町田川は、佐賀県北西部に位置する唐津市の石高山を源とし、市街化の進む田園地帯を北流し、唐津市街地を貫流して、玄界灘に注ぐ河川です。
町田川においては、唐津城(別名舞鶴城)に代表される観光都市唐津の城下町らしい景観を復元・保全し、「風景の中に城と水辺空間が生きたまちづくり」を目指して整備を進めてきました。
また、町田川は、毎秋大勢の観光客が訪れる唐津くんち曳山行事の一つである「幕洗い行事」が開催されるなど、唐津の歴史・文化・生活に重要な位置を占めるとともに、毎年初夏には、河川美化の一環として市民清掃が行われたり、近年は水質向上に伴い魚の放流が行われるなど、市民に愛される川となっています。
しかし中流域においては、田園地帯の宅地開発が急速に進行する中、河川自体は都市特有の単一化したものであり、護岸勾配も急で人にとって川との親水性に欠けた状況でありました。
このような中、旧川河道残地を有効活用し、都市近郊における「多自然型川づくり構想」、「水辺の楽校」の思想を取り込んだ河川改修計画を行いました。
整備にあたっては、自然素材を用いた多孔質な空間や多様な水際を創出するため、木棚工・柳枝工・水制工を採用し、ハイネコヤナギを植生することにより、水面に影を創りだすように工夫しました。
また、水辺への親水性を確保するため、緩傾斜階段や現地発生雑石を利用した遊歩道を設置したり、周辺の小学生、中学生の野外体験学習の場として水遊びや動植物の観察・採集ができるように、飛石や置き石を設けました。
さらに、上下流の河川生物の移動を阻害していた固定堰を撤去し、落差をなくすことにより、鮎など多種多様な生物の移動を容易にしました。
これらの整備の甲斐あってか現在では、サギやカワセミも訪れるなど自然豊かな河川となっています。
これからも、町田川が自然多き川であり、唐津市民に愛され、共生していける川であることを願っています。
●成工3ヶ月後の写真
●毎年11月2日~4日に行われる唐津くんち。14台の曳山が唐津市内を巡回する
●遊歩道は現地発生雑石を使用。また、住宅地であるため、背丈が高くなりすぎないハイネコヤナギを植生し、木棚工により多孔質な空間を創出
●着工前
水際に植生はあるものの親水性に問題があった
●1608(慶長13)年 豊臣秀吉の側近寺沢志摩守広高が築城した唐津城(別名舞鶴城) 唐津くんちで使用される曳山の幕洗いに出かける舟が 町田川の下流域を往復する