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コンクリートの生産性向上に向けた取り組み
古賀裕久
櫻庭浩樹

キーワード:コンクリート構造物、生産性向上、スランプ、機械式鉄筋継手

1.はじめに
今後、我が国において生産年齢人口が減少することが予想されている中、建設分野において、生産性向上は避けられない課題と考えられている。国土交通省では、建設現場における生産性を向上させ、魅力ある建設現場を目指す取組であるi-Construction を進めている。
コンクリート工の分野では、平成 28 年にコンクリート生産性向上検討協議会が設置され、生産性向上を進めるための課題及び取組方針や全体最適のための規格の標準化や設計手法のあり方が検討されている。検討された生産性を高める技術・工法は、表- 1 に示すように多岐にわたっており、標準化を促進する目的でガイドラインが策定され、国土交通省の WEB ぺージ 1)で公開されている。


本稿では、これらのガイドラインのうち、「流動性を高めた現場打ちコンクリートに関するガイドライン」、「プレキャストコンクリート構造物に適用する機械式鉄筋継手工法ガイドライン」について、ガイドラインの概要とともに,特に技術的な懸念に対して土木研究所などで行った実験的検討を紹介する。

2.流動性を高めた現場打ちコンクリートに関するガイドライン
(1)検討の概要
流動性を高めた現場打ちコンクリートに関するガイドライン(以下、流動性ガイドライン)の策定以前、一般的なコンクリート構造物においては、慣例的にスランプ 8㎝(スランプは,コンクリートの流動性を表す指標で大きいほど流動性が高い)のコンクリートが用いられることが多かった。しかし、近年、耐震設計基準が見直され鉄筋量が増加する傾向があることなどから、従来のコンクリートでは締固めが困難になり、生産性を高める上でネックになるほか、充填不足による品質の低下が懸念されていた。
一方で、スランプを大きくした場合も、化学混和剤を適切に使用し、適切な材料・配合のコンクリートを製造すれば、これまでと同様な品質のコンクリート構造物を、生産性を高めて建設できる。このような背景から、流動性を高めたコンクリートの活用検討委員会(委員長:橋本親典徳島大学教授)で、流動性ガイドラインが検討、策定された。
その結果、平成 29 年 7 月から、一般的な鉄筋コンクリート構造物において、特記仕様書に示すスランプ値が、従来の 8㎝から 12㎝に変更されている。また、実際の施工条件等の制約により, 更に流動性を高めたコンクリートが必要な場合には、スランプ値が 12㎝より大きいコンクリートの使用を検討することとしている。

(2)策定にあたっての実験的検討
スランプを大きくした場合も、化学混和剤を適切に使用し、単位水量や単位セメント量などを適切に設定すれば、コンクリートの品質に影響を生じることはないと考えられる。
しかし、配合の検討が不十分な場合、施工中に多量のブリーディング水が発生したり、粗骨材の分離が生じやすくなったりして構造物の品質を低下させるおそれもある(図- 1)。このため、材料分離抵抗性の確認方法を示す必要があった。
材料分離抵抗性は、使用する骨材などによって も影響を受け、書面でわかる配合等の情報から一律に評価することは困難である。そこで、流動性ガイドラインでは、スランプ値が 12㎝より大きい場合には、試験練り等を行って材料分離に対する抵抗性を確認することを求め、その方法を新たに提案している。
流動性ガイドラインでは、モルタル(またはセメントペースト)と粗骨材の分離や、過剰なブリーディング水の析出に着目して、明らかに材料分離抵抗性に劣るコンクリートを見分ける手法を示している。前者は、スランプ試験時の試料の観察で、後者は、ブリーディング試験の結果で評価する。これらの評価方法を定めるにあたっては、土木研究所で、様々な材料分離抵抗性を有するコンクリートを練混ぜて試験した結果が参考にされている。
スランプ試験(JIS A 1101)を行い、スランプコーンを引き上げた際の試料のくずれ方を観察した結果を表- 2 に示す。試料のくずれ方から、材料分離抵抗性を評価する。なお、土木研究所先端材料資源研究センターの WEB ページ 2)では、スランプ試験時の試料のくずれ方の例を動画で示している。動画で見るとくずれ方の違いがさらにわかりやすいので、参照されたい。




ブリーディング試験(JIS A 1123)で、ブリーディング量が 0.35㎤/㎠未満の場合、または、簡易ブリーディング試験(図- 2)で、30 分後の簡易ブリーディング量が 0.28㎤ /㎠未満の場合、適切と判断される。
JIS の試験では、結果が得られるまでに長時間を要するため、1 日に数配合の試験を行うのが一般的である。一方、試験開始から 30 分で判定できる簡易ブリーディング試験は、大幅な時間短縮により、配合を修正しながら検討したり、現地でブリーディング性状を確認したりすることも可能と考えられる。


(3)流動性ガイドライン策定の効果
流動性ガイドラインの適用が始まった平成 29 年の 7 月から 9 月間に、国土交通省では、適用状況についてのフォローアップ調査を行っており、その結果が第 6 回の生産性向上検討協議会 1) で紹介されている。
調査結果によると、84% の工事ではスランプ 12㎝のコンクリートが、それ以外の箇所では、鉄筋が密に配置されているなどの理由でスランプ値が 12㎝より大きいコンクリートが使用されていた。
作業性の向上により、30% の現場では打設時の人数が減らせるなどの生産性向上効果があり、 84% の現場では出来上がりコンクリートの品質が向上したとの回答があり、生産性向上の効果が得られている。

3.プレキャストコンクリート構造物に適用する機械式鉄筋継手工法ガイドライン
(1)検討の概要
プレキャスト部材(以下「PCa 部材」という。) は、製品工場や現場ヤードにおいて製造するため天候の影響を受けにくく、先行して製造できることなどから、生産性向上に資する技術として期待されている。
一方、PCa 部材を用いて一定規模以上の構造物を構築する場合、PCa 部材同士または PCa 部材と現場打ちコンクリート部材との接合部が発生し、鉄筋継手による部材の接合が必要となる。特に PCa 部材同士の接合部の場合は(写真- 1)、鉄筋継手位置が一断面に集中するいわゆる全数継手になること、鉄筋継手が部材の内部にあることから施工中および施工後の品質管理、検査が難しいことなどの課題があり、使用する鉄筋継手の性能や特徴を十分熟知して設計、施工および検査を行う必要がある。
このような背景から、土木研究所では、道路プレキャストコンクリート製品技術協会と共同研究を行い、PCa 部材の接合部における鉄筋継手として機械式鉄筋継手を用いる場合の留意事項に関する検証実験等を行った。また、共同研究で得られた知見をもとに「プレキャストコンクリート構造物に適用する機械式鉄筋継手工法ガイドライン」(以下、PCa 継手ガイドライン)としてとりまとめた。PCa 継手ガイドラインの目次構成を図- 3 に示す。




(2)策定にあたっての実験的検討
共同研究での着眼点を図- 4 に示す。PCa 部材の接合では、機械式鉄筋継手が用いられている事例が多いことから、PCa 部材の機械式鉄筋継手による接合部の品質のうち、特に破壊抵抗曲げモーメント、曲げモーメント作用下の剛性、ひび割れ性状に着眼して、設計、施工および検査を行う際の留意事項を検討した。
接合部に用いる機械式鉄筋継手の有無や種類、配筋等を変化させた試験体での曲げ載荷試験(写 真- 2)では、機械式鉄筋継手にも種々のものがあることから、事前に調査を行って代表的なものを選定し(図- 5)、継手単体としての性能ならびに外径や長さが、PCa 部材接合部の曲げ挙動に及ぼす影響を検討できるように製作し、破壊抵抗曲げモーメント、剛性、ひび割れ性状について検証した。また、部材の配筋状態の影響も検討できるように、配筋量を多くして機械式鉄筋継手のあき(図- 6)を狭くした試験体でも実験を行った。
曲げ載荷実験の結果、母材の鉄筋と同等以上の強度を有する機械式鉄筋継手を用いた場合、破壊抵抗曲げモーメントや剛性への影響は小さく、鉄筋継手がない場合と同等以上であった。








ただし、機械式鉄筋継手のあきを狭くすると、ひび割れの分散性がやや劣り、曲げひび割れ幅が大きくなるおそれがあることも明らかになった。このため、接合部の設計にあたっては、機械式鉄筋継手単体の性能だけではなく、機械式鉄筋継手を一断面に集中して用いる場合のあきについて、一般的な場合よりも大きくする必要があることなどに留意する必要がある。なお、土木研究所先端材料資源研究センターの WEB ページ 2)では、試験体の曲げひび割れの進展状況等を動画で示しているため、参照されたい。

(3)施工および検査における留意事項
機械式鉄筋継手工法には、様々なものがあるため、用いる継手に応じて施工条件や方法、使用機器や管理項目、方法等の施工要領を定め、これに基づいて適切に施工する必要がある。そこで、PCa 継手ガイドラインでは、各施工段階での確認および記録事項を整理している(例えば、図- 7)。機械式鉄筋継手工法の検査は、外観目視等で確認することが一般的であり、これを踏まえた各施工段階での検査事項(表- 3)についてもとりまとめている。




4.おわりに
生産性向上の効果が期待される流動性を高めた現場打ちコンクリートやプレキャストコンクリート構造物に適用する機械式鉄筋継手について、標準化を促進する目的で実験等を行ってガイドラインを作成した例を紹介した。
ガイドラインの作成にあたっては、今回紹介したように実験等による適用性の確認を行っており、その検証された範囲について理解した上で活用を行っていく必要がある。これらのガイドラインが参考にされることで、生産性向上に資する材料・工法が適切に活用されることを期待します。

【参考文献】
1)国土交通省:
コンクリート工における生産性向上、
http://www.mlit.go.jp/tec/i-con-concrete.html
2)土木研究所先端材料資源研究センター:実験動画等、
https://www.pwri.go.jp/team/imarrc/activity/ movie.html

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