ダムや堤防、橋、トンネルなど、九州には、歴史的にも技術的にも優れた土木建造物が各地に点在しています。このコーナーでは、「日本の近代土木遺産」に指定されたこれらの建造物を、全4回のシリーズでご紹介します。
■福岡県
1.河内堰堤(北九州市八幡東区)
板櫃川・昭和2年ー高44.1m・長189m
大正3年、東洋一のダムとして竣工し、話題を集めた河内貯水池。堰堤は前後面石積みの重力式含石コンクリート造り。工夫を凝らしたデザインは芸術的な価値が高いと讃えられ、注目を集めました。その工事には延べ90万人の人々がたずさわったと言われていますが、70年たった今でも漏水がないほどの完璧な技術で、その姿は今も当時のまま残されています。
2.筑後川導流堤(大川市・佐賀県川副町)
筑後川河口・明治23年ー長6,527m・幅6m
■曲淵堰堤(福岡市早良区)
室見川・大正12年ー高36.3m・長142.7m/動式ダム
■頂吉堰堤(北九州市小倉南区)
吉原川・昭和14年ー高36.5m・長135m
●1.河内堰堤(北九州市八幡東区)
■佐賀県
3.石井樋嘉瀬川水系/多布施川
石井樋は、治水の神様と呼ばれるほどの優れた技術を持つ武将・成富兵庫茂安によって造られました。嘉瀬川と多布施川の分流点にあり、主に、流域の洪水を防ぐ役割を担っています。また、佐賀城の内堀用水や飲料水、かんがい用水などにも幅広く利用されており、佐賀にとってはたいへん貴重な存在です。(現在、石井樋は、平成17年復元へ向けて工事中)
■蛤水道(神埼郡東脊振村)
田手川水系/坂木川・元和年間(1560~1634)
長約1,300m
■桃川の水路(伊万里市) 松浦川
■道かん溜池水路橋梁(多久市)
●3.石井樋(佐賀郡大和町)
■長崎県
4.西山堰堤(長崎市)
本河内水系/明治37年ー高31.82m・長139.39m
明治37年に水道用ダムとして竣工された旧西山ダムと西山堰堤。しかし、今から21年前の長崎大水害の際に、市の中心部を流れる中島川が氾濫したため、60m下に治水機能を備えた新しいダムを建設しました。この堰堤は長崎の価値ある土木遺産として、現在、新しいダムの貯水池内に保存されています。
5.本河内高部堰堤(長崎市)
本河内水系/明治24年ー高18.15m・長127.27m
6.大潟干拓締切堤防・(旧)樋門(佐世保市)
大潟新田/慶応1年ー長2,182m・高3.6m
本河内水系/明治36年ー高22.71m・長115.15m
■小ヶ倉堰堤(長崎市)
小ケ倉水系/大正15年ー高41.2m・長135.56m
■元船岸壁(長崎市)
長崎港/明治22年ー長673.2m
■山の田堰堤・溢流路(佐世保市)
佐世保川/明治41年ー高24.5m・長310m
■菰田堰堤(佐世保市)
転石川/昭和15年ー高40m・長38.7m
■千尽埋立地護岸・平瀬埋立地護岸・立神係船池護岸(佐世保市)
■黒島防波堤(北松浦郡)
小値加町/昭和11年ー長205m・高3.0m
■久須保水道(下県郡美津島町)
久須保湾-浅茅湾/明治33年ー長300m・幅22m
■(旧)浦上川河口舟着場(長崎市)
明治37年ー約200m
■中島川護岸(長崎市)
明治22年ー約200m
■戸石A防波堤(長崎市)
戸石漁港/昭和4年ー長260m・高5.5m
■転石(貯水池)堰堤(佐世保市)
転石川/昭和3年ー高22.7m・長146m
●4.西山堰堤(長崎市)
■大分県
7.白水堰堤(直入郡萩町)
白滝川/昭和13年ー高13.9m・長87.3m
1938年、水不足対策として造られた白水ダム。周辺地域の農業用水や電力源として利用されています。決して大きなダムではありませんが、「転波」と呼ばれる、水が階段状に落ちるように造られ、大分県初の昭和の近代遺産として国指定重要文化財となりました。このエリアの弱い地盤を考え、水が一度に落下しないように流れる速さを調整したり、堰堤の形にも工夫が凝らされています。
■乙原貯水池 堰堤・取水塔(別府市)
大正6年ー高16.36m・長60.6m
■大口田水路橋(安心院町)
板場川/明治45年ー長43.5m
■音無井路十二号分水(竹田市)明治31年
■香々地新波止地区防波堤(西国東郡)
香々地漁港/明治末~大正初ー長124m
■女子畑第二調整池ダム(女子畑発電所)
(日田郡天瀬町)昭和6年ー高34.3m・長133m
■小浦防波堤(南海部郡米水津村)
小浦漁港/昭和8年ー長55.7m
●7.白水堰堤(直入郡萩町)
■宮崎県
8.塚原ダム(東臼杵郡諸塚村)
耳川/昭和13年ー高87.0m・長215m(8門)
塚原ダムは日本でもっとも高いダムとして、1938年、宮崎県の美々津川上流に建設されました。日本初の可動式ケーブルクレーンを採用するなど、機械化による近代的技術を取り入れて建設されたことでも知られています。また、中国の万里の長城を思い起こすような美しいデザインでも注目され、現在は宮崎の代表的な土木遺産として登録されています。
■高千穂発電所 樅崎取水堰堤(西臼杵郡高千穂町)
五ヶ瀬川/昭和4年ー高10.3m・長65.9m
■芋洗谷調整池ダム(高千穂発電所)
(西臼杵郡高千穂町) 昭和5年ー高25.5m・長69.7m
●8.塚原ダム (東臼杵郡諸塚村)
■熊本県
9.三角西港護岸/(旧)三角港(宇土郡三角町)
三角西港/明治20年ー長730m・高6.36m
宮城県の野蒜港や福井県の三国港などと並ぶ重要な港として国が造った三角西港は、オランダの高い築港技術を取り入れた、歴史的価値の高い港です。現在でも石積ふ頭や水路、橋などが原型により近い形で残され、幅広く利用されているという点も素晴らしい特長のひとつといえるでしょう。また、それぞれの建築物は文化的遺産として評価され、保存の声が高まっています。
10.明丑開(旧)堤防(玉名郡横島町)
明治26年ー長約1,400m・高5~6m
■(旧)天草炭坑烏帽子坑・防波堤(牛深市)
明治30年頃ー坑口全高6.57m・防波堤長約50m・高約6m
■赤瀬港防波堤(宇土市)大正2年
■日奈久港防波堤(八代市)
明治28年ー東側・長55m・高3.6m/西側・長180m・高3.2m
■大谷(貯水池)堰堤(阿蘇郡高森町)
大谷川/昭和15年ー高25.1m・長127m
■白水発電所取水堰堤・排砂門(球磨郡五木村)
五木川/昭和2年
■十番開(旧)堤防(玉名郡横島町)
慶応2年ー長約1,000m・高1.5m
■明豊開・大豊開(旧)堤防(玉名郡横島町)
明治26年ー長約2,400m・高5~6m
●9.三角西港護岸/(旧)三角港(宇土郡三角町)
■鹿児島県
11.鹿児島港(旧)第一防波堤明治38年ー長498m・高6.6m
鹿児島港・第一防波堤は、海側が埋め立てられて現在は護岸となっていますが、「歴史的防波堤」と呼ばれていることからも、その価値の高さがうかがえます。南側の130mほどのエリアが「一丁台場」、そのつけ根から東側に広がる石積みの護岸が「新波止」、両方の接続部分は新波止の構造を受け継いで、周囲の景観にみごとに溶け合っています。
■島津家発電用ダム・跡(鹿児島市)
集成所/明治25年ー落差35m・5kw
■山川港(旧)渡し舟舟着場(揖宿郡山川町)
山川漁港/大正初ー(階段)高2.5m
●11.鹿児島港(旧)第一防波堤(鹿児島市)