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昭和23(1948)年1月16日、佐賀県白石町川津地区生まれ。
地元の小・中・高等学校を卒業。平成14年より、土壌や地盤の調査及び対策を業務とした株式会社親和テクノの佐賀支店長に就任。平成14年7月に地元主導型「縫ノ池湧水会」を立ち上げる。佐賀水ネットの副代表も務める。58歳。

取材・文/西島 京子

地域の子どもたちを集めた釣り大会

子ども達が遊びたくなるような水辺空間づくりに取り組んでいる (釣り大会表彰式の状況)

厳島神社と40年ぶりの再生した縫ノ池

40年ぶりに湧き水がよみがえった「縫ノ池」

500年の歴史を持つ「縫ノ池」は佐賀県白石町の西部、杵島山麓に位置する川津地区のほぼ中央にある。面積は六千平方メートルあり、池のほとりには地域の人々が信仰を寄せている厳島神社がある。

古くから金妙水と呼ばれていた縫ノ池の湧水が枯渇したのは昭和33年のことだ。それから40年経った平成13年4月、この池に再び湧き水が溜まり、奇跡のようだと話題になった。

地元ではこれをきっかけに住民の自然環境・生活環境への関心が高まり、縫ノ池の原風景を取り戻そうと平成14年7月21日に保存会「縫ノ池湧水会」が結成された。

川津地区居住の赤坂宗昭事務局長は 「40年前の縫ノ池は子どもたちの遊び場であり、人々の憩いの場所でした。私もこの池で泳いだり魚を釣っていましたし、きれいな水でないと棲まないハヤやシジミなどがたくさんいたんですよ」と話す。

枯渇していたころの「縫ノ池」

穀倉地帯白石平野は、灌漑用水の不足から昭和30年代前半に農業用水や水道水を地下水に依存するようになった。揚水場は白石平野旧3町で約150基もあり、結果、白石町は県内屈指の米産地となったが、地下水が不足して多くの自然湧水が涸れ、広域的地盤沈下の原因になった。

「平成13年4月、佐賀西部広域水道企業団(佐賀導水事業)によって、白石町は水道水の利用を地下水から表流水に切り替えました。その直後、湧水群の一つであった縫ノ池から湧き水が出始めたのです」

枯渇していたころの「縫ノ池」

ひび割れた荒れ地にすぎなかった縫ノ池が、40年間も埋められもせず残っていたのはなぜなのだろう。

「縫ノ池は厳島神社(通称:弁天さん)の所有地で、埋めたら罰が当たるという気持ちがあったのでしょう。昔、狩り好きの殿様がいろいろな動物を狩っていたら、災いが降り掛かるようになったので家来の縫殿助治綱が、生き物を大事にすると神に誓って縫ノ池に生き物を放したら、その後は何も起こらなかったという言い伝えがあります」

この池の立て看板に「縫殿池」と表記があるのはその言い伝えのためだ。昔はこの地域は海で、広島の厳島神社と同様に、ここの社も海の守り神であったという。

NPO法人技術交流フォ-ラムの後援で、盛大に行われた「縫ノ池茶会」

地元の住民やボランティアが参加した縫ノ池の清掃活動

夏は水草が生えるため、会員やボランティア70~80人くらいが参加して縫ノ池とその周辺を掃除をする。地域の子どもたちを集めて釣り大会や魚の観察会も実施しており、水棲生物見学会では池の水を抜いて調査し、13種類の生物を観察できた。

10月に開催する湧水を使った「縫ノ池茶会」も広いエリアの人々に好評だ。

「湧水は定期的に検査しており、まろやかでおいしいと評判もよいので、毎日200人くらいが水を汲みに来られます。昨年は水不足のために、地下水をポンプで汲み上げる状況だったためお茶会は中止し、汲み水も止めていました。すると水はまだかまだかと問い合わせが多くて大変でした。今はもう大丈夫ですが、灌漑期の天候に影響されるので心配は絶えません」と赤坂さんは話す。

口当たりがやわらかな湧水を汲みに訪れる人々


縫ノ池の名称の由来、歴史の勉強会-湧水会の集会の状況

平成15年7月には全国「川の日」ワークショップで会の活動が評価され、グランプリを受賞。同年、会のメンバー8人が韓国の京畿道城南市(キョンギドー・ソンナム市)にて開催された「川の日」大会に参加。現在、赤坂さん自身は佐賀県内の90団体で組織される「佐賀水ネット」の副代表も務めている。

「縫ノ池湧水会はいろいろな方々の支援を得て活動しています。我々だけではこんな事業はできません。現在、縫ノ池の湧水量に変動はなく、毎秒0.8 湧出しています。昨年の9月には川津公民館で池の名称の由来や歴史を学ぶ勉強会を開催しました。今年はその成果を生かして、放生池の復活イベントをしたいと計画しています。縫ノ池を次世代に引き継ぐために、子どもをメーンにした活動で体験を通して水の大切さを体で覚えてほしいと願っています。水汲みやお茶会などでも水への意識が高まってくれたらいいと思います」と気負いなくおだやか話す赤坂さんに、水面に映る縫ノ池の樹木と社の景色が重なった。

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