管理費などを含めたライフサイクルコストの観点から行うこととしています。

イ)入札時VE(価格競争型)
【制 度】
工事の入札の段階で,標準的な施工法等の代替案を受け付ける方式です。技術審査を通った建設業者がVE提案もしくは標準工法に基づく価格を入札し,最低価格を提示した者と契約することになります。
【対象工事】
平成9年度は九州地建において,一般競争入札を中心に7件の試行を予定しています。
【審査体制】
技術提案の審査は「九州地方建設局入札時及び契約後VE等検討委員会」で行います。メンバーは企画部長,担当部長等で公開を原則としています。
【提案に関する責任】
提案内容に関する責任は基本的には受注者が負うことになります。
【企業評価への反映】
発注者は受注者に対してVEによるコスト縮減努力の成果を工事成績等で評価します。
【提案の使用】
発注者は工事に採用した提案については,排他的権利等に係るもの以外でも,当該技術が一般的に用いられる標準的な技術となるまでの間は,提案者の了解なしに使用することができないこととしています。

ウ)契約後VE
【制 度】
工事契約後に,受注者からコスト縮減につながる技術提案を受け付ける方式です。提案技術が採用された場合には,受注者にコスト縮減額の50%を「VE管理費」として還元します。
【対象工事】
特に施工段階で,現場に即したコスト縮減が可能となる技術提案が期待できる工事が対象となり,平成9年度,九州地建において9件の試行を予定しています。
【審査体制】
技術提案の審査は「九州地方建設局入札時及び契約後VE等検討委員会」で行います。メンバーは企画部長,担当部長等で公開を原則とします。
【提案に関する責任】
提案に関する責任は基本的には受注者が負うことになります。
【企業評価への反映]
発注者は受注者に対してVEによるコスト縮減努力の成果を工事成績等で評価します。
【提案の使用】
発注者は工事に採用した提案については,排他的権利等に係るもの以外でも,当該技術が一般的に用いられる標準的な技術となるまでの間は,提案者の了解なしに使用できないこととしています。

エ)技術提案総合評価方式
【制 度】
応札者は価格と同時に施工方法等の技術提案を行い,発注者は価格と提案の両方を総合的に評価し,最も有利な申し込みをした者と契約する方式です。
必ずしも最低価格を提示した者と契約するとは限りません。
【対象工事】
施工期間の制約が強い工事,環境への影響を特に配慮する必要がある工事,特別な安全対策を必要とする工事,維持管理費を含めたライフサイクルコストを重視する工事等,工事価格以外の要素を特に重視しなければならない工事が対象となります。
平成9年度,九州地建では1件の試行予定工事をリストアップし,大蔵大臣協議を経て試行する予定です。
【審査体制】
技術提案の審査は「九州地方建設局入札時及び契約後VE等検討委員会」で行います。メンバーは企画部長,担当部長で公開を原則とします。
評価の公正さを確保するため,総合評価の項目,最小限満たすべき機能,ウエート付け等の評価方法は,あらかじめ入札説明書等で明らかにします。
【提案に関する責任】
発注者が施工方法等を指定しない部分に関する提案については,基本的には受注者が責任を負うことになります。仮に提案を契約内容とする場合には発注者も責任を負うことも考えられます。
【企業評価への反映】
発注者は受注者に対してVEによるコスト縮減努力の成果を工事成績等として評価します。
【提案の使用】
発注者は工事に採用した提案については,排他的権利等に係わるもの以外でも,当該技術が一般的に用いられる標準的な技術となるまでの間は,提案者の了解なしに使用できないこととしています。

オ)詳細設計付競争入札方式(デザインビルド方式)
【制 度】
発注者が予定価格の設定に必要なレベルの基本設計まで行い,詳細設計と施工を同一企業に発注する方式です。
【対象工事】
メーカーや施工会社が設計技術を持つ工事で,請負者が保有する機材等によって施工方法が異なり,これらを踏まえた詳細設計を行う方が効率的と考えられるものが対象となります。
例えば,技術的に高度な橋梁上部工工事,揚排水ポンプ設備工事,ゲート工事等が対象となります。
平成9年度,九州地建において1件の試行について,その可能性を検討しています。
【予定価格の設定方法】
工事費の積算は基本設計に基づいて行います。このため,基本設計において鋼材の材料毎の数量,溶接延長,標準的な架設計画等を定めることになります。
【詳細設計費】
詳細設計費は基本設計を基に積算し,詳細設計費と工事費の合計額に基づいて予定価格を設定します。詳細設計後,設定条件が変更となる場合は工事費を変更することになります。

カ)設計・施工一括発注方式(デザインビルド方式)
【制 度】
概略の仕様や基本的な性能・設計に基づいて設計・施工を一括して発注する方式です。
価格競争型と総合評価型の2つのタイプを想定しており,価格競争型は最低価格提示者と契約し,総合評価型は発注者が設計案と価格を総合的に評価して落札者を決定することになります。
【対象工事】
高度または特殊な技術力を要すると共に,施工技術の開発が著しい分野で,個々の企業が持つ特別な設計・施工技術を一括して活用することが適当な工事が対象なります。
【審査体制】
発注者側の組織内審査機関を設置し,必要な場合は部外の専門家の意見を聞くことを考えています。
また,評価の公正さを確保するため,総合評価の項目,最低限満たすべき機能,ウエート付け等の評価方法は入札説明書等において明らかにします。
【予定価格の設定方法】
当該施設と同種・同規模の施設の施工実績を参考に単位量当たりの平均単価等を設定して算定するか,基本的な設計に基づいて算出することになります。
【設計変更】
性能発注となるため,原則として設計変更は行わないこととしています。

4)多様な入札・契約方式の試行結果等について平成9年度の九州地建におけるVE評価の状況については次のとおりとなっています。

これら現在までの試行結果から,入札時VEについては予想以上にVE提案が多いと分析しています。
契約後VEについては,現在提案検討中の工事が多いため,まだVE提案はなされていない状況です。

5 最後に
建設業は,国民総生産の約2割弱に相当する建設投資を担うと共に,全就業人口の約1割を擁する我が国の基幹産業であり,国民生活を支える住宅・社会資本整備の担い手として,重要な役割を果たしています。
顧みれば,我が国は古来の伝統ある優れた歴史的・文化的遣産を有するものの,現代社会に繋がる社会資本の整備が緒についたのは明治以降で,本格化したのは戦後のことです。
このため,これまでの社会資本整備が,急増するニーズに最低限応えるレベルに止まらざるを得なかったということも事実です。
ただし,現在の国家財政の状況および公共事業のあり方等について国民から厳しい批判を受けており,今後は公共事業を進めるにあたり,国民の充分なコンセンサスが必要不可欠な状況となっています。
現在進めているコスト縮減やその一環であるVE等多様な入札・契約制度を真の成果あるものにするためには,従来の「効率化」の追求から,さらに,ランニングコスト等を含めた総合的な機能を判断することになります。
今後,コスト縮減の行動計画推進およびその一環である多様な入札・契約制度の試行にあたっては,真に国民に喜ばれ,子孫に誇れるものとなるよう努力していく所存です。

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