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九州技報 第41号 巻頭言

九州一の清流北川

河川生態学研究会 北川研究グループ代表 宮崎大学教授 杉尾哲
宮崎県の北部を流れる一級水系の五ヶ瀬川の支川に、大分県から流れ込む北川という清流がある。昨年11月と今年2月に北川の支川と本川がNHKハイビジョン放送でそれぞれ紹介されたので、ご覧になった方もおられると思う。清流を紹介する番組に二度も取り上げられたほどに、北川は自然がとても豊かな河川である。この川で、平成9年9月に台風19号によって大水害が発生した時に、当時の建設省治水課の職員が「九州の四万十川が壊れた」と表現したそうだ。
平成9年といえば、多くの方は、6月に河川法が改正されたことに気付くだろう。平成9年大水害に対して再度災害の防止を目的とした北川の激特事業は、治水と河川環境の保全を調和させながら実施した日本で初めての大規模な河川改修となった。しかし、その当時はまだ北川の河川環境を十分に理解できていなかったから、整備計画と改修工事は、まさに手探り状態で検討され実施された。その成果として、北川の環境を保全できただけでなく、整備計画を検討する中から河川環境情報図を生み出し、事業実施時にモニタリング結果をフィードバックする順応的管理体制が構築された。この取り組みが土木学会に評価されて、九州地方整備局と宮崎県が平成18年度環境賞を受賞した。
そのような中、平成7年から活動を開始していた河川生態学術研究会に北川研究グループが平成12年に加えられ、北川の改修による生態系への影響や生態系の反応を理解することを目的とした研究を10数名の体制で開始した。この研究成果は、平成14年から毎年2月に開催される発表会で報告している。報告書としては、平成16年に第一期の成果をまとめ、第二期は平成21年2月の完成を目指している。地域への貢献としては、学童向けの河川環境学習のテキストを作成した。また、波及効果として、友内川と家田・川坂川の地域住民との協働による二つの自然再生計画の策定と活動が挙げられる。
河川生態の北川研究グループが発足したおかげで、私と北川との付き合いが深まり、今も学生と一緒に北川にかよっている。このように長く付き合ってつくづく思うことは、平成9年の河川法改正が全国の土木技術者にどのように理解されているのかということだ。私は、河川行政が水理学だけの世界から複雑な生態系を含めた世界に入った大転回であったと認識している。しかし、河川生態系の現在の知見は、残念ながら河川改修への反応を予測できる程の技術レベルにない。しかも怖いことに、生態系には復帰可能性が保証されていないので、いったん遷移した環境はその要因を取り除いても復元するとは限らない。このような困難な状況の中で河川環境の保全と整備を実施するには、当該河川の自然を良く知る地域住民との連携が必須である。その意味で、多自然型川づくりに対する関係者の認識と技術に対する多自然川づくりレビュー委員会の指摘を、土木技術者は重く受け止める必要がある。

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