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ポリマーグリッド補強した函渠基礎に関する検討

佐賀大学教授
 低平地防災研究センター長
三 浦 哲 彦

建設省佐賀国道工事事務所長
柳 澤 茂 樹

九州地方建設局道路部交通対策課課長補佐
(前 建設省佐賀国道工事事務所工務課長)
平 川 輝 義

1 まえがき
佐賀平野一帯における道路舗装の維持管理における一つの問題は,有明粘土層の圧密沈下および広域地盤沈下に伴う道路舗装面と構造物との間の段差発生である。函渠(ボックスカルバート)等の基礎は多くの場合先端支持杭を用いるが,周辺地盤が沈下するのに伴って段差が発生し,維持補修に多大な費用と労力を要している現状である。問題解決のためには,ボックスカルバートのような軽量構造物の場合には浮き基礎形式を導入して構造物が地盤面と共に沈下するようにすればよい。このタイプの基礎形式として,摩擦杭基礎や砕石基礎などがあり,過去には有明粘土地盤での施工実績があった。
いつの頃からか先端支持杭の採用が主流となったが,これは道路橋示方書に軟弱地盤中の摩擦杭使用に対する制約が設けられたこと,先端支持杭の設計計算は明快であること等が関係していよう。摩擦杭が設計者に好まれなくなった理由の一つは,その支持機構に不明のところが多いためであるが,最近,粘土中に設けた杭の周面支持機構の研究が進展しており1),今後改めて摩擦杭工法が再評価されることも考えられる。
本報告では,新しいタイプの浮き基礎形式として,ポリマーグリッドで補強された砕石層をボックスカルバート基礎に導入することを検討する。ボリマーグリッドは高い引っ張り強度を有する網目状の高分子材料であり,急勾配盛土の築造,軟弱地盤上の盛土材補強,その他の地盤補強工法に広く利用され始めた材料である2~5)

2 補強基礎に関する実験
2.1 ポリマーグリッド
我が国では,樹脂網を軟弱地盤上に敷設して地盤を拘束し土のまき出しを容易にする敷網工が世界に先駆けて実用化されてきた。しかし,これらの材料は剛性不足と耐久性の問題があったため,恒久的な補強材として用いられることはなかった。1979年に英国で開発されたボリマーグリッドは,軟鋼にも匹敵する高い剛性を持ち,耐久性も確認されて補強土への応用が広がりつつある。
この材料を砕石と組み合わせて用いる場合の補強メカニズムは,テンションメンブレン効果(引張り強度による荷重の支持),インターロッキング効果(骨材の水平移動の拘束効果),相互貫入防止効果(細粒土の貫入の防止)の3つであると考えられている。
以下では,基礎実験として行った,ポリマーグリッドを箱状に組み立てたジオセル5)基礎,ポリマーグリッドを砕石中に単純敷設した基礎,無補強の砕石基礎の3つについて比較検討を行う。
2.2 室内実験の方法
実験には,蓮池粘土(路床土),砕石(C-40,修正CBR 120%)およびポリマーグリッド(ジオセルモデル:SR-2とSS-1,単純敷設モデル:GM-1とSS-35)を用いた。補強効果を解析的に調べるために,砕石中にボリマーグリッドを敷込んだ状態で引き抜き試験(プルアウト試験)を実施した。写真ー1に示す内寸1m×0.8m,深さ60cmの鉄製試験箱を用い,砕石の間にストレンゲージを貼付したボリマーグリッドを置き,その上から上載荷重を負荷した状態でポリマーグリッドをスリットを通して引き抜いた。

次に補強工法の変形特性を調べるために,広さ1.5m×1.5m,深さ1.0mのコンクリート製土槽を用いた載荷実験を2シリーズ行った。その一つは,土槽内にジオセルモデル(写真ー2),単純敷設モデル,および無補強の砕石基礎モデルを各々50cm厚さにつくり載荷する実験,他の一つは粘土層の上にジオセルモデルと単純敷設モデルをセットした粘土一補強基礎系に対する載荷実験である。

3 室内実験の結果
3.1 引き抜き試験と載荷試験
引き抜き試験により得られた引張り力と土中のグリッドのひずみの測定結果より,任意の引張り力における土中のグリッドのひずみ分布を求めた。このひずみ量と材料の弾性係数から,グリッドに生じる引張り力が求められる。また,グリッド各節点間の差から求めた各節点の抵抗力を定め,数値解析に用いた。
次に,各基礎工法の変形特性を調べるための土槽載荷実験の結果は図ー1に示すとおりであった。単純敷設の場合は無補強の場合に比べて約1.4倍の変形係数を示し補強効果は大きい。一方,ジオセルの場合は,逆に変形係数が小さくなっており補強効果は認められない。図ー2は,有明粘土層(厚さ40cm)の上に,ジオセル基礎と単純敷設基礎を設けた粘土一補強基礎系に対する載荷試験の結果を示す。両者の比較から,施工が簡単で材料費の安い単純敷設モデルは,ジオセルに比べて変形係数が約1.5倍と大きく補強効果は高い。

以上のプルアウト試験および載荷試験で得られた材料特性は表ー1に示す通りであり,これらは解析的検討に用いられた。表中のEは弾性係数,νはポアソン比,γは単位重量である。

3.2 ジオセル基礎に関する考察
ジオセル構造は剛性の高い工法であるとされてきた5)が,本実験においては,剛性は最も低いと言う結果が得られた。これはジオセルに砕石を投入して締固める際に,セルの隅角部分に十分充填されない部分が生じるためである。なお今回の実験では,その結果を直ちに実際設計に導入するという観点から,現場でのジオセルの締固め状況とかけ離れないように配慮しながら締固めを行っている。ジオセルは,組み立てにもかなりの労力と時間を要することも今回の実験でわかった。
以上の結果より,函渠基礎はポリマーグリッドを単純敷設して補強した砕石基礎を採用し,以下の解析についても単純敷設モデルについてのみ行った。

4 補強効果に関する解析的検討
4.1 解析モデル
本解析では,土とポリマーグリッドの不連続面を考慮できるジョイント要素を採用するとともに,室内試験より明らかにしたボリマーグリッドの土中における引き抜き抵抗を用いて,その補強効果について検討した。モデルとしてジョイント要素と軸力のみが作用する棒要素を組み合わせたものを用いた。ジョイント要素の剛性は,せん断剛性と垂直剛性によって表される。土とポリマーグリッドの間のせん断剛性の値は,土中におけるボリマーグリッドの引き抜き試験によって求められる。また,垂直剛性はジョイント要素上下面の垂直応力の連続性から決定することができる。
次の3ケースの解析モデルについて検討した。ケース1は,活荷重T-20を対象に,厚さ50cmの砕石層にポリマーグリッド2枚敷設したモデル(アスファルト15cm・路盤45cm・安定処理土100cm・函渠1.95m・砕石)である。ケース2は,厚さ100cmの砕石層にポリマーグリッド1枚敷設した場合,ケース3は活荷重T-9を対象にした場合(ボリマーグリッド2層)である。まず道路構造物の自重計算を行い,その後任意の上載圧σn(ケース1とケース2:6tf/m2,ケース3:3tf/m2)に対する変形解析を行った。ケース1については,函渠に大変形が生じた場合を想定して20cmの強制変位に対する補強効果についても検討した。
4.2 解析結果
図ー3はケース1についての有限要素解析の結果である。ここに示した沈下曲線は,アスファルト表面およびポリマーグリッドで補強した砕石と粘土の境界面の2箇所について示したものである。50cmの砕石層にポリマーグリッドを2枚敷設したケース1の場合は,100cmの砕石層にポリマーグリッドを1層敷設したケース2の場合に比べて沈下量が小さく,砕石と粘土の境界面におけるボリマーグリッドの補強効果が大きい。T-9を対象にしたケース3は,上載荷重が小さいことから沈下量も小さく,ポリマーグリッドによる補強効果が解析上明確には現れなかった。ケース1に強制変位を与えた場合は図ー4に示している。ここでは,強制変位として20cmを用いているが,不同沈下が大きくなる程ポリマーグリッドの効果は増大してくる。

5 現場施工
5.1 現場の状況
国道34号江北バイパス牛津地区において拡幅工事を実施するにあたって,ボックスカルバートの施工を行うことになった。慣用的基礎工法である先端支持杭を採用すると構造物と周辺地盤との間の段差発生は避けられないことから,ポリマーグリッド補強基礎を採用した。
図ー5は当該地点の平面図である。まず,1号函渠および2号函渠を完工し,約1年間を経た後に3号函渠を設置して拡幅工事を完成するという計画を立てた。現地の地盤特性は,図ー6に示すようにおよそ8m厚さの有明粘土層(シルト質)が堆積している典型的な軟弱地盤である。ボリマーグリッド(GM-1)補強の砕石基礎の構造は,室内実験の結果および解析結果に基づいて,図ー7に示すような構造とした。

5.2 施 工
工事中に周辺地盤への変形の影響を小さくするために仮設矢板を施工し,その後に掘削した。掘削底面の有明粘土は鋭敏であり乱れによる強度低下が著しいので,砕石層とのセパレーションを期すために不織布(タフネル)を敷き,その上に砕石をまき出した。砕石の間にボリマーグリッドGM-1を2層敷設し,さらに砕石を敷くという順序で補強砕石層を施工した。砕石はタンパーで締固めた。この基礎の上にボックスカルバートを施工した。周辺を埋め戻した上で仮設矢板を引き抜き,舗装工事を行った。1988年12月に1号函渠と2号函渠を完成し,約1年間の観測の後1990年1月に供用開始した。1991年2月に3号函渠を完成し同3月に供用開始した。
5.3 観測結果
図ー8は2号および3号函渠の施工経過と函渠の沈下量の経時変化を示す。工事が開始されてから約3年間が経過しているが,この間の広域地盤沈下は最大20mm程度であったので,函渠の沈下量は大部分が工事に伴う沈下である。2号函渠の沈下量は,施工後100日の間に7cmから12cmに達しているが,交通供用の前と後では沈下の進行はあまり変わらないことが知れる。3号函渠が施工され後に,3号函渠と接している側の2号函渠の沈下量は急に大きく進んだ。最終沈下量は2号函渠の両側で約20cmとほぼ同じ大きさとなっている。図ー9は3号函渠の横断方向の沈下分布を示している。沈下量は函渠を中心に,10mから15mの範囲で影響が認められる。沈下量が解析結果に比べてかなり大きく出たのは,施工中のa)掘削に伴う底面土の軟弱化と圧縮性の増加,b)軟弱層上での砕石層の転圧困難性,c)仮設矢板の引き抜き時の粘土共上がりに起因する周辺地盤の沈下,等によると考えられる。交通供用後に函渠の内部からの検査を1992年4月に実施し,クラックの発生の有無を調べた(写真ー3)。その結果,クラックは全く発生していないことが確認された。函体の全沈下量は大きかったが不等沈下量は比較的小さく函渠は所期のとおり機能している。

函渠の直下および補強砕石基礎の下で測定した土圧の経時変化は図ー10に見られるようであった。このデータは,補強砕石基礎は荷重分散の効果を発揮していることを示している。本報告では,紙数の関係で割愛したが,現場では層別沈下,間隙水圧等も測定しており,現在も動態観測を行っている。1992年度には,これらの観測データについての解析と施工に伴う沈下対策について総合的な検討を実施する予定である。

6 まとめ
以上の検討結果を要約すると次のようである。
(1) 軟弱地盤上の函渠基礎工法として,ボリマーグリッドを単純敷設した補強砕石基礎は有用であることが室内実験により確認できた。
(2) ジオセル工法は,複雑な構造のために砕石の充填が不十分で剛性が低くなり組立に時間と労力を要する,などの問題点が明らかになった。
(3) 解析的にボリマーグリッド補強の砕石基礎の支持力変形特性を調べ,単純敷設の工法は函渠基礎として機能するとの結論を得た。
(4) 国道の函渠工事においてボリマーグリッド補強砕石基礎を適用し動態観測を行った。函体の全沈下量は予測値よりも大きかったが,不等沈下は小さくクラック発生の問題は生じていない。
(5) 函体の全沈下量が大きかった原因は,掘削に伴う底面土の軟弱化と圧縮性増加,砕石層の転圧困難性,矢板引き抜きに伴う地盤沈下,等である。これらの問題を解決すれば,本工法は軟弱地盤上の函渠工事に有効であると考える。

謝 辞
本報告の中で,解析は佐賀大学坂井晃助教授により,プルアウト試験はベルガド博士(当時佐賀大学)によりなされたものである。記して感謝の意を表します。

参考文献
1)三浦 他:粘土地盤における周面支持杭一床版系基礎に関する検討,第47回土木学会,1992.9
2)福田・三浦・山内:延伸プラスチックグリッドによる擁壁土圧の軽減効果,土と基礎,No.317,pp.21-26,1985,
3)土質工学会:土と基礎小特集「補強土工法」土と基礎,No.308,PP.5-62,1983
4)Giroud,J.P:Design of unpaved roads and trafficked areas with geogrids,Symposium on Polymer Grid Reinforcement,PP.116-127,1984.
5)Jones,G.J.F.P:Earth Reinforcement and Soil Structures,Butterworth and Co.,Ltd. 1985.

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