国道10号門川日向拡幅事業の整備効果及び交通状況について
~現道拡幅の整備効果~
~現道拡幅の整備効果~
国土交通省 九州地方整備局
延岡河川国道事務所
計画課長
延岡河川国道事務所
計画課長
小 堀 与 一
キーワード:国道10号、現道拡幅事業、整備効果
1.はじめに
(1)事業概要
国道10号は北九州市を起点とし、大分市・宮崎市を経て鹿児島市に至る、総延長493kmの九州東部を縦貫する主要幹線道路である。
国道10号門川日向拡幅事業は、宮崎県門川町大字加草~日向市大字平岩間(延長12.8km)の交通混雑の解消や交通安全性の向上等を図り沿線地域の発展に貢献することを目的とした、現道拡幅事業である(図- 1)。
本稿では、開通から1年を迎えた長江交差点~木原交差点間と門川日向拡幅事業全体における整備効果及び交通状況の変化について報告する。
(2)事業完了までの経緯
国道10号門川日向拡幅事業は、昭和45年度に事業化され、平成6年度に門川地区(延長4.9km)が開通したのを皮切りに、平成9年度には日向地区(延長4.9km)が開通した。平成10年度には財光寺地区の3.0kmが渋滞解消を目的として事業が延伸され、平成17年度に新生町交差点付近(延長0.3km)が開通、平成21年度に長江交差点付近(延長0.4km)が開通、平成25年度にお倉ヶ浜交差点付近(延長0.8km)が順次開通した(図- 1・図- 2)。
そして令和5年6月24日に財光寺地区の長江交差点~木原交差点間(延長1.2km)が開通し、事業区間全線が2車線から4車線化され事業が完了した。
開通同日には、日向市中央公民館において事業の開通を祝う「開通式」が多くの関係者出席のもと開催された(写真- 1)。
2.整備効果(長江 ~木原 交差点間)
(1)交通状況の変化
開通1年後の長江~木原交差点間の平日断面交通量(国道10号と県道226号の合計)は24,584台/12h であった。国道10号の交通量は県道226号から国道10号へ交通が転換したことで14,377台/12h となり、開通前と比較し約1割(約1,100台)増加した(図- 2・図- 3)。
また、開通前の渋滞については長江~木原交差点間の4つの交差点(長江・往還・中の原・木原)において渋滞が発生していたが、開通後は全ての交差点で渋滞が解消した(図- 4)。
ETC2.0 データを用いて長江~木原交差点間の旅行速度の変化を確認すると、開通前の平日の夕ピーク時間帯の平均旅行速度は15.0km/h であったが、開通後は36.7km/h となり約20km/h の速度が向上した(図- 5)。
(2)地域住民の安全性を確保
長江~木原交差点を含む財光寺地区の死傷事故率は宮崎県内国道10号の平均値(56.3件/ 億台キロ)と比較して、約1.5 倍と事故リスクが高い区間であり、既に開通している門川地区や日向地区と比較しても事故リスクが高い区間であった(図- 6)。
門川日向拡幅の4車線化により、事故要因の一つと想定される交通渋滞が緩和されたことで、開通前は事故が約17件/年発生していたが、開通後は約7件/年と約6割減少し交通安全性が向上した(図- 7)。
(3)迅速な救急医療活動を支援
日向市消防本部の救急搬送件数は増加傾向(H26年:3,002件⇒ R5年:3,683件の約1.2 倍)であり、救急搬送ルートとして生命線である国道10号の重要性が高まっている。
しかし開通前は2車線区間のため、渋滞による搬送時間の遅れや追越し時の事故リスクがあり、救急医療活動に支障が出ていた(写真- 2)。
長江~木原交差点間の4車線化により、開通区間を利用した緊急搬送時間は、開通前の平均25.6分から開通後は平均23.1分と往復で約3分短縮され、地域住民の安心の確保に繋がった(図- 8)。
(4)物流活動の効率化・安定化を支援
重要港湾である「細島港」を介した港湾物流等において、門川日向拡幅の4車線化により開通区間を利用した配送活動で定時性(ばらつき:約3分減少)や速達性(平均所要時間:約3 分短縮)が確保され、配送活動の効率化に寄与した。
また、日向市の食肉加工工場等では荷痛みや荷崩れの原因となる渋滞時の加減速に伴う急挙動の発生リスクが低減(急減速発生頻度:約7割減少)したことで、配送活動の安定化にも寄与した(図- 9)。
(5)日常生活における整備効果の実感
開通区間の利用者(月1 回以上利用)を対象にWEB アンケート調査を実施した結果、利用者の約9割が開通効果を実感していた(図- 10)。
具体的には、渋滞の解消や安全性の向上により、趣味・娯楽や買い物等で開通効果を実感していた。
3.整備効果(事業全体)
(1)交通状況の変化
国道10号の門川町~日向市間は、地域の生活経済活動を支える重要な幹線道路であり、交通量は国道10号の宮崎県内平均と比べ約1 万台/12h多く、門川日向拡幅事業の4車線化後は約2割増加した。また、4車線化による交通容量の増加により、混雑度は大きく減少し1.25 未満に低下、旅行速度も大きく向上した(図- 11)。
(2)沿線都市の発展に寄与
日向市では、国道10号の事業区間を中心に市街化が進み、人口は事業化時の約55,000人から約60,000人へ約1.1倍増加した。
特に、拡幅区間沿線地域の人口、世帯数の伸び率は日向市全体と比べ高く、コンパクトな都市形成に寄与した。
おわりに
国道10号門川日向拡幅事業が完了し、1年を迎えた中で、様々な観点から関係機関等へのヒアリングやデータの収集分析により整備効果を把握した。
事業の目的であった、「交通混雑の解消」「交通安全性の向上」や、その他の道路整備が地域産業やまちづくりに及ぼした効果も把握することができた。道路の整備効果(ストック効果)は、中長期的に発現する効果もあるため、今後は今回把握した整備効果を含め新たに発現する効果にも注視していきたい。
結びに、本事業にご協力を頂いた地元自治体をはじめ、地元関係者並びに施工関係者の皆様に深く感謝申し上げます。