持続可能なインフラメンテナンスの実現に向けて
~九州におけるインフラメンテナンスの取組~
~九州におけるインフラメンテナンスの取組~
国土交通省 九州地方整備局
企画部 企画課
課長補佐
企画部 企画課
課長補佐
石 松 和 孝
キーワード:インフラメンテナンス、九州フォーラム、インフラメンテナンス市区町村長会議
1.はじめに
私たちの生活を支える道路、橋梁、上下水道などの社会インフラは、その多くが高度経済成長期に整備されており、建設後50年以上を経過する施設の割合が年々増加している(表- 1)。
2012年12月2日、中央自動車道笹子トンネル(上り線)にて、天井板が約140m にわたり落下するという重大事故が発生した。この事故の背景には、複数の要因が複雑に絡み合っていたとされているが、これを契機として、インフラ老朽化問題が一層注目されるようになった。
一方で、老朽インフラが増加しているにもかかわらず、市町村における技術系職員の数は減少傾向にある。実際、技術系職員が5人以下の市町村は全国の約半数を占めており(図- 1)、施設数に対する人員および財源の不足が深刻化している。こうした状況の中で、インフラメンテナンスの重要性と緊急性はますます高まっており、対応は喫緊の課題である。
本稿では、こうした社会背景を踏まえ、九州におけるインフラメンテナンスの具体的な取組について紹介する。

2.国土交通省のこれまでの主な取組
2012年の笹子トンネル天井板落下事故を受けて、国土交通省は2013年を「社会資本メンテナンス元年」と位置づけ、老朽化対策に本格的に着手した。翌2014年には「インフラ長寿命化計画(行動計画)」を策定し、この計画に基づき、各施設ごとの「個別施設計画」を作成して老朽化対策を体系的に推進してきた。
2015年には「日本再興戦略改訂2015- 未来への投資・生産性革命-」にて、「インフラメンテナンス国民会議(仮称)」の設立が明記され、2016年11月28日に正式に同会議が発足。産官学民が連携する体系の整備が加速した。
さらに2022年には、社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会技術部会において、2012年から2021年までの10年間を第1フェーズと位置づけ、これまでの施策のレビューと今後の方向性を整理した。『総力戦で取り組むべき次世代の「地域インフラ群再生戦略マネジメント」~インフラ第2 フェーズへ~』として提言をとりまとめ、持続可能なインフラメンテナンスの実現に向けて、取組を推進している。

(1)インフラメンテナンス国民会議
「インフラメンテナンス国民会議(以下、「IM国民会議」)は、急速に老朽化が進むインフラの安全性と機能を持続的に確保するため、産官学民の多様な主体が連携して技術の共有や人材育成、先進技術の導入、地域との協働を推進するプラットフォームとして設立された(図- 2)。


(2)IM国民会議 九州フォーラム
九州フォーラム(図- 3)は、IM国民会議の公認フォーラムとして、九州地域において自治体支援や技術開発の促進、ベストプラクティスの共有を目的に平成30年11月に発足した。

これまで産官学の行政、企業および個人会員から構成される企画運営会議(図- 4)を中心に、インフラメンテナンスに関する自治体支援、技術マッチングや市民参画の取組を展開している。

(3)IM市区町村長会議 九州・沖縄ブロック
IM市区町村長会議は、地方自治体における効率的・効果的なメンテナンスを目指すことを目的として、令和4年4月28日に設立された。市区町村長会議は、市町村の首長で構成されており、全国を9 つのブロックに分け活動している。九州・沖縄ブロックでは、先進的な取組事例の共有やメンテナンスの課題、今後の方向性に関する意見交換を行うなど、九州フォーラムとも連携しながら取組を推進しており、その参画率は94%(全国は69%)となっている。
3.九州における令和6年度の主な取組
(1)第10回ピッチイベント(R6. 10.9開催)
初となる九州フォーラムとIM市区町村長会議九州・沖縄ブロックが合同で開催した本イベントでは、「広域、複数、多分野のインフラ群の一体的マネジメントへの総力戦」をテーマに行った(写真- 1)。

第一部では、基調講演として「わが国のインフラメンテナンスに関わる最新の話題」に加え、インフラの包括的民間委託を先進的に取り組んでいる新潟県三条市の取り組みを紹介いただいた。第二部ではIM市区町村長会議として、九州の地方自治体のメンテナンスに関する取り組み状況に加え、首長による「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(群マネ)導入の検討、導入に向けた課題について活発な意見交換が行われた(写真-2)。第三部のパネルディスカッションでは、第二部の意見交換を踏まえ、九州における「群マネ」導入への取組の課題や今後のあり方、導入促進に向けた議論が行われた。
本イベントには、450名以上が参加(オンライン含む)し、関心の高さが窺える内容となった。

(2)広域的・戦略的インフラマネジメントセミナーの開催(R7. 2.12開催)
九州地方整備局は、自治体が直面する職員不足、専門的知見不足、財政不足等の課題に対処するための重要な手法である「群マネ」について、先導的な優良事業の取組を情報共有することで、自治体職員のインフラメンテナンスに関する意識の向上(底上げ)に加え、課題の把握、今後の取組内容の参考としていただくことを目的に九州・沖縄ブロック「第2回広域的・戦略的インフラマネジメントセミナー」を開催した。
セミナーでは、「群マネ」モデル地域における検討状況や類似の先行事例を含めた最新の検討状況の紹介、九州における人口減少や自然災害の課題に関連したインフラメンテナンスの包括的民間委託の導入状況、新潟県三条市及び宮崎県の公益財団法人建設技術推進機構が先駆的に行っている取組を紹介いただいた。セミナー後に実施したアンケート調査(参加者350名中117名が回答)では、全員が有意義であったとの回答であった。さらに、参加者の51% が包括的民間委託の「導入を検討したい・必要性を感じた」と回答しており、セミナー開催の意義をうかがえる内容となった(図- 5)。一方で、包括的民間委託の導入は必要と感じているものの、財政的・マンパワー的に厳しく、導入が難しいと感じている自治体もあり、導入にあたっての今後の課題も浮き彫りになった。

(3)マッチングイベントの実施(R7. 2.7開催)
九州フォーラムは、民間技術者が保有する最新の技術やノウハウを広く共有し、技術の発掘と社会実装、連携の促進を目的としたマッチングイベントを平成30年度から開催(WEB)している(写真- 3)。令和6年度は、全国の道路橋の約7割を市町村が管理し、特に小規模の橋梁を管理している割合が多い現状を踏まえ、下記2 点をテーマとした。
【テーマ】
①小規模(橋梁15.0m 未満程度)橋梁にも効果的な点検・診断技術
②小規模橋梁における橋梁補修方法(DIY 施工も可能など)、材料
小規模橋梁に焦点を当てたイベントでは、計8社(①3社、②5社)から技術についての提案があった。イベント後に実施したアンケート調査(参加者480名中307名が回答)では、99% が「有意義であった」と回答し、今後は、他分野インフラ(河川、上下水道、トンネル等)への拡大も期待されている。本イベントでマッチングされた技術が今後、現場での実証を経て社会実装へとつながることを期待しているところである。

4.九州地方における先進事例の紹介
最後に、地方自治体による包括的民間委託の先進事例として宮崎県の事例を紹介する。宮崎県では、技術職員の減少や財政的制約といった課題に対応するため、公益財団法人宮崎県建設技術推進機構が中心となり、包括的インフラ管理支援を展開している。県内24 自治体が管理する約5,000橋を対象に、定期点検、診断、データ一元管理、長寿命化修繕計画を一括(図- 6)で実施している。
この広域的な包括委託により、点検費用の削減や事務負担の軽減、計画策定の効率化を実現。自治体間での統一的な基準運用も可能となった。
3(2)のセミナーでも本取組が紹介され、参加者からは「非常に参考となった」「導入を前向きに検討したい」との声が多数寄せられた。

5.おわりに
高度経済成長期に整備された我が国のインフラは、老朽化が加速しており、今年発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故や京都市の水道管漏水事故など、インフラメンテナンスが社会問題としてクローズアップされてきているところである。
九州地方整備局では、持続可能なインフラメンテナンスを目指し、IM国民会議や地方自治体、関連団体と更なる連携を図り、自治体の抱える課題を把握し、先進事例の共有や課題解決に向けた工夫事例の共有など、地方自治体が次の行動につなげていただくような取組を展開していく。
参考文献
1)国土交通省:PPP / PFI 推進施策説明会資料
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/content/001858381.pdf
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/content/001858381.pdf
2)インフラメンテナンス国民会議HP:
https://jcim.jp/about
https://jcim.jp/about
3)国土交通省 九州地方整備局HP:インフラメンテナンス(市区町村支援)
https://www.qsr.mlit.go.jp/s_top/kikaku/infrastructure_maintenance.html
https://www.qsr.mlit.go.jp/s_top/kikaku/infrastructure_maintenance.html
4)公益財団法人 宮崎県建設技術推進機構HP:
https://www.mk-suishin.or.jp/
https://www.mk-suishin.or.jp/