DXの時代に求められる人材(人財)
~大きな変革期にあっても変わってはならないもの~
~大きな変革期にあっても変わってはならないもの~
一般社団法人 建設コンサルタンツ協会 九州支部長
田 中 清
いま、建設分野においてはDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されつつあり、私たちの仕事のやり方が大きく変わってきています。 ICTを活用した情報化施工が2008年に始まり、その拡大と情報化が2012年に、そして2016年にi-Construction がスタートし、2021年の建設DXにつながっています。この間2019年に発生した新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、リモートワークが急速に進展してDXが加速化されました。 さらに2024年にはi-Construction2.0 として、現場のオートメーション化を進め、2040年度までに現場の生産性を1.5倍に拡大し、3割以上の省人化を達成する目標が掲げられています。
i-Construction は、測量・調査⇒設計⇒施工⇒維持管理といったインフラ整備事業の一連の流れをBIM/CIM などの三次元データを活用して一元管理しようとするものであり、事業全体の効率化を目指しています。
私たち建設コンサルタントの立場で言えば、主として建設事業の初期工程に当たる測量・調査、設計を担当しており、フロントローディングを担っています。事業初期に3 次元のモデルと必要な属性情報の作り込みを行い、情報を活用したシミュレーションや検証を行うことで、後工程である施工や維持管理の生産性向上に寄与することができます。 このように建設コンサルタントは、公共工事でi-Construction を推進するに当たって重要な役割を担っています。
また、私たちの仕事は、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)を活用した調査・点検・解析技術の開発、自動設計システムの開発など、今までの調査設計手法から大きな転換が求められます。 企業活動においても同様なことが言え、デジタル技術の進展に伴い、働き方や事業内容の大転換期を迎えます。いよいよDX時代の到来です。
では、これからのDXの時代には、どのような人材(人財)が求められるのでしょうか。
私が思うには、【高度な専門技術力】と【変化への対応力】を備えたプロフェッショナルな人財です。
具体的には、地盤工学、水理学、構造力学などの土木の基礎をしっかりと身に付け、それらの基礎技術を応用できる高度な専門技術力を有する人財であり、かつ、ICTを活用して柔軟で適切に対応できる能力を有する人財です。
たとえ、AIなどによりブラックボックスを介して、構造物が自動的に設計され施工されたとしても、専門技術力をもって正しく設計・施工されているかの判断を行わないと、とんでもない構造物が出来上ってしまう可能性があります。
DXという大きな変革期にあっても変わらないもの、未来永劫に変わってはならないものは「社会資本を整備するのに必要不可欠なのは【技術力】であり、その技術力を支えているのは【人】」なのです。
私たち建設分野は【人】が財(たから) です。【人財】無くしてその存在価値はありません。
産学官が連携して日々研鑽し、高度な専門技術力を身に付けて、大きな変化にも柔軟に対応できる【人財】が輩出されますことを祈念して巻頭の言葉といたします。
(2024年12月6日)