●肝属川中流部 宮下橋を望む/中流域の代表的な地点で川幅、高水敷共に広く採草地でもある
●肝属川下流部 権現山山頂より河口部を望む/川幅、高水敷、共に広く、背後に田畑が多い。また汽水域で干潟も多く肝属川水系での鳥類出現種は1番多い
肝属川は鹿児島県大隅半島を東流し太平洋側に注ぐ自然豊かな河川です。河畔林や河川敷などには多様な環境がみられ、野鳥たちの重要な繁殖の場になっています。まさに、河畔は新しい生命を育むユリカゴといったところです。
環境により生息する鳥類群集注-1はさまざまで、肝属川ならびに支流(姶良川・串良川・高山川)の上流域の樹林や竹林には、森林鳥類群集のシジュウカラ・ヤマガラ・カケス・ヒヨドリ・コゲラなどが、中流域ならびに下流域の河川敷の草地や葦原には草原鳥類群集のセッカ・ヒバリ・オオヨシキリなどがせっせと雛を育てています。また川崖にはヤマセミやカワセミの巣がみられます。
今回は最も一般的な繁殖鳥のヒバリ・セッカ・ヤマセミ・カワセミの巣を紹介しましょう。
ヒバリは地上に営巣する鳥で、3~7月頃、河川敷内の草地の草の根元に、枯れた草の茎や根を集めて浅いお碗型の巣を作ります。灰白色有斑の卵を3~4個産みます。肝属川では中流域や下流域で多く観察されます。
セッカは水辺の草原で、5~8月頃、丈の低い草むらを選び、地上から約15~60cmの高さに、周りに生えているイネ科植物の葉を寄せ集めてその中にチガヤの花穂をクモの糸でつづり、出入り口を絞った深いコップのような巣を作ります。白色または淡青緑色有斑の卵を4~6個産みます。肝属川では上流域・中流域・下流域で観察されます。
カワセミとヤマセミは水辺に近い土の崖に3~7月頃、奥行き約50cm(ヤマセミは約1m)のトンネル状の巣穴を水平に掘って巣とし、最奥部を少し広くして産座とします。純白無斑の卵を4~7個産みます。肝属川では上流域・中流域で観察されます。
河川は鳥たちにとって、餌採り場や休息地であったり、繁殖地としての重要な生息空間(ビオトープ)なのです。大切に見守ってあげたいものです。
注-1
鳥類群集はさまざまであり、河川の自然環境においては、森林鳥類群集・草原鳥類群集・移水帯鳥類群集・内(淡)水面鳥類群集などに分けられます。
●ヒバリとその巣と卵
●ヤマセミの巣
●セッカとその巣
●セッカの巣
●姶良川上流部 鶴峯橋を望む/左右岸、共にイネ科の植生が多く、右岸側に大きな樹木が存在する。また、天然の大きな淵もある
●串良川上流域 左岸には水際に竹林、背後に樹林地がせまる
●ヤマセミ
●カワセミの巣
●カワセミ
●串良川中流部 大塚原前橋より下流を望む/左岸側は背後に田畑をはさんで樹林地がせまる。川幅高水敷共に一定に広い