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祖母山の原生林・川上渓谷(尾平から天狗岩を望む)
出典:「大分県の生物」日本生物教育会大分大会記念誌

平治岳のミヤマキリシマ群落(久住町)
出典:新版「大分県植物誌」大分県植物誌刊行会

平治岳のミヤマキリシマ群落(久住町)
出典:新版「大分県植物誌」大分県植物誌刊行会

この春、「大野川の自然ガイドブック」を国土交通省九州地方整備局大分工事事務所が刊行しました。この小冊子は小、中学校のみなさんの学習の参考になればと思って作ったものです。

私は植物分野を執筆しましたが、子ども達と一緒に野外で観察したこと、話したことなどをまとめました。野外活動で印象的なことは、自然とふれ合う時の子ども達の瞳の輝きです。子ども達の大野川への思いに応えようと、イラストや写真をたくさん掲載して、楽しい読みものになるように努めました。その一部を紹介します。

大野川の源流域は巨大な森林ダム

大野川は延長107km、大分県で最も大きく九州で4番目に長い川です。源流域は祖母・傾山系(1、756m)や、くじゅう火山群(1、791m)がそびえています。これらの山々はほぼ同じ標高ですが、地質年代が違うために対照的な植生がみられます。

地質年代の古い祖母・傾山系はツガ、オンツツジ、キレンゲショウマ、ケイビランなど、日本固有種や西南日本外帯に特有の植物が多く、しかも九州の気候を反映したモミ・ツガ群落やブナ群落が森林帯を形成しています。

これに対して地質年代の若いくじゅう火山群は、1、500m付近が森林限界で山頂部はコケモモ群落やミヤマキリシマ群落などの低木林です。また山麓は火入れや放牧などの人手が加わって、広大なススキ・ネザサ群落が広がり、ここには氷河期の頃、朝鮮半島から南下したキスミレ、エヒメアヤメ、ヒゴタイなど、多くの遺存植物が生育しています。

森林の土壌はふわっとしていて、雨水をよく吸収して貯えるので、森林や草原に囲まれた大野川源流域は、巨大な「森林ダム」と言ってよいでしょう。森林の土壌にしみこんだ雨水は、やがて湧水となって再び地上に出てきます。大野川上流域は湧水が多く、何個所も名水に指定されています。大野川のきれいな水、豊かな水を守るために源流域の森林を大切に守りましょう。

川の水質を浄化する干潟の動植物

日本の沖積平野の面積は国土の10%、ここに国民の51%が生活しています。そのため自然はほとんど残っていません。しかし干潟や河川敷には人が開発する前の自然植生が残っています。大野川の下流域では分流の乙津川の河川敷に広く残っています。しかし36年前に私が調査した植生図や植生調査資料に比べると、ハママツナ、ハマサジ、フクドなどの干潟植物群落が減少して、帰化植物の増加が目立ちます。また住民の要望でスポーツグラウンドに利用されています。河口の干潟には希少種となった大切な動植物がたくさん生活しています。またこれらの生物は水質浄化にも一役買っているのです。大切に保全したいものです。


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