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福江港内流木埋塞における被害軽減の検討

長崎県 五島振興局
建設部 河港課
椎 原 靖 真

キーワード:福江川水系、福江港、港内埋塞

1.流木による港内埋塞について
河川の吐口は最終的に港へと辿り着く。異常な出水時等においては河川から港内へゴミや流木が流れ込み、係留している船舶の航行の支障となる(図-1)。このように港内が埋塞することは五島管内だけに留まらず、各地方機関においても起こっている状況であり、毎年のように発生し港湾管理者が撤去にあたっている現状である。福江港は本土と福江島を結ぶ定期航路を有している重要な港湾であり、毎年のように被害を被っている。
過去3年間の発生頻度は表-1のとおりであり、台風ではなく豪雨が主な要因であることが分かる。今回、福江港に的を絞り原因の抽出や対策案の検討を行う。豪雨が主な要因となると、近年の気候変動に伴い、強雨化や雨の頻度が多くなってきているなか、今後さらに埋塞災害が増加する恐れがある。
そのため、福江港の流木においては、福江港まで注ぐ二級河川福江川からの流入によるものであり、河川管理者として河川区域で何かしらの対策が講じられないか検討を行った。

図1 埋塞時の港内状況(福江港)

表1 過去3年間の発生回数と撤去費用

2.福江川水系について
福江川水系は、標高390mの笹岳にその源を発し、山間部を南下して内闇ダム(農業)を経て、耕作地を貫流、福江ダム(治水)へ流入し、鷹ノ巣川、牟田川等の支川を合流しつつ東方向へ流下する。その後、五島市福江地区((旧福江市)の市街地を貫流しつつ後の川を合流して福江港に注ぐ流域面積約23.4km2、幹川流路延長約9.1kmの二級河川である(図-2)。

図2 福江川水系流域図

3.流木発生原因の考察
福江川水系流域において、航空写真や現地調査を行い、流木発生の要因として考えられる項目を下記に示す。これらの項目において、豪雨との関係性について考察を行った。
・福江川本川河道内繁茂樹木の流れ込み
・支川河道内繁茂樹木の本川への流れ込み
・周辺田畑等からの伐採草木の河道内流入

(1)福江川本川及び支川における河道内繁茂樹木の流れ込みについて      
管理する河川も多く、限られた予算の中で、優先順位を付けて河積を阻害している箇所の伐採等を行ってきた。福江川水系においても、著しく河積を阻害しているとは言い難いが、草木の繁茂が広範囲に広がっている状況である(図-3)。

図3 福江川本川の河道内状況(上:1/ 200K付近 下:3/ 500K付近)

a)出水期前後での河道状況比較 
実際に埋塞災害が発生した前後での河道内状況の確認を行った。
考察として、少しの力でも流されるような既に枯れた草木であれば洪水時に流出する恐れがあると考えられるが、特段の変化は見られず繁茂樹木が流されるとは言い難い(図-4)。

図4 福江川における出水前後の状況(左:出水前 右:出水後)

(2)埋塞災害と水位の関係性
次に、埋塞災害が発生する場合と発生しない場合で、水位との関係性があるのか検討を行った。比較対象として、令和3年度において、同程度の水位及び雨量を観測した2つの観測値をもとに水位グラフを作成し、何らかの違いがあるか調べることとした(図-5、6)。
水位グラフより、埋塞災害が発生した場合、最高水位までの到達時間が約5時間、それに対し、発生しなかった場合、最高水位までの到達時間が約8 時間となり、埋塞災害発生の要因として急激な水位上昇が考えられた。

図5 令和3年度における水位の観測値(上位5つ)

図6 水位グラフ(左:水位322㎝観測時 右:水位259㎝観測時)

(3)周辺田畑等からの伐採草木の河道内流入について
福江川水系は、福江市街地から上流の川沿いに田畑が多く広がっている状況であり、この田畑から河道内への流入が考えられないか現地調査を行った。

a)護岸法面部の伐採草木等の不適切な処理
現地調査を行ったところ、付近の住民が刈った草木がそのまま放置されている状況が確認された(図-7)。また、付近の田畑に関しては管理されのまま放置し台風時に飛散し河道内へ流入することも想定される。

図7 草木等の放置状況(福江川)

b)第3者による草木の投棄 
今回の問題の原因究明に際し、福江川住民へ参考に原因の聞き取りを行ったところ、第3 者による草木の投棄の可能性が浮上した。
聞き取りの内容としては、台風時など人目がないときに投棄している。また、住民が伐採した草木の処分手間を軽減するために投棄していると思われる。との内容であり、証言の真偽を確かめる必要はあるものの、福江港が埋塞する時期と一致するため、原因の一端として考えられる。

4.対策案の検討 
対策案を行う際、新たな構造物(網場等)をつくることで港内までの流木を防ぐことは可能だと考えるが、河道を堰き止めることで氾濫が発生し、さらなる被害を助長してしまう恐れもある。また、河道拡幅等の大規模な対策案についても検討を行ったが、費用対効果が見込まれない非現実的なものとなった。
そのため、河川管理者として維持管理上必要なもので実際に実行可能な対策案原因であると想定した項目に対する検討を行った。

a)河道内繁茂の流出抑制
時限的な措置ではあるが緊急浚渫推進事業債が創出されており、河道内を阻害している草木の伐採が行える(図-8)。この事業を積極的に活用することで、港内への流木量の抑制に繋がると考える。

図8 後の川(福江川支川)伐採状況(上:着手前 下:完成)

b)護岸法面部の伐採草木等の不適切な処理
地域住民が行う伐採に関しては管理上大変ありがたいことである。
しかし、不適切な処理は埋塞災害や河道の閉塞に繋がる懸念もあるため、注意喚起を行う必要がある。
また、注意喚起と同時にこのような事態を未然に防ぐために防草コンクリートを施すことも一つの解決策であると考える(図-9)。

図9 福江川における防草コンクリート施工例(左:着手前 右:完成)

c)第3者による草木の投棄への対策
現状、地域住民の証言のみが情報源であるので、対策を講じる前に事実の検証を継続する必要がある。この方法として五島市三尾野町に設置している「河川監視カメラ」を活用した確認を考える(図-10)。
今後、福江港に流木が埋塞した際に、台風通過または増水時点のカメラの記録を遡り、不自然な流木がないか確認する。不自然な流木が確認された場合は、不法投棄の可能性を考慮し、付近の自治会等を通じた不法投棄への注意喚起や注意看板の設置により埋塞の抑制を図りたい。

図10 福江川河川監視カメラ

5.結論
原因抽出から対策案までの検討を行い、要因の明確化が難しい事象であると考えられた。
そのため、引き続き河川管理者として適切な維持管理を行うとともに、地域住民へ適切な河川の利用方法を周知しつつ、さらなる原因の究明及び流木を抑制する抜本的な対策ができないか港湾管理者と連携し、引き続き検討を行っていきたい。

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