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昭和56年(1981)7月13日、大分市生まれ。坂ノ市小・中学校卒。平成12年(2000)大分東高校卒業後、大分大学の教育福祉科学部4期生として入学。現在、人間福祉科学課程・生活環境福祉コース・環境分野・川野研究室の4年生。趣味は読書。卒業後も自然に関わる仕事をしたいと願っている。22歳。

取材・文/西島 京子

「第8回大野川河川シンポジウム」で水質調査結果を発表する 安達久子さん

「大野川クリーンアップキャンペーン2003」で大野川の清掃をする参加者たち

JR大分駅から国道10号線を宮崎方面へ約10kmのところにある大分大学は、明治9年2月に大分県師範学校として創設され、昭和24年5月に大分大学と改め学芸学部と経済学部を設置。以後、学部も増え、平成15年10月1日、大分大学と大分医科大学を統合するという歴史を持つ。

教育学部が教育福祉科学部に改組されたのが平成11年4月で、その中の人間福祉科学課程生活環境福祉コース環境分野、川野研究室に在籍する4年生の安達久子さんは、三重川の水質を調べ、住民参加型の河川事業に人がどのように関わっていくのかを卒論のテーマにしている。そして平成15年11月9日に三重町の「エイトピアおおの」で開催された「第8回大野川河川シンポジウム」で、三重川の水質調査の結果を発表した。

川野 田實夫教授

授業風景

大野川流域における市民との連携を図る「大野川河川シンポジウム」の第1回目は平成8年に竹田市で開催された。これは県下で初めての市民の手による河川シンポジウムで、平成10年に「大野川流域ネットワーキング」が発足。平成13年に発足した「大野川流域懇談会」は、行政と市民・学識経験者たちの連携組織として「大野川流域ネットワーキング」に参加している。

安達さんが学ぶ化学教室教授の川野田實夫教授は水の研究における第一人者で、このシンポジウムに最初から関わってきたが、「大野川流域懇談会」の事務局を置く「NPO法人河童倶楽部(幸野事務局長・平成14年発足)」の理事もしており、安達さんはその関係で「大野川クリーンアップキャンペーン2003」の大野川一斉清掃にも参加。川野教授の助手となってその様子を撮影した。

そして、その流れから安達さんは平成15年に立ち上がった「里の川プロジェクト」に直接参加することになったのだ。

三重川は大野川の支流で、大野郡の中心を流れている。住民の川に対する意識も高く、住民との協同での川の改善効果が見込めるというのが、「里の川プロジェクト」のモデルに三重川が選ばれた理由だ。

「三重川は大野川の中では汚れがひどい川というイメージがあります。では実際の水質はどうなのだろうと、私たちもプロジェクトに参加して、三重川の水質を調べることになったのです。ここでは植物や生物、鳥や町を調査するなど、いろいろなプロジェクトがあり、水質調査はその一環ですが、川野研究室のゼミ仲間5人と2年生16人の協力を得て、平成15年6月に三重川の7カ所で水質調査を実施しました」

里の川プロジェクトでは平成15年7月13日に市民の理解を得るための「みえんかわを語ろう」を開催。そのときに安達さんは6月の調査結果を発表した。

「6月に測定したときは前日まで雨が降っていたので、川が茶色になっていましたが、実験結果では意外にきれいだということが分かったんです。すると三重町の人はもっと汚れていると思っていたのになぜ、と疑問を持たれました。そこで9月に三重川を歩こうという三重川探検を実施して、ルートを決めて歩いてみました。するとやっぱり水が意外にきれいだったという感想が聞かれ、植物や生物がたくさんいることも分かりました。もっと川に入りやすくした方がいいなどの意見も出ました」

三重川の水質調査の様子

安達さんは水の少ない9月にもう一度仲間に声を掛けて水質検査を行った。すると前回のデータとさほど変わらない結果が出た。

「水質環境の指標となっているCOD(化学的酸素要求量)とDO(溶存酸素量)を中心に調べて、この数値が低いほどきれいな水というわけなのですが、三重川の水は、水道1級といわれるAA類型から水道2級のA類型、水道3級のB類型まであるという結果でした。ケイ酸の含有率を調べると、下流に行くにしたがって、どんどん増加しているんです。それで、下流では地下水が流入するので水が薄まってきれいな川になっているのではないかと思いました。それを11月9日に発表したのです。2年生を調査に巻き込んだのは、実際に川に行って、見て、触れることで、まず川に興味を持たせたいと思ったのです。もちろん三重町の出身の川野教授の協力が大きかったのですが。卒論までにもう一度水質検査に出かけます。三重川の周辺は人口も多く、見た目はあまりきれいではない川で生活排水の処理もされていないので、今後どんな川になっていくかを見守りたいと思っています」

水質調査中の安達さん

水質調査実施後教室で幸野さんの話を聞く

川野研究室のゼミのメンバー。
左より、中本洋介さん、長木修身さん、川野田實夫教授、安達久子さん、中島涼さん、竹本耕平さん

大分大学の研究室で水質検査をする学生たち

安達さんは幼いころから家の近くにあった尾田川で遊んでいたという。

「もともと環境問題に興味があったので、この大学を選んだのですが、川の水質調査をするとは思っていませんでした。でも、子どものころに毎日のように小さな尾田川でゴミ拾いをしたり釣りをしたり虫を取ったり、いつも遊びの中に川があったことや、大学3年生のときに川野先生のお手伝いで大野川流域で合宿したりして、大野川に親しんだことにも影響を受けていると思います。将来もずっと自然と関わる仕事をしたいです」と目を輝かせる。

「水は数値も大事ですが、舌でなめたり触れたりすることも大事です」と語る川野教授は「安達さんはこの調査を通じて強くなりましたよ。2年生までは泣き虫だったんですけどね」と目を細める。同じゼミの4年生の中島涼さんは「しっかりしてますよ」、3年生の竹本耕平さんは「何でも知ってる頼りになる先輩」、同じく3年生の中本洋介さんは「尊敬できる楽しい先輩」と安達さんを評する。京大、京大大学院、昭和電工でプラントを立ち上げ、退職後、試験で大分大学に入学したという現在62歳で4年生の長木修身さんも「最近の安達さんは水を得た魚のようだ」と笑顔を見せた。

「趣味は読書です」と答える安達さんにゼミの仲間たちから一斉にブーイングが起きた。「確かに本はたくさん読んでいるけど、もっと面白い趣味があるよね」との声も。研究室は取材中、何度も笑い声に包まれた。

安達さんのキラキラ光る大きな目に、大分の川の未来はどう映っていくのだろうか。若い感性と力に期待が高まる。

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