DX推進に向けた組織横断的な取り組み
~DX推進に向けた意識の醸成~
~DX推進に向けた意識の醸成~
国土交通省 九州地方整備局
企画部 インフラDX推進室
課長補佐
企画部 インフラDX推進室
課長補佐
桑 村 建 一
キーワード:DX推進、人材育成、eラーニング
1.はじめに
DX推進に向けた組織横断的な取り組み
~DX推進に向けた意識の醸成~
~DX推進に向けた意識の醸成~
国土交通省 九州地方整備局
企画部 インフラDX推進室
課長補佐
企画部 インフラDX推進室
課長補佐
桑 村 建 一
キーワード:DX推進、人材育成、eラーニング
1.はじめに
九州地方整備局ではインフラDXを推進するにあたって、令和4年6月に整備局長を会長とする九州地方整備局インフラDX推進会議を設置し、令和4年8月にアクションプランを策定、その後、内容の充実を図り令和5年11月にはアクションプラン2 を策定しDXの取組みを進めている。
アクションプランを策定し、九州地方整備局における各部・室等において所掌されている業務に関連するインフラDXに関する取組みを組織的に進めるとともに、関連技術や実施内容を組織横断的に情報共有を図ることで、分野網羅的、組織横断的に取組みを進めている。
アクションプランの取組みに加えて、九州地方整備局全体として組織横断的にインフラDXを進めていくため、より多くの職員に向けた意識の醸成を含め、災害時や通常業務においても広く使えるインフラDXの技術について普及促進しており、その取組みについて報告する。
2.職員自ら使えるインフラDXの技術
(1)360度カメラ
360度カメラは、カメラに2つ以上の魚眼レンズが搭載されており、各レンズが180度以上の視野をカバーしている。各レンズから撮影された写真を結合することで360度写真の作成を可能としている。360度全周の撮影が1度の撮影で可能となるので、1度撮影するとその場所から見たい画角を後で自由に見ることができるため、撮り逃しを防止することができる。
また、一般的な360度カメラは、スマートフォンと360度カメラ本体を無線接続し、スマートフォンで画像を見ながら遠隔操作にて撮影することができる。この機能によりカメラポールや自撮り棒等を活用することで、危険な箇所に近接することなく安全な位置から撮影することが出来る。

(2)バーチャルツアー
複数枚の360度の写真を用い実際に現地にいるかのような体験が可能なコンテンツとしてバーチャルツアーがある。360度写真と図面等を活用することで空間を自由に移動しながら、自由な角度で閲覧することができる。また、360度写真をベースに各種リンクアイコンを配置し、図面や3次元点群モデル、動画等の様々なデータをとりまとめ、資料として一元的に管理・使用することもできる。
通常の業務においては、ダム等の施設の紹介や、歴史まちづくりで歴史的風景や建物の紹介、工事の進捗状況等をバーチャルツアーにしてホームページに公開することで、一般の方に事業を分かりやすく紹介している。また、河川や道路の管理用に施設内のバーチャルツアーを作成し現地の状況確認がいつでもできるようにしているものもある。

(3)3次元点群計測
職員が自ら使える手軽なものとして、スマートフォンを使用した3次元点群計測がある。点群データは、「点の群れ」という名前の通り、無数の点で構成されているデータで、座標や色に関するデータを持っている点が無数に集合することで物の形を表している。

この点群データを取得する技術を3次元点群計測と呼び、レーザーによる手法と写真による手法と大きく2 種類ある。iPhone のPro 以上にレーザー計測装置(LiDAR センサー)が搭載されており、これを利用する方法と、対象の物体の写真を複数枚撮影し、ソフト内で各写真の撮影位置を推定して3次元的に並べ、点群データを作成するSfM処理を利用する方法の2つである。
職員の多くがiPhoneのPro以上を利用できる環境ではないことと、TEC-FORCEの標準アプリでもあることから、SfM処理を利用した写真計測技術の利用を勧めている。
また、TEC-FORCEの標準アプリで計測した3次元点群データは、クラウド上で処理され閲覧もクラウド上で可能であり、通常職員が業務で利用しているパソコンでは処理が重くてスムーズではない3次元点群データの処理や閲覧を快適に行うことができる。
3.インフラDXの技術が使える人材の育成
(1)研修
九州地方整備局では、計画研修や基礎技術講習会においてDX研修を行っている。
計画研修におけるDX研修は令和4年度から実施している研修で、令和6年度は職員自ら使えるインフラDXの技術として、360度カメラ、バーチャルツアー、3次元点群計測をカリキュラムに取り入れ講習を行っている。研修生自ら360度カメラで撮影を行い、そのデータを利用してバーチャルツアーを実際に作成している。

また、3次元点群計測では、研修生自らスマートフォンのカメラを使って計測を行い、自分の計測した3次元点群データをクラウド上で閲覧しながら、距離や面積等の計測方法について実習を行っている。
計画研修のDX研修ではこの他にも、ゲームエンジンを利用し、整備後の空間を疑似体験できるメタバースの講習や音声読み上げソフトを利用した説明資料の作成等幅広なDX技術の講習も行っている。
DX研修では様々な内容を研修に取り入れているが、表- 1 のアンケート結果からも分かるとおり3次元点群計測やバーチャルツアーは満足度が高い傾向となっている。

(2)事務所DX勉強会
事務所DX勉強会は、DXを進めたい事務所よりインフラDX推進室に依頼があり、それに対応する形で令和6年度から始めた取り組みである。

研修では充実した環境と内容でDXの技術を学べる一方、対象職員が限られているためインフラDXの技術を広めたいDX推進室としても渡りに船の依頼であった。また、事務所開催とのことで、技術系職員だけでなく、事務系職員も参加しているもので、勉強会の内容や方法は手探りではあったが、職員自ら使えるインフラDXの技術である、360度カメラ、バーチャルツアー、3次元点群計測をカリキュラムに取り入れたことで、勉強会に参加した職員は生き生きと実習していた。アンケートの結果でも図- 3 のとおり効果的な勉強会となっている。勉強会で実施したインフラDXの技術は、工事関係だけでなく管理関係や用地関係でも利用可能なものであり、組織横断的なDX推進に向けた意識の醸成に適したものであった。

(3)eラーニング
DX研修や事務所でのDX勉強会では深く学べる一方、対象となる職員に限りがでてくる。そこで、全職員を対象にしたインフラDXに関する知識習得、意識の醸成を目的とした取組みとしてeラーニングを令和6年度の10月より開始した。建設系、港湾系、技術系、事務系問わず多くの職員に利用してもらうため「DXコーヒーブレイク」としてスキマ時間が利用できるよう1 講座につき約5分と短時間にして実施した。なお、図- 4に示すような動画を、パワーポイントと音声読み上げソフトにて作成し、新しい技術を追加する等資料の修正への対応を容易にした。

また、eラーニングに対するアンケートの結果では表- 2 に示すように360度カメラ、点群データは「役に立ちそう」と「理解しやすい」の評価が高い傾向にある。事務所勉強会においてもこれらの講座は評価が高く、DX推進に向けた意識の醸成には非常に有用な内容であると感じている。
なお、後半にかけて理解のしやすさが下がってくると受講割合も下がる傾向にあるため、今後、内容をより分かりやすいものにする必要があると考えている。

4.おわりに
多くの職員にとってインフラDXの取組みが業務を進める上で当たり前となることが、今後のインフラDXを進める上で重要と考えている。今回紹介した、職員自ら使えるインフラDXの技術である、360度カメラ、バーチャルツアー、3次元点群計測は、使い方を覚えることで通常の業務や災害対応時に安全性や作業の省力化に役立つものであり、また、組織横断的なDX推進に向けた意識の醸成にも有効なものであると考えている。
事務所勉強会やeラーニングのアンケートの結果より技術系だけでなく、事務系の職員からの評価もよかったことから、令和7年度は計画研修のDX研修において、技術系・事務系とも対象とした結果、事務系職員からも多くの受講希望があっている。
このような取組みを改良しながら今後も少しずつ広げていくことで、多くの職員のDXへの知識習得や意識醸成につながればと考えている。
最後に、研修や勉強会、eラーニング作成に携わった日本工営(株)の皆様には、この場をお借りして感謝申し上げます。