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沖縄都市モノレールの開業20周年と輸送力増強事業について

沖縄県 土木建築部  
都市計画・モノレール課
都市モノレール室 主幹
山入端 雅 也

キーワード:沖縄都市モノレール、公共交通、交通結節、まちづくり

1.はじめに
沖縄県で唯一の軌道系公共交通機関である沖縄都市モノレール「ゆいレール」は、令和5年8月10日に開業から20周年を迎えた。

写真1 20周年式典及び出発式

沖縄都市モノレールの整備は段階的に行われ、第1期施工区間(那覇空港~首里駅)の延長約13㎞は、平成15年8月10日に開業し、第2施工区間(首里駅~てだこ浦西駅)の延長約4.1㎞は、令和元年10月1日に開業している。現在は那覇空港~てだこ浦西駅間の約17㎞で運行を行っている。

図1 沖縄都市モノレール位置図

沖縄都市モノレールの乗客数は平成15年の開業以来、定時定速の利便性が県民や観光客へ認知されるとともに、入域観光客数の増加と相まって、近年では、ピーク時に乗り残しが発生するほどに増加し、輸送力の増強が喫緊の課題となっていたことから、現在、輸送力増強事業に取り組んでいる。
ここでは、20周年を迎えた沖縄都市モノレール「ゆいレール」のこれまでの歩みを振り返りつつ、現在、取り組んでいる輸送力増強事業について、紹介していきたいと思う。

2.ゆいレールの誕生
大正初期には沖縄にも鉄道が整備されていたものの、沖縄戦で破壊されてしまった。戦後、沖縄県は、市街地の多くが米軍に接収され、鉄道・軌道系交通機関が無かったことから、バス、タクシー、自家用車等の自動車交通に依存していた。その結果、那覇都市圏においては、慢性的な交通渋滞が発生するとともに、これに起因する都市機能の低下や排気ガス騒音による生活環境の悪化が大きな問題となっていた。

写真2 軽便鉄道(那覇駅構内)

復帰時に策定された沖縄振興開発計画に、鉄軌道システム(新しい交通システム)の必要性が記載されるなど、都市モノレールの導入は早くから検討されており、昭和52年には「沖縄都市モノレール調査協議会」において、ルート案が検討された。
ルートの選定にあたっては、採算性、面整備等の開発計画、既存道路及び道路整備計画、また、高速道路までの結節等を総合的に検討し、ルートは小禄金城地区や那覇新都心地区等の土地区画整理事業計画や沖縄県庁等の官公庁、公営団地が沿線に立地するルートが選定された。
このような検討を経て、交通渋滞を緩和し、健全な都市機能の維持・発展を図るため、沖縄県で唯一の軌道系公共交通機関となる沖縄都市モノレールは、昭和56年の沖縄県総合交通体系基本計画において、那覇空港から沖縄自動車道と結節する西原入口までの間で整備を行うことが位置づけられた。

3.第1期施工(那覇空港~首里駅)
整備にあたっては、首里駅から高速道路の結節点となる西原入口(てだこ浦西駅)までの間は、沿道開発の遅れから、段階的な整備を行うこととし、当面の整備区間とされた、那覇空港~首里駅間を復帰から24年を経た平成8年に軌道法による工事施工認可を取得し、整備事業に着手している。

図2 沖縄都市モノレール計画図(平成8年)

整備にあたっては、支柱や軌道、駅舎など、インフラ施設の路線延長約13㎞のうち、直轄国道2.2㎞を沖縄総合事務局、県道及び補助国道区間の8.6㎞を沖縄県、那覇市道2.2㎞を那覇市が整備を行っている。また、車両基地、変電所、電車線一式や車両製造等のインフラ外施設は運行事業者である沖縄都市モノレール株式会社が整備を行い、平成15年8月10日に開業を迎えた。
《第1期施工区間(那覇空港駅~首里駅》
〇名称:沖縄都市モノレール
〇愛称:ゆいレール
〇区間:那覇市鏡水(那覇空港)~首里汀良町 (約13㎞)
〇構造:跨座型
〇駅数:15駅(平均駅間距離0.92㎞)

写真3 第1期区間出発式

4.第2期施工(首里駅~てだこ浦西駅)
首里駅からてだこ浦西駅間についてもルート沿線のまちづくり計画が進展したことから、平成25年に軌道法による工事施工認可を取得し、整備事業に着手した。
延長区間約4.1㎞のうち、インフラ施設については、那覇市道約1.6㎞を那覇市、浦添市道の約1.2㎞を浦添市が整備し、県道の約1.3㎞を沖縄県で整備を行っている。
延長区間においては、地形及びモノレール縦断勾配の関係から、沖縄都市モノレール区間で唯一のトンネル区間が設けられており、土被りの浅い開削工法区間(U型擁壁・ボックスカルバート)とトンネル工法(NATM工法)区間の約600m が地下区間として整備され、令和元年10月1日に開業した。

写真4 地下区間出入口付近

《第2期施工(延長)区間(那覇空港駅~首里駅》
〇区間:那覇市首里汀良町~浦添市前田(約4.1㎞)
〇構造:跨座型
〇駅数:4駅(平均駅間距離0.92㎞)

写真5 延長区間出発式

5.てだこ浦西駅周辺整備
モノレール終点駅となるてだこ浦西駅周辺においては、沖縄自動車道と県道浦添西原線、沖縄都市モノレールが結節する交通結節機能を確保するため、パークアンドライド駐車場やインターチェンジの整備が行われている。
てだこ浦西駅に隣接する992台が収容できるパークアンドライド駐車場は、モノレール延長区間の開業と合わせオープンしており、収容台数のうち、8割を定期、残りを一般利用としている。
令和5年10月の定期での契約状況は92%(契約台数730 台)となっており、令和4年同月と比較し約1.3 倍となっている。順調に契約数を伸ばしており、周辺で整備中のインターチェンジの供用開始後は、パークアンドライド駐車場を利用したモノレール乗客数のさらなる増加が見込まれる。

写真6 てだこ浦西駅

てだこ浦西駅周辺で整備中の幸地インター線は、沖縄自動車道と本島を横断する主要地方道浦添西原線を結ぶインターチェンジであり、当該インターチェンジが整備されることにより、沖縄自動車道とてだこ浦西駅やパークアンドライド駐車場の連結が図られる。

図3 幸地インターチェンジ周辺

これにより、本島中北部地域から那覇市内や空港との移動にかかる定時性が確保され、通勤、通学のみでなく、観光客にとっても利便性が向上する。
また、幸地インター線の整備により、自動車交通から公共交通への転換を促し、那覇都市圏へ流入する自動車交通を減少させることで、交通渋滞の緩和及びCO2 排出量削減でも改善効果が期待される。

6.輸送力増強
沖縄都市モノレールは、平成15年8月に開業して以来、定時定速の公共交通機関として県民や観光客に親しまれ、周辺まちづくりの促進や交通渋滞緩和にも大きな効果を発揮している。
1日平均乗客数は、平成24年度以降、8年連続で過去最高を更新し、令和元年度には55,766人を記録した。一方で乗客数の増加に伴い車両内の混雑が顕著になっており、朝のピーク時には一部の駅において乗り残しが見られる状況となっていた。
ピーク時の混雑率の軽減、乗り残しの解消を図ることは喫緊の課題であったことから、運行中の2 両編成車両(定員165人)から、3両編成車両(定員251人)を増備導入する輸送力増強事業に令和2年度から取り組んでいるところである。また、車両増備に伴い新車両基地の整備も行っている。
利用者の利便性、快適性の向上を図ることで、沖縄都市モノレールの利用促進へもつながるものと考えている。
令和2年度には、新型コロナウイルス感染症の影響により、乗客数が落ち込んだものの、現在は回復傾向にあり、令和5年度の乗客数は10月末時点で、令和元年度1日平均乗客数の約95%程度まで回復している。今後は、那覇空港第2滑走路が令和2年3月に供用開始されたことによるインバウンド需要拡大と相まって、乗客数の増加が想定される。

図4 沖縄都市モノレール一日平均乗客数推移

輸送力増強事業においては、令和4年度末に3両編成車両の2編成が納入され、運行に向けた習熟運転を行った後、令和5年8月10日の開業20周年記念式典と合わせて出発式を行い、運行を開始している。

図5 新車両基地イメージ

写真7 2両編成車両と3両編成車両

7.おわりに
沖縄都市モノレールは先述したとおり、県民や観光客にとって、定時定速で安全性の高い公共交通機関として定着しており、令和5年12月4日には、開業からの累計乗客数3 億人を達成している。
また、モノレール沿線では区画整理や都市再開発等のまちづくりが行われてきた。
延長区間の4駅(石嶺駅、経塚駅、浦添前田駅、てだこ浦西駅)周辺においても駅を中心としたまちづくりが進められており、特に終点駅のてだこ浦西駅周辺では、商業施設等の建設計画や、インターチェンジとなる幸地インター線の整備も進められている。
てだこ浦西駅にはパークアンドライド駐車場の他、自転車・自動2輪駐車場、タクシープール、バス停留所・停車場など、交通結節機能の整備が行われており、今後は当該駅を介して中北部と那覇都市圏とのスムーズな移動が可能となるとともに、交通結節点として活性化を促すことで、周辺まちづくりへも寄与するものである。
このように沖縄都市モノレール「ゆいレール」は公共交通としてだけではなく、周辺のまちづくりに大きなインパクトを与え、地域の活性化や観光振興など沖縄県の発展にかかせないものだと確信している。
モノレール駅を中心とした多様な交通結節機能の強化を図り、駅を中心とした周辺市町村へ至る交通システムの構築やまちづくり等、沖縄都市モノレールは多くの可能性を秘めている。
今後とも県民及び観光客等の皆さまに、より一層愛され、ご利用いただけるよう、沖縄県、那覇市、浦添市及び沖縄モノレール株式会社は一丸となって、「ゆいレール」の定時性、安全性及び利便性の向上に取り組んでいく。
最後に沖縄都市モノレールは、52年前の復帰時から検討され、令和5年8月10日には開業20周年を迎えた。これまでの多くの関係者のご尽力、ご支援の賜物であり、この場を借りて感謝申し上げたい。

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