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コスト縮減・工期短縮を目的とした橋梁設計
~支承条件を両端固定としたPC単純桁橋~

国土交通省 長崎河川国道事務所 工務課
梶 尾 辰 史

1.はじめに
公共工事におけるコスト縮滅及び工期短縮は、最も重要な課題の一つであり、各方面において様々な試みがなされている。また、橋梁をはじめとする老朽化した道路構造物のスットク増大に伴い、今後は補修補強工事に莫大な費用が必要となってくることが予想される。そのため、新たに建設される構造物については、将来必要とされる維持管理コストの縮減、耐久性の向上は必須の条件と言える。
一般国道34号大村拡幅事業では、琴之浦橋の架け替え工事が供用年度遅延の要因となっていたが、支承条件に着目することでコスト縮減、工期短縮及び伸縮装置の省略を図ることができたので、その橋梁設計について報告するものである。

2.事業概要
一般国道34号は佐賀県鳥栖市と長崎市を結ぶ延長約135㎞mの主要幹線道路であり、大村拡幅事業は大村市における国道34号の交通混雑の緩和及び大村市中心部の交通環境改善を図る目的で計画された延長3.7㎞mの道路拡幅事業である。
本設計は、その一般国道34号大村拡幅事業の一環として二級河川内田川に架かる琴之浦橋の詳細設計を行ったものである。図ー1に本橋の架橋位置を示す。
本事業のうち、琴之浦橋が位置する水主町交差点~大村高校前交差点は用地買収が完了し、早期供用の実現に向けて琴之浦橋の架け替えを行う必要性があった。そこで、従来型(単純桁形式)の工期は約5年間要するところを本設計の検討で約2年間の工期短縮が可能となり、本事業を「ちゃく2プロジェクト2005」で掲げることにつながった。

3.架け替えの必要性
既設の琴之浦橋は、図ー2に示すように架設から約50年が経過しており、拡幅を重ねて老朽化だけでなく、現在の設計基準も満たしていないため架け替えの必要がある。表ー1に架け替えの必要性についてまとめる。

4.橋梁構造の概要
基礎工は場所打ち杭を採用し、下部構造については逆T式を採用した。また、単純桁の支承条件を両端固定(ヒンジ結合)とすることで、橋台躯体寸法の縮小、杭本数の削減が可能となった。
上部構造は、河川計画と路面高の制約により桁高を1.0mに抑える必要があった。そこで、桁高を抑える上部工形式として、経済性と構造性に優れるバイプレストレッシング方式PC単純中空床版橋を採用した。

5.両端固定橋台の構造と特徴
5.1 従来型と本設計の構造比較
本設計では,単純桁橋梁における大幅なコスト縮減と維持管理性の向上を図るため,従来用いられた構造形式(支承条件が固定・可動であり,橋台背面土の影響を考慮しないため,各橋台への負担が大きい。)に対し,単純桁における支承条件を両端固定とした橋梁形式(橋台背面土の影響を考慮して各橋台への負担を軽減)について構造検討を行い,詳細設計へ反映した。

5.2 両端固定橋台の特徴
両端固定橋台は,向かい合う両橋台の支承条件を固定にすることで,支承,伸縮装置を不要とした構造形式であり,維持管理性の向上,ライフサイクルコストの縮減を図ることを目的とした橋梁形式である。本橋のような単径間橋梁の場合,支承条件を固定可動(F,M)とする構造が一般的である。そうした場合上部工を支持する両橋台は,土圧による荷重が支配的となり,基礎工の形状が決定されることが多いが,上下部工を一体化することによって,橋台背面に作用する土圧を上部工に伝達し,軸力として受け持たせることで,下部工および基礎工の負担を軽減することが可能となる。

6.構造細目の検討
6.1 支点条件の検討
支承条件を両端固定とするため,上下部工を一体とした平面骨組構造(フレーモデル)によって解析を実施し,各主桁への作用力は均等配分とした。本橋梁はバイプレストレッシング中空床版形式の上部工を採用したため,桁端部での上側引張りモーメント(負の曲げモーメント)が大きくなると上部工構造に不利となる。よって,支点条件は,ヒンジ結合にした場合と剛結にした場合について,それぞれ上部工ヘの作用力を算出し,各条件における上部工の検討を行い,構造性に優れる支点条件を採用した。
図ー6に示すように,剛結とした場合,支間中央部の曲げモーメントが低減されるが,剛結にした場合,支点部に負の曲げモーメントが生じる。
検討の結果,上下部工を剛結とした場合,終局荷重時の照査での曲げモーメントが発生する端部断面において,曲げ破壊安全度が許容値を満足することができない結果となった。これは,桁端部における鋼材配置は,定着具の最小間隔縁端距離によって決定されるため,桁高1.0mに対して,許容値を満足する鋼材配置を行うことが困難なためである。また,支承条件を剛結とした場合,隅角部での配筋が煩雑となり,ヒンジ結合と比較して施工性に劣ることからも,本橋の支承条件はヒンジ結合とした。

なお,温度変化や土圧によって,主桁には軸力が発生するためこれらを考慮した設計を行った。

6.2 桁端部の構造検討
本橋では,支承条件を両端固定とする方法としてアンカーバー形式を採用し,アンカーキャップとの間に設けられた10mm程度の余裕を設けることによって,桁の回転による移動量を吸収する構造とした。
また,プレストレスによる弾性収縮,クリープ乾燥収縮,温度変化による桁の伸縮が発生するため,橋台パラペットと上部工の間に隙間が発生し,舗装面にひび割れが発生することが懸念される。そこで,図ー7に示すように,踏掛版をパラペット上部に設置し,上部工と連結することによって,桁の変位に追従して動く構造を採用することにより,橋台パラペットと上部工の間に舗装のひび割れが発生することを抑制した。

この時踏掛版端部(橋台背面側)の舗装面に発生する歪みについては,温度変化による桁変位が年間を通じて非常に緩慢であることと,交通荷重等によって生じる踏掛版下面と路盤における摩擦力(歪みに対する抵抗力)が抑止力になることによって,歪みを踏掛版端部に集中させるのではなく,橋台前側から背面にかけて徐々に発生させることで分散し,吸収するものとする。

7.検討結果
従来の橋梁形式(F,M構造)と単列杭による両端固定橋台の比較結果を図ー8に示す。

従来の橋梁形式とした場合橋台背面の土圧に抵抗させるため,杭の配列を2列とする必要があるのに対し,支承条件を両端固定とすることによって,杭本数を半数以下に削減することが可能となった。
また,両端固定橋台としたことで下部工躯体を小さくすることが可能となり,背面側をオープン掘削することができた。その結果,下部工施工時の河川内の仮締切りを河積阻害率の大きい二重締切りではなく,自立式綱矢板による仮締切りにすることができ,コスト縮減並びにA1・A2橋台の同時施工を可能とした。
よって,単純桁の支承条件を両端固定及び仮設工法の変更により約23%のコスト縮減と約20ヶ月の工期短縮が可能となった。さらには,伸縮装置,支承が不要となるため,維持管理性の向上,ライフサイクルコストの縮減を図ることも可能となり,伸縮装置の排除は走行性の向上,騒音,振動の軽減に対して大きく寄与し,周辺環境や道路ユーザーの不快感を解消することが期待できる。

8.おわりに
本橋は,維持管理上の弱点となる伸縮装置,支承を不要とすることで,維持管理性の向上やライフサイクルコストの縮減を試みている。一方で,新しい橋梁形式や新工法の適用には,多くの課題点や問題点が共存する。本橋においてもいくつかの課題点が存在し,それらを克服するための検討や構造形式を採用している。特に,舗装面のひび割れ状況や支承回りに破損が生じていないかについては,本設計における評価が,適正に行われているか,施工後に定期的な観測を行い,評価を行う必要がある。

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