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山野川の河川等災害関連事業に伴う河道拡幅について

鹿児島県 土木部 河川課
技術専門員
石 田 知 謙

キーワード:河川等災害関連事業、河道拡幅、再度災害防止

1.はじめに
山野川は、鹿児島県と熊本県の県境、伊佐市にある国見山地(国見山:標高969.4m)に源を発し、左支川平川川を合流した後、羽月川に合流し川内川に流れる延長12.2㎞、流域面積26.1km2の一級河川である。山野川の河川改修事業については、羽月川全体計画に基づき、羽月川合流点より1,100m 区間については整備済みとなっている(図- 1、2)。

図1 位置図

図2 流域図

令和2 年7 月3 日~ 11 日の梅雨前線豪雨により、護岸が決壊するとともに、溢水による浸水被害等の甚大な被害を受けたことから、単なる原形復旧ではなく、再度災害の防止を図るよう、河川等災害関連事業による河道拡幅を行い、被災流量に対応した河川断面を確保することとした。

2.被災状況
令和2 年7 月3 日~ 11 日にかけて、九州地方に停滞した梅雨前線の影響により、本県では記録的な大雨に見舞われ、本県初となる「大雨特別警報」が発令された。
山野川流域では、時間雨量が最大85㎜を越え、日雨量は464㎜が観測され、短時間に激しい雨が降り、最大連続雨量488㎜を記録した。
これにより河川の水位が上昇し「側方侵食」や「天端からの侵食」により護岸決壊が生じたことにより、住宅浸水が発生し、水田への土砂流入等の甚大な被害を受けたところである(写真- 1)。

写真1 山野川中村橋付近の 7月4日降雨被災状況、7月6日降雨氾濫状況

3.被災のメカニズム
決壊箇所の被災原因としては、河川の水位上昇に伴う「側方侵食」と「天端からの侵食」の2つの要因が考えられる。

(1)流体力による側方侵食
洪水時に個々のブロックに揚力、抗力及び重力が発生し、流体力が大きくなったことにより、ブロックが流出し被災範囲が拡大した。
また、河岸の法面の形状が流失していることから側方侵食により決壊したと考えられる(図- 3)。

図3 被災のメカニズム図

(2)天端からの侵食
洪水流が護岸天端を越えたことにより、護岸天端から侵食され、護岸裏を空洞化して護岸が被災したと推定される。
また、河川が埋塞し、護岸へ乗り上げた箇所で護岸の倒壊が確認されており、天端からの侵食により決壊したと考えられる(図- 3)。

4.河川等災害関連事業の概要
(1)関連事業の必要性
河道湾曲部の箇所では、湾曲外側で水位上昇が生じるとともに土砂堆積による河道埋塞も相まって、溢水する恐れがあり、原形復旧を行った場合、対象区間の現況渓床勾配は緩急の変動が大きいことから、乱流発生及び速度の増加により、渓床の洗掘、渓岸侵食を抑えることができない。このままでは、再度災害発生の恐れがあることから、河川等災害関連事業により、河道の拡幅や橋梁の架け替えを行うことで、被災流量を計画堤防以下で流下させ、断面不足により溢水した箇所については、断面の確保を行い、洪水を安全に流下させ、一連区間の再度災害防止を図ることとした。

(2)改良計画の概要
現況流下能力図により、今回の出水流量を評価し、堤防高が周辺より低い地点などで流下能力不足箇所を確認し、上流の溢水が発生していない石井橋上流地点において等流計算により、被災流量の設定を行った。
改良復旧計画区間については、被災流量に対する家屋浸水被害を解消し、被災流量を計画堤防高以下で流下させることとした(図- 4)。

図4 山野川現況河道流下能力図

(3)改良計画断面区間の設定
平川合流点より上流の八幡橋の下流部においては、河川改修済みとなっており、改良計画区間については、八幡橋から石井橋上流付近まで改良復旧事業区間として設定し、等流計算により決定した断面を基に不等流計算によりチェックを行い、断面形状を設定した(図- 5、6)。

図5 改良平面図

図6 改良計画断面図

(4)事業採択
【河川等災害関連事業概要】
・復旧延長     L=1,152m
・ブロック積工   A=4,984m2
・大型ブロック積工 A= 776m2
・八幡橋橋梁工   N= 1 式
・上村堰拡幅工   N= 1 式
・市道取付道路   N= 1 式

【災害復旧事業概要(親災のみ)】
・復旧延長     L= 633m
・ブロック積工   A=2,683m2
・大型ブロック積工 A= 773m2

5.おわりに
今回の梅雨前線による豪雨は、本県で記録的な大雨に見舞われ、本県で初となる「大雨特別警報」が発令され、甚大な被害をもたらした。
今回採択された河川等災害関連事業(河道拡幅等)により、今後の災害リスクの軽減が図られることから、一日も早い復旧を目指し取り組んでまいりたい。

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