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道路インフラの老朽化対策について
-道路メンテナンス会議による体制強化-
植田定

キーワード:老朽化対策、メンテナンス体制、近接目視

1.道路施設の現状
橋梁等の道路構造物は、高度経済成長期(1955 年 ~ 1973 年)に集中的に整備(図-1)され、経済発展と国民生活の向上に大きな役割を果たしてきましたが、その多くは建設後40 ~ 50 年経過しています。

橋長2.0m 以上の道路橋は全国に約70 万橋あります。九州においては約10 万橋あり、管理者別に見ると、そのうち約70%が市町村道にあり大部分を地方公共団体が管理しています(図-2)。

九州において建設後50 年以上経過する橋梁は、現在18%ですが、20 年後には68%(図-3)と急速に拡大します。同様に道路トンネルにおいても現在23%から20 年後には49%(図-4)の約半数に達します。この様に今後急速に老朽化が見込まれることから、その対策が急務となってきています。

また、九州における橋梁(橋長15m 以上)で、平成25 年4 月時点での通行止めは39 橋、通行規制は112 橋となっており、平成20 年4 月より、通行止め・通行規制されている橋梁は約1.8 倍に増加しています。特に、通行止めは3.9 倍と大きく増加しています(図-5)。

2.道路メンテナンスの取り組み
前述のとおり道路構造物の老朽化の進行が顕在化してきており、トンネルにおけるコンクリート片落下や道路照明灯の腐食による転倒も毎年のように発生しています。記憶にも新しいと思いますが1昨年の平成24 年12 月には、中央自動車道笹子トンネル上り線で天井板落下事故が発生しました。そのような状況を受けて、平成26 年4 月14 日には、国土交通省社会資本整備審議会より、道路の老朽化対策の本格実施に関する提言として最後の警告-「今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切れ」と厳しい提言がされました。
国土交通省では、笹子トンネルの事故を踏まえ、平成25 年を「メンテナンス元年」と位置付け、道路分野においては、第三者被害の防止の観点から道路ストック総点検を皮切りに、道路メンテナンスを確実に進める取り組みに着手したところです。
まず、法体系の整備として、平成25 年6月には道路法の一部を改正し、道路の修繕を効率的に行うための点検に関する基準を追加しました。また、道路法施行規則において、点検は近接目視により、5年に1回の頻度で行うことを基本とし、点検実施後には健全性の診断を行い、必要な措置を講じることとし、その構造物が利用されている間は、これらの記録を保存することが、全ての道路管理者に義務づけられました。
これにより、点検→診断→措置→記録という業務サイクルを通して、体制を確立し、予防保全をすすめます。
このようにメンテナンスサイクル(図-6)を構築し、道路構造物の適切に維持管理を行ってまいります。
また、各市町村が円滑な点検・診断に活用できるように、法令に沿った具体的な点検方法をとりまとめた各種の定期点検要領もお示ししたところです。

3.九州地方整備局による取り組み状況
橋梁の大部分の構造物を管理する市町村は、さまざまな課題を抱えております。財政は厳しく維持管理に関する予算や人員が不足しており、町の約5割、村の約7割で橋梁保全に関わっている土木技術者がいません
これらの課題(予算不足・人不足・技術力不足)を解決するため国が各都道府県と連携して、確実に定期点検等を実施するための支援方策を検討し、調整する必要があります。
このため、国、ネクスコ、県、市町村などのすべての道路管理者が連携して老朽化対策に取り組んでいくため、各県毎に「道路メンテナンス会議」(写真-1)を設立しました。この会議の中で、人不足・技術力不足に対応するため各種の点検業務を地域単位で一括して発注する枠組みや橋梁等の点検・診断に関して、社会的に影響の大きい路線や構造が複雑な施設について直轄診断を実施していきます。この様に技術的支援体制や点検体制を検討していく予定です(図-7)
また、技術力不足に対応するため、地方公共団体職員へのメンテナンスに関する研修制度の充実を図って参ります。

4.おわりに
鉄筋コンクリート製の橋が本格化してきたのは、昭和30 年前後であり、当時は、メンテナンスフリーと考えられていました。そのことから、維持管理の必要性が十分認識されていませんでした。近年、維持管理の重要性が唱えられています。道路構造物は、社会経済を支える根幹的な構造物であり、老朽化に対する取り組みも行われてきていましたが、その対応は十分でなく老朽化は徐々に進行してきています。
各道路管理者が一体となった道路メンテナンスに関する取組みは、今年度より本格実施するもので、これからがメンテナンス実行の年となります。地方公共団体の現状を踏まえ、最新の情報に基づき老朽化対策を実施していく必要があります。今後関係者の皆様方と更なる連携・調整を図りながら、道路利用者や地域の皆様方の安全・安心確保に努めて参ります。

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