上津浦ダムは、熊本県が、天草上島の有明町を流れる二級河川上津浦川水系上津浦川に建設を進めている多目的ダム(生活貯水池)です。高さ54m、長さ205m、総貯水容量46万7千m3の重力式コンクリートダムで洪水調節、豊かな流れの確保、既存農地の用水確保、水道用水の供給を目的としています。
風光明媚な島々からなる天草地域ですが、その地域特性から長年洪水や渇水に苦しんできた歴史があり、上津浦ダムによる農業用水や生活用水の安定供給、出水被害からの防御には、地元住民から大きな期待が寄せられています。
本事業は、平成元年度に建設事業に採択され、平成6年度に工事用道路、付替道路等の工事に着工しました。平成11年には改定河川法に基づく上津浦川河川整備基本方針及び整備計画を全国に先駆け策定して、平成11年10月に本体工事に着手、平成13年2月に堤体打設を開始、5月には定礎式を開催しました。
本ダムの特徴は、堤体の打設方法に県工事では初めての拡張レア工法を採用したこと、支川に取水堰を設けトンネルにより貯水池へ導水し治水及び利水効果の向上を図っていること、監査廊のプレキャスト化等です。
ダム下流の晩田地区は熊本県の「ホタルの里百選」に選ばれており、ヘイケボタル、ゲンジボタル、ヒメボタル、オオマドボタルの生息が知られています。以前より地元の小学校ではホタルの生育環境の保全を図るため、児童達が水草を植える等の活動を毎年行っています。
このため下流の河道整備においては、従来の自然環境の復元を目指したホタル護岸による整備を行ったり、ダム本体工事で発生した濁水は濁水処理設備により処理し河川に放流する等、環境の保全に努力しているところです。
今後、平成16年度の事業完了に向けて本体工事は最盛期を迎えますが、地域に親しまれる素晴らしいダムの完成を目指しているところです。
●ダム下流部多自然型川づくり状況
●上津浦ダム本体工事部状況(上流より)
●ホタルの里学習会状況
●上津浦ダム本体工事部状況(下流より)
●上津浦ダム本体工事部状況
野津ダムは、一級河川大野川水系垣河内川の大分県大野郡野津町に建設された生活貯水池(洪水調節、既得取水の安定化・河川環境の保全、水道用水の確保)で、ダムの高さは34.9m、堤体積32,000m3の重力式コンクリートダムです。
平成10年6月にダム本体工事に着手、平成11年1月に堤体コンクリートの打設を開始、平成13年6月には試験湛水が完了し、平成13年6月21日に国、県、町の関係者、地元地権者及び施工業者等が集まり竣工式が盛大に執り行われたところです。
このダムは、コスト縮減対策の一環としてダム本体コンクリートにレディミクストコンクリート(いわゆる「生コン」)を採用したもので、同規模のダムとしては全国でも2例目となるものです。採用にあたっては、1.大量のコンクリートをダム建設工事に供給した場合の周辺の他の建設工事に与える影響、2.現場練りの場合との経済性の比較、3.品質の確保等について検討を行うとともに、打設にあたってはコンクリートの温度管理を適切に行うこととしました。この工法の採用によってダム工事費を削減することができるとともに、約1年間という短期間で打設を完了することができました。
ところで、野津町は大分県の民話の代表的な主人公である「吉四六さん」のふるさとで、民話の里として有名です。主人公の持ち前のとんち・奇才から多くの「吉四六ばなし」が生まれ、現在にいたるまで広く語り継がれています。
ダム周辺の整備にあたっては、周回道路の橋梁親柱などに「吉四六ばなし」のワンシーンが採り入れられており、ダム湖を一周するだけでいろいろな「吉四六さん」に出会えます。是非野津ダムを訪れて、「吉四六さん」ととんち比べを楽しんでみてはいかがでしょうか。
●竣工記念碑の除幕を終えた平松大分県知事と地元小学生
●試験湛水中サーチャージ水位に到達した野津ダム
●竣工式で記念放流のボタンを押す平松大分県知事ら
●ダム湖周回道路の橋梁親柱に彫られた「吉四六ばなし」
●親柱の「吉四六ばなし」
●ダムサイト左岸での生コンのバケット投入状況
●本体工事中の野津ダム