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九州地方計画協会

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(写真-1)昭和47年より水泳禁止となった大淀川市民水泳場(宮日記事)

宮崎市は30万の人口を抱える東九州の観光都市なのですが、市の真ん中を大淀川というほれぼれする一級河川がゆったりと流れています。ホテル街と橘橋、そこから眺めるさざ波にきらめく夕日はなかなかの風情です。一方、宮崎市民はずっと大淀川の表流水を原水として飲み続けてきました。河川はすべて流域の生業と人の心を映し出し流れてきます。大淀川も上流約30万人の生業の影響を受けてきました。13年間、私たちの会は、上流に理解を求めながら、下流市民の清らかで安全な飲み水のために大淀川の水質にこだわって改善活動を続けて来た団体です。

さて、写真ー1は約30年前の大淀川水泳場で、対岸のビルは宮崎市役所です。いま、子供たちの姿を見ることはできません。各学校にプールが出来たということもありますが、水質の悪化が要因だと思っています。大淀川は流長107キロ、流域面積は東京都より広い23万ヘクタール、その中に16市町村、日本第3位の畜産基地として牛17万頭、豚52万頭、鶏920万羽が飼育されています。

さて、活動13年を環境の視点で3つの期に分けて振り返ってみましょう。

(写真-2)大淀川第1ダム に繁茂したホテイアオイ

ホテイアオイのすき間にごみが

(写真-3)水道水源保護条例制定署名活動(平成4年春)

第1期:先行した市民団体の環境意識

会の発足当時、流域住民の川と水への思いは荒っぽく、川はごみを流す便利な放水路としか考えていない時期でした。これは下流でも同じで、おいしくない水道水の原因にはそう関心を持つというわけではありませんでした。

写真ー2は、中流にある「第1ダム」です。青々として牧場みたいですが、実は富栄養化でホテイアオイが繁茂して、その間にいろんなごみ(当時は冷蔵庫や古タイヤ、農薬の袋、犬・猫の死骸)が流れ着いていました。九州電力は年4回、計1500万円かけてごみを浚渫してきました。一事が万事、流域のあちこちで、牛・豚が流されたり、公営の屎尿溜めが溢流したり、工業団地やゴルフ場、処分場が乱開発されました。

会が発足すると、上流の方から次々にこんな情報が寄せられ、調査をし、資料をそろえて上流の自治体へ善処を要望しました。2年間はそういう活動が続きました。

91年には、九州の1級河川水質BOD(有機物汚濁の指標)ランキングでワースト1位、水道原水の取水口辺り(宮崎市相生橋)でBODが3を超えた(水道3級にも該当しない)こともありました。

92年、行政の施策を待っておれないと、私たちは手作りの「水道水源保護条例」案をもとに運動を提起しました。会員や積極的な市民が署名拡大に奔走され(写真ー3)、署名1万6千名分を添えて市議会に直接請求をしました。多くの市民が強く期待したのでしたが、「実効性に限界がある」と臨時議会であえなく否決されました。

この運動との関連は分かりませんが、この年「大淀川サミット」が始まり、翌年、「河川をきれいにする」16市町村の統一条例が制定されました。

(写真-4)水源の森づくり「わくわくの森」植樹(平成9年春)宮崎県山之口町青井岳国有林にて

第2期:リオ環境サミットからの 施策の遅れ

92年、リオで地球環境サミットがありました。私たちも勇気づけられましたが、立法や条例の制定までには数年の遅れがありました。「それなら、私たちで出来ることを少しずつでもやって行こう!」。条例制定運動の挫折から暫くして、「水源の森づくり」という新しいテーマに取り組みました。総会で講演していただいたクジラ博士・故奈須敬二先生の「豊かな森が、川を育む!」という言葉を受けて、青井岳国有林1ヘクタールの分収林の造林契約を結び、造林費用200万円余を市民募金で集め、97年3月「わくわくの森」と命名し、営林署職員を含む市民120人で植樹しました(写真ー4)。あれから7年、干上がっていた小さい谷に水が湧き、高い木は約7メートルにもなり、立派な林を形作っています。(平成15年、会が多忙になったため、森づくりの会は独立し、第2の「わくわくの森」を造林中です)

その後、96年のダイオキシン、98年の環境ホルモンが世に問われたのを受けて、大淀川コイの異常調査やベトナム戦争直後に国有林に埋設処分された「枯葉剤」の問題を取り上げ、調査活動をしました。これらの有害物は河川の水質、水道水質への影響を及ぼすものとして重視したのでした。

(写真-5)再開第1回学習会「水質基準の見直しについて」であいさつする水の会・川越瑞枝代表(市立大淀川学習館・平成15年9月)

第3期:行政との協働が始まった

リオサミット(92年)を受けて、環境基本法(93年)をはじめとして環境関連国内法の改正が進みました。河川法にも「環境」と「流域住民との協働」(97年)が謳われるなど、タイムラグは感じながらも次第に地方行政までその姿勢が変わってきました。

「大淀川水環境改善(清流ルネッサンス2)行動計画」地域協議会の民間団体の一員として委嘱を受け、計画案づくりに参加することになりました。市民サイドから政策提言をするには、川や水の実態を知り、政策情報を共有し検討する必要が出てきました。

最近は、政策情報はかなりの部分インターネットで入手できるようになり、情報の偏在はある程度解消されました。

川を知るためには、源流から河口域まで丸ごと川を見ようと、99年から「川の観察会」を実施することにしました。第1期は宮崎市内の一次支川15本、第2期は都城盆地の11本。3ヶ月に1本のスローペースですが、現在(03年11月)19本目が終わりました。観察は、川の地形、産業、構造、水質と生態系です。

また、過去約80回のいろいろな講演会や見学会をやってきましたが、政策情報を共有するために新たに「川と水の学習会」(写真ー5)を始めました。04年度からの水道水質基準の改定と水環境改善計画の開始に伴い、講演「水質基準の改定と水源の実状」、見学「浄水場の仕組みと検査体制」、講演「大淀川清流ルネッサンス2行動計画案」など実施しています。

今後、汚濁物質の負荷削減などの問題をテーマにしたいと考えています。

近々、流域の民間団体がNPO「大淀川流域ネットワーク」を結成する運びになっています。こうして流域の住民が行政と協働して改善に努力することが「地域環境力」の発現ではないかと考えています。そのために、市民が川や水を含む環境問題に今、力を付けることの必要性を痛感しています。

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