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中小河川における水理模型実験について
~赤谷川流域における災害復旧~
古賀満
坂井靖幸

キーワード:九州北部豪雨、模型実験、射流、事業の見える化

1.はじめに

当出張所は、権限代行制度に基づき河川管理者の福岡県に代わり「平成29 年7 月九州北部豪雨」で極めて被害が甚大であった一級河川筑後川の右支川である赤谷川等の災害復旧事業を実施している。
本稿では、災害復旧の河道整備目標流量である計画高水流量等が流下した時の水理現象を確認し、水理特性を把握して、必要に応じて復旧河道の計画(以下、「計画河道」という。)にフィードバックする事や、地域の方々などに計画河道整備後の効果等について確認していただく事等を目的に水理模型実験を実施しており、その概要を中間報告として紹介するものである。(本稿は令和元年5 月時点までの実験結果等に基づき作成。)
なお、九州北部豪雨の概要や災害復旧事業の進捗状況は、本誌の第62 号(2018.3)及び第64号(2019.3)において詳細報告しているため、本稿では取り扱わないこととした。

2.赤谷川等の河道特性及び河道計画の概要(一例)
前記のとおり、赤谷川流域は、筑後川右岸流域でも特に被害が甚大であったことから、災害査定において一定災による災害復旧(一部区間を除く)の採択がなされ、平成30 年7 月に福岡県において策定された「筑後川中流平野右岸圏域河川整備計画」に基づき、赤谷川等の改良復旧等を実施しているところである。赤谷川流域の整備計画目標流量は、図- 1 に示すとおりである。

赤谷川中上流や乙石川の特徴は、図- 2 に示すとおり河床勾配が射流になる区間もあるなど極めて急勾配であることから、整備後の河道の安定等を図り、河床変動による弊害を極力小さくする対策が必要であることから、落差工も配置しながら掃流力を緩和させる計画としている。

一方、筑後川に合流する赤谷川下流部付近では河床勾配が緩やかになり、平常時も含め土砂が堆積傾向になることから、今後の土砂供給の変化、流量規模も加味し、上下流の掃流力の急変・確保を図るため、横断形状を単断面から複断面にして掃流力を確保することとしている(図- 3 参照)。

これらの検討は、一次元河床変動解析、及び平面2 次元流況解析による机上検討により計画河道を立案したものであるが、中小河川の特性等も踏まえ、特に大きな湾曲部や支川合流部区間の平面的な水位・流速分布、河道線形によって生じる偏流等、さらなる実現象を踏まえた河道計画とするため、水理模型実験の実施により、机上検討の計画河道へ適宜フィードバックすることとした。

3.水理模型実験計画の概要
3-1模型実験の再現範囲の設定
赤谷川流域は、約80% が山林で流域の小さな渓流が多数流れ込んでいるが、赤谷川の中流部4k 付近では比較的大きな流域を有する支川乙石川と小河内川が近接しているうえ射流状態で合流する。また、乙石川においては、松末小学校上流の湾曲部を経て赤谷川に合流する区間となることから、本区間においては偏流等を確認し、赤谷川へのスムーズな合流形状等の河道計画を立案することが重要であり、赤谷川4k 付近を中心として模型による再現区間を設定した(写真- 1 参照)

3-2模型スケールの設定
模型スケールの設定にあたっては、「河川水理模型実験の手引(建設省土木研究所)」を参照し、河道の最小水深や川幅、粗度調整、流量等を考慮し、更には縮小することができない水の粘性(レイノルズ数)、模型制作場所のヤードの広さ等を総合的に検討し、1/30 の縮尺と決定した。また、模型実験は水理特性を詳細に把握することを目的にしているため、水理現象の確認に適している「固定床」で実験することにした。なお、それぞれの相似率は、表- 1 のとおりである。

3-3実験ケースの設定
本模型実験で用いる実験河道は、被災前の河道特性等も把握するため、①平成29 年7 月の九州北部豪雨災害を受ける前の河道(以下、「被災前河道」という。)と②復旧に際し机上検討した計画河道の2 つの河道を基本として模型実験を行うこととした。これにより、前述のとおり被災前河道の特性等も把握出来るとともに、被災前河道と計画河道を比較することで災害復旧事業の効果も確認出来ることになる。
実験計画としては、被災前河道の実験では、氾濫状況などが再現できるのか検証した上で、河道内流況や氾濫特性を把握することを目的として、被災流量(土砂・流木を除く真水)と整備計画目標流量を流す計画とした。
また、計画河道についても、同様に被災流量と整備計画目標流量を流す計画とし、机上検討した結果と模型実験で得られた水理特性を比較するとともに、模型実験で得られた知見を元に計画河道の見直しを図り、それに伴う再模型実験を行い、最良計画河道案を立案することとした(図- 4 参照)。
なお、実験については、まずは被災前河道の模型の製作・実験の実施を行い、計画河道へ模型を改良し、実験を実施している。

4.水理模型実験の結果
製作した模型の全景写真を、写真- 2(被災前河道)、写真- 3(計画河道(机上検討河道))に示す。また、次章に整備計画目標流量における実験結果について示す。

4-1被災前河道における実験結果
被災前河道における整備計画目標流量流下時の流況は、河積不足による越流、湾曲部外岸側で二次流や衝撃波による顕著な水位上昇に伴う溢水、落差工下流で波状跳水による水面変動・偏流の発生・溢水、乙石川合流部では高速流流入による顕著な水位上昇などが発生し、ほぼ全区間で氾濫していることが確認された(図- 5、6 参照)。

4-2計画河道における実験結果
被災前河道の流況不安定・氾濫要因を踏まえて立案した計画河道(机上)に整備計画目標流量が流下した場合、HWL を一部超える区間が数箇所あるものの、河道全体では安定した流況を得られた(図- 7 参照)。特に、被災前河道で発生していた斜め跳水、偏流の発生が抑制されている。
しかしながら、小河内川や乙石川の支川合流部の溢水氾濫、湾曲部の衝撃波発生に伴う水位上昇、赤谷川の単断面形状から複断面形状への切り替え部での流況不安定化による溢水が見られ、これらを改善する必要があることが確認された。

5.水理模型実験結果の計画河道への反映
図- 7、写真- 4 ~ 6 に示すとおり、机上で立案した計画河道での実験結果で得られた課題に対し、河道法線・縦横断面形状などの見直しを行い、再実験を実施し、さらなる流況の安定化と溢水氾濫箇所の改善を確認した。また、湾曲部外岸側等の局所的な水位上昇に対しては、堤内地盤高の嵩上げにより対応することで、氾濫を抑制できると考えている。

6.おわりに
前述のとおり、赤谷川流域は、急勾配で流速が早く、かつ比較的大きな流域を持った支川が近接して合流することで、複雑な水理現象が生じることが改めて確認できたところである。赤谷川(中小河川)における計画河道については、これまでの知見を踏まえた机上での計画河道の立案に加え、複雑な水理現象が発生する一部区間では、水理模型実験結果を基に計画河道の修正が有効であると考えている。そのため、本模型実験で確認出来た射流区間での水理現象等は、今後の中小河川の河道計画への適用も考え、新たな知見としてとりまとめていくこととした。
今後も引き続き机上検討と併せて、水理模型実験結果を踏まえ、模型の改良実験を幾度か実施し、最終的な計画河道を決定することとしている。
その際、地域住民の方々や朝倉市職員の方々等に、災害復旧の効果や事業への理解を深めていただくために実験状況を公開・説明し、将来の川を想像して頂きながら進めているところである。

最後になりますが、改めてこの度の「平成29年7 月九州北部豪雨」におきまして犠牲となられました方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
九州北部豪雨復興出張所職員一同、安全で安心できる地域づくりに貢献できるよう、地域に寄り添いながら、関係機関とも一体となり復旧・復興に全力で取り組んで参る所存です。
また、本水理模型実験にあたり技術指導等を頂いています国土技術政策総合研究所、並びに国立研究開発法人土木研究所の皆様、模型製作から実験全般を請負っていただいている(株)建設技術研究所の皆様に感謝申し上げます。

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