大分県大分郡 庄内町
豊かな森に降る雨は、長い年月をかけて積もった落ち葉や 良質な土壌にゆっくりとしみこみ、地下の深いところへ貯えられていく。
それはまさに天然の壮大なろ過器だ。
たっぷりと時間をかけて浄化された雨水は、甘露な水に変わる。
大分県の中央に位置する黒岳は九州の尾根といわれるくじゅう連山の東にあり うっそうとした原生林に覆われて、雨の多い湿潤な気候に恵まれている。
クヌギやナラの雑木林、ブナやカエデの森、コミネカエデやナナカマドの森 谷に多く見られるオヒョウ、ツクシシャクナゲなどに守られて、ヤマネやテンなどの野生動物や、ミソサザイやキビタキなどの野鳥、 多くの昆虫類が、自由に豊かに生き続けている。
海抜八五〇メートルにある男池の湧水は、 黒岳の森の営みがつくりだす素晴らしい贈り物だ。
その水はカルシウムとケイ酸を含み、まろやかですがすがしい。
湧水量は毎分十四トン、一日約二万トンで、一年中涸れることはない。
環境省の日本名水百選にも選定され、登山客はもちろん 遠くから水を目当てに訪れる人も多い。
日本でも有数の植物の宝庫であり、美しさでも類を見ない黒岳の森と湧水は その姿をいつまでもそのままに残し、守り続けたい水の郷である。