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嘉瀬川ダム副ダムのCSG工法
九州地方整備局 中島修
1.はじめに

嘉瀬川ダム副ダムは、佐賀県佐賀市富士町に建設中の嘉瀬川ダムの貯水池内の水質保全・荒廃地の防止、ダム貯水池上流域の親水環境の創出を目的として、嘉瀬川ダムサイトの上流約4km地点に建設中の「台形CSGダム」である。台形CSGダムとは、台形形状のダムにCSG(Cemented Sand and Gravel)工法を適用して材料の合理化・設計の合理化・施工の合理化を同時に達成することで環境負荷軽減・コスト縮減を可能とした新しい型式のダムである。
現在は堤体工を施工中であり、平成22年9月に工事が完了すれば、台形CSGダムが全国で初めて完成することとなる。

2.嘉瀬川ダム副ダムの諸元
形  式 台形CSG ダム
堤  高 約29m
堤 頂 長 約115m
堤 体 積 約68,000m3(うちCSG 約55,000m3
流域面積 50.1km2
貯水容量 1,300,000m3

3. 副ダムの地質について

図-4にダム軸岩級区分図を示す。副ダムダムサイトの基盤岩は、主に中~粗粒の黒雲母花崗岩で岩相に殆ど変化がない均質な岩体からなる。一部に岩脈や変質脈が認められ、特に河床部では断層や変質帯に沿って風化が進行し、深層風化帯が形成されている。両岸尾根部も風化層が厚い。
副ダムサイトの岩級区分については、「岩塊の硬さ」・「割れ目間隔」・「割れ目状態」を判断基準とし、CH級(弾性係数10,000MPa)、CM級(弾性係数1,400MPa)、CL級(弾性係数800MPa)、CL’級(弾性係数500MPa)、D級( 弾性係数250MPa)に区分している。
標準供試体による室内試験結果から堤体(CSG)の弾性係数が2,500MPa であることがわかっていることと、設計上、堤体と基礎岩盤の弾性係数比は5を満足しなければならないことを鑑み、副ダムはCL’級を基礎岩盤としている。

4. 台形CSGダムについて

CSGを用いたダムの設計として提案されたのが台形形状の断面を有するダム、「台形ダム」である。台形ダムは従来の直角三角形断面のダム(重力式コンクリートダム)に比べて、転倒・滑動に対して安定性が高い、堤体内部の発生応力が小さい(材料の必要強度を小さくできる)といった利点を有する。また、CSG工法は、現地で発生する廃棄岩が母材として再利用可能である、簡易な設備でCSGの製造が可能である、急速施工による工期の短縮が可能であるといった特徴がある。
このような「台形ダム」と「CSG工法」を組み合わせたものが「台形CSGダム」である。台形CSGダムは、台形ダムとCSG工法それぞれの特徴を活かし、「材料の合理化」を主とし、「設計の合理化」、「施工の合理化」の3つの合理化を図ることにより、環境負荷軽減、コスト縮減ができる新しい型式のダムである。

5. 工事内容について
1) 母材採取・CSG材の製造・CSG混合

副ダムのCSG工法に使用する母材は、嘉瀬川ダムの原石山の廃棄岩を使用している。母材を80mm以下に破砕したCSG材は、副ダムサイトまで工事用道路を使って運搬し、CSG製造設備に直接投入する。CSG材製造は自走式ジョークラッシャー(製造能力:230t/h)、CSG製造はDKS-Ⅱミキサ(製造能力:80m3/h × 2基)で行っている。

2) CSG打設手順
図-5にCSG打設手順を示す。堤体上下流面には、プレキャスト型枠を設置する。副ダムにおいてはCSGの打設層厚を75cmとしているので、プレキャスト型枠の高さはCSG打設層厚の2リフト分である150cmとしている。

3)CSGの施工方法
① CSGの運搬・打設
CSG打設は、ダム下流より進入路を造成してダンプトラック直送により行っている。CSGの打設は湿地式ブルドーザー16t級を用い、1リフト厚75cmを25cmずつ3 層に分けて敷均す。CSGの締固めは振動ローラ11t級を用い、無振動2回、有振動8回の合計10回転圧を行っている。(写真-5)

② CSGと保護・遮水コンクリートの境界部の施工(法肩部の締固め)
上下流面際などのCSG法肩部は、法肩締固め機により十分な締固めを行っている。締固め時間は、試験施工にて20秒で一般部CSGと同等の現場密度が確保できることを確認している。(写真-6,7)

③ アバット着岩際の施工(着岩部の締固め)
着岩部は25cm(1層)毎に締固めを行っている。一般部CSGを施工する11t級振動ローラが近寄れないため、着岩際の締固めは60kg級ランマで4回転圧し、着岩面から1mの範囲は1t級振動ローラで6回転圧している。
なお、これらの転圧回数により施工した場合の現場密度は、一般部CSGの現場密度と同等であることを確認している。(写真-8,9)

④ 打継面処理
CSGの打継面は、水平打継面の一体化を確保するため、C:W=1:0.8のセメントペーストを5mm程度散布している。なお、試験施工において打継面のボーリングコアを採取して目視観察を行い、打継面の一体化を確認している。(写真-10)

⑤ 養生
打設中・打設後のCSGの表面は、乾燥防止・凍結防止のため、噴霧散水、シートで養生を実施している。(写真-11,12)

6.今後の課題について
1)CSG材の管理方法の検討・確認
本体打設時におけるCSG材の粒度、表面水量、密度・吸水率の品質管理方法について検討・確認を行う必要がある。

2)締固めエネルギー管理の検討
CSGの現場密度測定に関して、砂置換法とRI 法でそれぞれ求めた現場密度の相関性について調査を行い、RI法による現場密度測定の可能性について検討する必要がある。

3)CSG強度の変動傾向の把握に対する検討
大型供試体(径300mm・高さ600mm)と標準供試体(径150mm・高さ300mm)のCSGの強度の変動傾向の相関を調査し、標準供試体(材令7日)のCSG強度を用いて、CSG強度の変動傾向を把握できる可能性について検討する必要がある。

7.おわりに

嘉瀬川ダム副ダムは、現在、堤体打設中であり、平成22年9月の完成を目指している。工事が完了すれば、台形CSGダムが全国で初めて完成する。
今後建設予定の全国の台形CSGダムの参考となるよう、品質確保に努めた施工を確実に実施し、データ収集を行っていく。
最後に、嘉瀬川ダム副ダムの設計から施工まで、多大なご協力を賜った関係各位の方々に深く感謝の意を表したい。

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