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九州地方計画協会

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岩岳川は、耶馬日田英彦山国定公園に属する犬ケ岳を源流とし、豊前市内を縫うように流れ周防灘に注ぎこむ延長21kmの2級河川です。その存在は、山伏修験の場であった求菩提山の山岳信仰や宇佐八幡宮の豊前進出にも深く関わりをもつなど、歴史的・文化的に重要な役割を占めてきました。またその名前が示しているように、上流域においては大きな石が転がっていたり、瀬や深い淵があったりする、変化に富んだ川です。

しかし、昭和55年の大水害後に利便性を重視したコンクリート護岸工事が行われた結果、水際が直線的になり流れも速くなってしまい、瀬や淵、河畔林など川を取り囲む豊かな自然環境が減少してきました。そのような中、平成9年に地域住民によって「岩岳川川づくり懇談会」が発足され、「自然豊かで親しみのもてる昔ながらの岩岳川の回復」が求められました。そこで、かつての子ども達の遊び場であり、今も豊かな河畔林が残っていながらも、土砂の堆積などによって川があふれる恐れのある本箇所の整備に着手しました。

まず川をよく観察して、流れの向きや大きな石の位置、周辺の植物など細かく調査を行った結果、現在の自然をできるだけ残すことや、手を加える場所の自然環境や生態系の復元を積極的に図ることなどから、昔ながらの伝統工法を取り入れました。伝統工法とは、石や植物、木など自然界にある材料を用いて、自然に逆わらず川の流れの向きを変えたり弱めたりする技術です。

工事は、川があふれる誘因となっている土砂を取り除くことから始め、そのときに出てきた大きな石を利用して強固に組むことで、コンクリートを全く使用せずに護岸や滝のような落差をつくりました。これによって様々な深みをもった変化のある流れが生まれ、落差工の下流には大きな淵が復元されて放流魚などの絶好の定着場所となっています。また現地にある材料のみで施工しているため、川にも優しく、人の手を加えたことがわからないほど自然に溶け込んでいます。

現在施工中ですが、完成して数年経過した後の、風景になじんだ美しい岩岳川の姿を思い描きながら、これからの川づくりに取り組んでいきたいと思います。

着工前

着工中

竣工/護岸工のほか水制工と落差工を行いました

落差工の下流に淵から瀬ができています

様々な水深によって水面に変化が生まれています

最上流の落差工
アーチ状にすることで淵の維持と流れの勢いを消粍させます

シンボルとなる大岩のまわりに淵をつくりました落差工の下流に淵から瀬ができています

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