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熊本地震の衝撃と復旧・復興
熊本大学 大学院 先端科学研究部(工学系) 教授
山尾敏孝
2016年4月14日21時26分、熊本県の日奈久断層帯に起因するM6.5の直下型地震が益城町を震源地として発生した。地震の大きさは震度7で、日本では兵庫県南部地震で発生して以降4 度目となった。熊本で大きな被害をもたらした直下型地震といえば、127年前(1889年)の7月に発生した熊本地方を震源とするM 6.3の地震以来であり、非常に安全な地域と信じられ、熊本県も企業誘致に利用してきただけにこの大地震発生のショックは大きかった。そして、2日後の4月16日未明に14日を上回るM 7.3の直下型大地震が発生し、西原村と益城町で震度7を再び観測したのである。1回目より大きな地震が起こるはずがないとの先入観や小さな余震の発生予想が見事にぶち壊され、ある程度の大きさの地震発生は予想していたが、2 度の震度7 の地震には大きな衝撃と恐怖を感じたものである。また、本震後にも頻繁に大きな余震が繰り返し発生( 震度6が5回、震度5は11回、震度4以上が88回)したことも過去に例を見ない地震である。これは、発生した震源地が益城町周辺域から熊本県南西部や北側の阿蘇地方、大分県側まで広がり、活動が日奈久断層帯から布田川断層帯に波及・連鎖して広がったためと考えられている。このように大きな余震と揺れの発生が継続し、1か月で震度1 以上は1400 回を超えており、未だに収束していない状況である。
熊本地震による交通基盤の被害は、熊本市と阿蘇地方を結ぶ国道57号と高森方面への国道325号は、阿蘇大橋付近での大規模な斜面崩落により、阿蘇大橋の崩落とともに通行不可能となった。阿蘇大橋の崩壊現場を見ると確かに土砂が橋を越して左岸側に達しており、地震で崩壊したとは思えないが、今後の詳細調査が必要である。また、高森地域に通ずるは県道俵山バイパスも俵山トンネルや大切畑橋など5橋梁及び道路に甚大な被害が発生しており、復旧の見通しは全く立っていない。バイパス沿いには布田川断層があり、このズレが大きく影響したと考えられる。
一方、文化財被害では、国や県等の指定文化財や登録文化財が九州で364件に上り、熊本県内では237件であった。特に、熊本市の熊本城跡では、国重要文化財の櫓や壁石垣も崩落などは13カ所、石垣の被害個所は52カ所に達し、復元建造物の天守閣等も大きな被害を受け、史上類を見ない被災となった。また、石橋関係も国重要文化財である通潤橋の通水管の損傷、八勢の目鑑橋や二俣橋などの壁石の崩落や高欄の崩落などの損傷が発生しており、壁石の膨らみや輪石のずれ等、小さな損傷まで含めると相当数の石橋が被災していると思われる。
今回の地震で大きな被害を受けた熊本全体の復旧・復興を支援するため、熊本大学では教育研究成果と知的資源を結集・活用し、多くのプロジェクトを立ち上げた。その中で、熊本城跡や石橋等の被災文化財の復旧・活用支援プロジェクトリーダーとして、関係機関と連携しながら早期の熊本復興に貢献する予定である。

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