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下筌ダムにおけるアオコ抑制対策について
岡村雄一

キーワード:水質保全、アオコ抑制、曝気施設

1. はじめに
下筌ダムは筑後川上流部の筑後川(杖立川)と津江川の合流点から4㎞ほど上流で、大分県と熊本県の県境に位置し、流域面積は185k㎡で昭和48 年に完成したダムである(図-1)(写真-1)。
松原・下筌ダムは、昭和28 年6 月の筑後川大水害を契機に建設に着手し、洪水対策、発電を目的とした多目的ダムとして建設された。その後、昭和61 年に再開発事業の完了より、不特定用水を目的に加え現在に至っている。

下筌ダム流域には大分県日田市(旧日田郡前津江村、中津江村、上津江村、大山町)及び熊本県阿蘇郡小国町、南小国町、阿蘇市があり、古くから林業が盛んで杉等の植林が広く行われており、日本有数のスギ材産地としても有名な地域でもある。
今回、管理中のダムである下筌ダムの貯水池周辺で実施されてきたアオコ抑制対策についてその概要と取り組み状況について紹介する。

2. 水質保全対策の概要
2-1 対策の経緯
過去より下筌ダム貯水地においては赤潮の発生等は見られたものの、水質異常については小規模であった。しかしながら平成19 年に大規模なアオコが発生したことから、ダム湖の景観障害、カビ臭などダム周辺での影響が見受けられた(写真-2)。
このため平成19 年以降、いろいろな対策を講じてきた。

主な対策としては、淡水赤潮・アオコの拡散防止のために貯水池表層水の流動を制御する目的で分割フェンス及び分割装置を設置している(図-2)(写真-3)(図-3)(写真-4)。

また拡散防止とは別に、局所対策として水深5m 付近の冷たい水を上層にくみ上げ、表層水温の低下を図るとともにタンク内に濾過材を設け、浄化した水を排水する簡易水循環装置を試験的に設置した(図-4)(写真-5)。

2-2 アオコ抑制対策の概要
前項までの施設は拡散防止等には効果を発揮したものの、根本的な対策とはならず、結果として平成19 年度から平成24 年度まで6 年間におよぶ大規模なアオコを発生が生じている。
アオコが大規模に発生すると景観障害やカビ臭など貯水池周辺で影響を及ぼすようになる。このようなことからアオコ抑制対策施設の検討を発生当初から実施してきた。
下筌ダム貯水池では日射が大きく、表層付近の水温が上昇し、浅層躍層が形成される。アオコの原因種は体内に気泡を持ち、表層に浮上するため、安定した環境のもと増殖して憂占する(図-5)

このことからアオコ抑制対策である曝気循環施設の設置により水中に気泡を吐出し、その浮力によって引き起こされる鉛直循環流により、上層と中層の水温差を解消し、浅層部でのアオコの増殖環境を破壊するとともに循環流により、他のプランクトンと混合させることにより憂占種とならないようにするものとする(図-6)。

2-3 曝気施設について
下筌ダムではアオコ発生時期の水位がEL310.0程度であり、透明度から算出される補償深度などから曝気施設の水深は25m 程度となり、設置水位はEL285.0 とする。また下筌ダムでは制限水位方式を採用しているため、梅雨期の最低水位(EL 292.0)以深においても十分な曝気施設水深をとる必要があることから湖底にも設置し、2 段構成の曝気施設を貯水位により上段、下段の切り替えを行うこととした(図-7)。

また下筌ダムでは広域にアオコが発生することからダム堤体直上流とその1㎞上流に2 箇所設置している(図-8)。

2-4 下筌ダム流域水質対策連絡会
上述した施設による対策とは別に下筌ダム貯水池内への流入負荷の面からの対策も必要であることから、主要な流域である大分県及び日田市、国土交通省からなる「下筌ダム流域水質対策連絡会」を平成24 年度に設置した。
設置の目的は、下筌ダム貯水池のアオコ発生等の水質障害の現状から、関係行政機関で情報共有し対策及び広報について協議を行うこととし、現在まで6 回の会議や現地調査を実施するとともに連絡会で作成した広報チラシを下筌ダム流域に配布するなどの取り組みを行っている(写真-6)(写真-7)(図-9)。

3.下筌ダムにおける水質保全対策について
アオコ抑制対策として曝気施設を平成25 年度に1 基、平成26 年度に1 基を設置し、運用しているが、現在まで大規模なアオコは発生していない。アオコ発生のメカニズムは複雑な要因があることから引き続き運用を行いながら、効果検証を進めていくこととしている。

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