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「九州建設技術フォーラム2016」開催報告
崎野信二

キーワード:九州建設技術フォーラム、熊本地震、新技術、i-Construction

1. はじめに
九州建設技術フォーラムは、新しい建設技術の
開発・活用・普及の促進をより効果的に図るため、産学官(企業・大学・行政)それぞれが新技術の開発・活用の取組についての情報を発信し、技術情報の展示・プレゼンテーションなどの形をとりながら連携を深め、九州におけるさらなる建設技術の発展を目指すことを目的に、産学官で構成する九州建設技術フォーラム実行委員会により毎年10 月頃に開催されています。
平成16 年度の開催から、13 回目となる今回は平成28 年10 月17、18 日の2 日間にわたり福岡国際会議場で開催しました。
本稿では、今回の「九州建設技術フォーラム2016」の開催概要について報告します。

2.九州建設技術フォーラム開催概要
昨年4 月に発生した熊本地震により大規模災害が発生したことから、今回のフォーラムは「防災・減災、復興~九州を支える建設技術~」をメインテーマとし、「九州の地震の特徴」と題した基調講演や、「平成28 年熊本地震への対応について」と題した特別講演を行いました。
また、「安全防災」「維持管理」「ICT」など様々な分野の最新技術のブース展示やプレゼンテーション、各自治体や学会等によるポスターセッション、「新技術活用」「i-Construction」に関する相談窓口など、多彩な内容で開催しました。
今回も多くの大学生や高校生、官公庁関係者に参加いただけたこともあり、延べ約3,000 人と過去最高の参加者数を記録することとなりました。

(1)開会式
開会式では、九州建設技術フォーラム実行委員長の日野伸一九州大学副学長より挨拶があり、「今回のフォーラムのテーマは『防災・減災、復興』である。4 月に、熊本・大分を中心とする震度7の地震が連発するという未曾有の災害が発生し、未だに多くの方々が避難生活を送っている。改めて自然災害の恐ろしさを感じている。
九州は台風等自然災害が非常に多いことから、子々孫々まで自然災害に立ち向かっていかなくてはいけないということを再認識した。」と述べられました。
また当フォーラムに将来の建設技術者を目指す若い学生が多数参加することを紹介し、「今後想定される大規模災害への備えとして、災害に強い国作り、インフラの老朽化対策などの国土強靱化を促進する上でもこれらの方々の活躍なくしては成立しない。これら若い技術者の方を含めて産学官の連携を深め、国民の安全・安心を守る建設技術のさらなる発展を祈念する。」と述べられました。九州は台風等自然災害が非常に多いことから、子々孫々まで自然災害に立ち向かっていかなくてはいけないということを再認識した。」と述べられました。

(2)基調講演
基調講演では、清水洋九州大学大学院理学研究院付属地震火山観測研究センター長より「九州の地震の特徴」と題して、熊本地震の発生メカニズムの紹介を始め、今後九州において発生が懸念される警固断層の調査研究内容及び地震発生の可能性などについて、講演いただきました。
「熊本地震については、主に布田川- 日奈久断層帯が断層の北側が東方向に動き、南側が西方向に動く(右横ずれ運動)ことにより発生した。
また、これまで余震が起こった箇所を地図上に並べると、阿蘇山周辺や熊本市・八代市付近にあまり余震が発生していない地域がある。阿蘇山周辺は火山地下が高温になっており地下地盤が軟らかいことから、ひずみを吸収していると考えられる。そのため今後も余震の発生は少ないのではないかと考えている。熊本市・八代市付近に関しては地下地盤が固いため今後も注意が必要である。」と述べられました。
警固断層に関しては、「福岡西方沖地震の発生により周辺にひずみがたまっていると考えられており、調査研究の結果4,000 年周期で地震が発生している箇所と8,000 年周期で発生している箇所があることがわかってきている。前回の発生から8,000 年程度経過している箇所があり注意が必要である」と述べられました。

(3)特別講演
特別講演では、小平卓九州地方整備局企画部長により「平成28 年熊本地震への対応について」と題して、熊本地震に対する九州地方整備局の主な活動内容について講演いただきました。

①熊本地震の概要について
 ・震度7 が2 度発生した。
 ・「布田川断層帯」に沿って多くの地震が発生。
②九州地方整備局の初動の対応について
 ・自治体支援:照明車・対策本部車等の災害対策用車両の派遣
 ・防災ヘリによる被災調査
 ・避難者支援:水・食料・毛布などの支援物資の提供、事務所会議室などを被災者の避難場所として提供。
 ・リエゾン(災害対策現地情報連絡員)の活動:整備局と自治体のつなぎ役として、各自治体へ派遣し、情報収集・連絡調整などを行い自治体を支援。
 ・TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)の活動:全国からTEC-FORCE 隊員が集結し、河川や道路・砂防・建物などの被災調査・ドローンによる空撮など
③今後の復旧について
 ・(河川)緑川・白川堤防の本格復旧
 ・(砂防・道路)阿蘇大橋地区大規模斜面崩壊の復旧
 ・(道路)阿蘇大橋の架替
 ・(道路)俵山トンネルの補修
 ・(まちづくり)まちづくり・住まいづくり支援
 ・(まちづくり)熊本城の復旧
 ・(観光)観光支援への取組:九州ふっこう割・高速道路の観光周遊割引
 このような多くの活動が行われたことが紹介されました。

(4)技術ブース展示
技術ブース展示では、フォーラムに先立ちさまざまな分野から募集し、109 の企業・団体が参加し、156 技術の展示となりました。
各技術ブースでは、モニターや模型、パンフレットなど、さまざまな手法により技術のPR がなされ、関心を寄せる参加者との活発な情報交換の場となりました。

(5)新技術相談窓口
新技術相談窓口では、国土交通省九州地方整備局職員により、新技術の活用や登録に関するさまざまなご相談に応じさせていただきました。
特に「NETIS に開発した技術を登録しているが、内容の更新を行いたい」や「出展している技術をNETIS に登録したいが、具体的な登録はどのようにしたらよいか」など、NETIS への登録・更新に関して多くのご相談をいただきました。

(6)i-Construction相談窓口
一昨年11 月より建設現場の生産性向上の取組(i-Construction)が新たに始まり、今年度より本格的な運用を行っていることから、今フォーラムより新たに「i-Construction 相談窓口」を設置しました。
新技術相談窓口と同様に、国土交通省九州地方整備局職員による、i-Construction の活用に関するさまざまなご相談に応じさせていただいたほか、i-Construction 関連機器のメーカーによる展示も行いました。

(7)技術プレゼンテーション
技術プレゼンテーションでも、技術展示ブース同様に、フォーラムに先立ちさまざまな分野の新技術に関するプレゼンテーションを募集し、合計40 技術について発表していただきました。
技術プレゼンテーションは2 つの会場に分け、1 技術あたり約15 分の発表を行いました。各会場では、最新の情報が盛りこまれた発表者からの説明に、参加者からの活発な質問や意見交換される姿が見られました。

(8)ポスターセッション
ポスターセッションでは、主催団体を中心に公益社団法人土木学会、公益社団法人地盤工学会、一般社団法人九州橋梁・構造工学研究会、一般社団法人建設コンサルタンツ協会、一般社団法人日本橋梁建設協会、公益社団法人日本コンクリート工学会、一般社団法人プレストレスト・コンクリート建設業協会や大学等の若手研究者により、数多くのポスター発表をいただきました。また、今回も各自治体(福岡県、佐賀県、熊本県、宮崎県、福岡市、北九州市、熊本市)のパネルコーナーも設置しました。
ポスターに取りまとめられたさまざまな発表内容に対し、多くの参加者が足を止め活発な意見交換が行われていました。

3.おわりに
今回の建設技術フォーラムは、「防災・減災、復興~九州を支える建設技術~」をテーマに、熊本地震に関する講演や、今後の復旧・復興を支える新技術の展示、そのほかにもインフラ整備に関する技術情報交流、新技術のさらなる開発・活用のための情報発信、地方自治体PR コーナーなどを設け、実施しました。
平成25 年からフォーラムの日程を2 日間に拡大し、建設技術に関する産学官の情報交換の場としてさらに発展するとともに、大学を始め建設系専門学校、工業高校の学生にも多数参加いただくことで、将来を担う若い方が実務に触れる良い機会となり、人材育成の場としても評価をいただいています。
14 回目を迎える来年度も、九州の新しい建設技術の開発・活用・普及の促進をより効果的に図るため、「産」「学」「官」それぞれが情報を発信し、より連携を深めることが可能なテーマや開催内容を検討したいと考えています。
最後に、本フォーラムの運営にご尽力いただいた九州建設技術フォーラム実行委員会の各機関・団体の皆様、技術プレゼンテーションや技術ブース展示に参加していただいた多くの企業・団体の方々に心からお礼申し上げます。
(http://www.cag-forum.com/)

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