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三瀬トンネル有料道路(2期)事業 ループ橋の開通
福岡市(前佐賀県道路公社) 重松哲夫
1 はじめに

一般国道263号は、福岡市早良区荒江を起点とし佐賀市日の出2丁目の国道34号との交差点を終点とする延長53㎞の主要幹線道路である。
この道路は福岡市と佐賀市を最短ルートで結ぶ路線であるが、このルートのうち、標高580mの県境三瀬峠付近は、冬場の積雪・路面凍結による交通規制や急カーブ、急勾配の連続により安全で円滑な走行の障害となっていた。
これらの問題を解消するため、昭和54年度から公共事業としてトンネル建設工事に着手したが、事業の早期完成を図るため昭和59年度からは有料道路事業として建設工事を進め、昭和61年7月24日に供用を開始した。(1期事業)
しかしながら、三瀬トンネルより福岡市側の旧規格道路には急カーブ、急勾配の未改良区間が残っており、大型車の走行に支障をきたし、物流の促進に大きな障害となっていたので、沿線住民・関係市町村・物流業界から、早急な道路整備の要望が重ねてなされていた。
そこで、供用中の三瀬トンネル有料道路の延伸事業として、平成16年度からこの急峻な地形で交通の難所となっていた区間、延長1.87㎞の改良工事に着手し、高低差100mをループ線形を採り入れた橋梁工事等で緩和させ平成20年8月12日に有料道路として供用を開始した。(2期事業)
この三瀬トンネル有料道路が完成したことにより、冬期交通の確保、走行障害の解消による交通安全が確保され、佐賀・福岡両県・市との連携と地域間交流が一層促進され、観光産業の活性化や物流の効率化に大きくつながるものと期待されている。

2 2期事業計画の概要

3 道路線形の検討

今回整備する区間の地形は、南北にのびる稜線の間を通る谷となっており、起点と終点の高低差が110mであり、付近の山は保安林、水源涵養林となっている。
このため、道路構造令に基づき縦断勾配、曲線半径を考慮し、法面をできるだけ小さくし環境対策に配慮したルート選定を行うこととした。
ルート選定において、6%以内の縦断勾配を確保するため、計画道路延長を約2,000mとし次の4ルートでの比較検討を行った。

上記比較ルートにより、経済性・走行性・施工性に優れ、また将来に亘る維持管理費用も考慮し、構造物比率の少ないAルートを採用した。

4 橋梁工事

急峻な地形、狭隘な谷間での限られた現場条件の下での特記すべき施工例(3H工法・トラベラークレーンベント工法)を紹介する。
① 3H工法(Hybrid Hollow High Pier)
当工法は優れた耐震性能、施工の合理化、工期短縮による経済性、自然環境保全を兼ね備えた高橋脚の建設技術で独立行政法人土木研究所及び民間12社で共同開発されたものである。
平成10年度以降、全国で3橋実施されているが、いずれも矩形断面で今回3H工法としては初の円形断面の採用となる。
当工法は谷間に建設するループ橋のうち、橋長(398m)が最も長く橋脚が高い曲渕ループ3号橋の4つの橋脚に採用した。

従来のRC橋脚で用いられた軸方向鉄筋を、H型鋼材に置き換え、さらに鋼材を軸方向鉄筋とスパイラル筋で囲い込んだスパイラルカラムとすることで優れた耐震性能を有し、軸方向鉄筋及び中間帯鉄筋の高所での煩雑な配筋作業を省略でき大幅な施工の合理化が実現した。
また、昇降式移動型枠による施工を行うことで、危険を伴う足場組立解体作業を地上で行うことで安全性が向上した。
30m以上の高橋脚については、過去の実績より、施工の合理化を図ることで工期を大幅に短縮でき、その結果優れた経済性を実現している。
現場からも「3H工法による工期短縮効果を実感した」というコメントがあった。

② トラベラークレーンベント工法
当工法も同じく曲渕ループ3号橋で施工したものであるが、橋長398m、最大支間長60m、曲線半径120mの上部工架設に伴う工法で、橋梁形式は7径間連続非合成細幅箱桁橋である。
施工順序としてはP4~P5、P5~P6、P6~A2間に仮橋脚となるベントを設置し、工場で製作された箱桁の仮組み検査を行った後、P6~A2間に箱桁を大型クレーンで架設した。
その後、箱桁上にレールを敷設しトラベラークレーン(25t吊)を組立た後、順次9m~10mの箱桁を接続し、再度先端部にレールを敷設しトラベラークレーンが移動する方法で繰り返し行い延伸したものである。
橋脚到達付近まで箱桁の架設が終了すると、鋼材及びトラベラークレーンの自重で桁架設位置よりも約1.8m程度下がる。
これは地形の関係でベントが設置できなかったためで、その対策として、橋脚上にジャッキを設置し、箱桁を持ち上げ橋脚上の箱桁と接続が終了した後、ジャッキを撤去し箱桁の架設を進めていくのであるが、この方法はP1、 P2、 P3、 P4で行われた。
最終到達地点であるA1では大型クレーンで上記作業を行った。
また、トラベラークレーンによる箱桁の吊り上げが困難な位置については、クレーンとの吊り渡し方法で行った。

5 事業効果

有料道路(2期)の整備を行うことにより、直接的な効果としてまず第1に急峻な山岳地域における交通障害が解消されることが上げられる。
今回の整備区間には、曲線半径15m以下のカーブが7箇所、30m以下のカーブが2箇所あり、また、その前後においては6%以上の急勾配で連なっており、物損事故の統計はないもののガードレールの破損は毎年10件以上確認されるなど走行性に問題が多々あったが、これらの問題は、最小曲線半径105mの緩やかなカーブ、最急勾配5.86%ですべて解消されることになった。

次に、走行時間の短縮が上げられる。
今回の整備により走行性が抜本的に改善されることにより、走行時間が約5分短縮され、有料道路全区間(5.3㎞)では約15分の短縮となる。
さらに、行楽シーズンである5月、10月、11月の日・祝日は大型バスの通行もあり、カーブ付近での離合待ちにより、たびたび渋滞が発生しトンネル内まで影響が及ぶこともあったが、これらが緩和されることとなる。
また、冬季においては、積雪によるチェーン規制が実施されていたが、道路線形の改良により、大幅な交通機能の向上が図られることとなった。
間接的な効果として、この有料道路(2期)の完成、わずかに残っている一般国道263号の全線整備完了及び福岡高速道路5号線(野芥ランプ供用)整備完了により、福岡都市圏と佐賀市及び沿線市町村との広域交流促進・連携強化、さらに沿線市町村の開発及び物流・観光の促進による地域の活性化におおいにつながるものと期待されている。

次に、大型車による輸送の利便性が高まり、物流経費の削減につながるなど輸送の効率化が考えられ、また、災害発生時の広域的救命輸送が可能となるなど緊急輸送ネットワークの充実が図られる。

6 三瀬トンネル有料道路の利用状況(過年度の実績)

当有料道路の通行台数は、昭和61年7月供用開始以来、平成10年度には約2,572千台/年(7,047台/日)、計画の1.73倍と順調に推移してきていた。
平成11年度から平成15年度まではほぼ横ばいの状態が続いていたが、平成16年度より減少傾向となり特に平成19年度は対前年度と比較すると4.0%の減となった。
この主な原因は、長びく社会経済の景気低迷、高速道路などETCの割引による道路利用ルートの変更、燃料であるガソリンの高騰などにより有料道路の料金抵抗感が強まり減少してきたものと考えられる。
また、月別の利用状況では行楽シーズンである5月・10月の利用が特に多く、その月の日・祝日の利用は平日の2倍以上と高い数値を示しており、当有料道路は観光利用ルートとしての路線であることが推察できる。
なお、上り・下りの通行台数はほぼ同じであり、日帰り目的の利用が多い。
気象条件による通行台数は、晴れの日を1.0としてそれぞれの気象条件で比較すると曇り0.95、雨0.80、雪0.50となった。(平成16年度~18年度の通行台数実績)
特に、土曜日・日曜日・祝日の気象条件に伴う通行台数変動は著しく、雨、雪の場合は大幅な通行台数の減となる。

7 供用後の有料道路の利用状況

供用後の通行台数は、盆の帰省客の利用もあり供用後5日間の日平均は13,596台となり、最多通行台数は8月14日の14,893台であった。
供用後2ヵ月間においては、対前年同月日期間と比較すると通行台数は13%の伸び、日平均で876台の増となった。

8 おわりに

平成20年8月12日午後2時に三瀬トンネル(2期)区間を供用開始した。
今回供用した区間は、三瀬トンネル有料道路の延伸部であり国道263号・有料道路を通行させながら速やかに切り替えを行う作業が必要であったが、交通管理者のご指導・ご協力により事故・苦情もなく無事終了した。
供用後の通行台数も昨年を上回り目標値を維持しているが、短期間の比較で喜んでばかりはいられなく、今後の有料道路の管理・運営を勘案すると、利用者のニーズを的確に把握し、更に利用増につながる戦略・効果的なPR方策の検討が必要ではないかと考えている。
今回、有料道路(2期)供用のPRとして、新しいいろいろな取り組みを実践してきたが、私的な意見として自治体・地域が一体となって行うイベント行事・民間施設の案内などその広報紙にタイアップして行うのがより効果的ではないかと思う。
作成された情報誌・リーフレット等、利用者からの問い合わせの頻度から関心度の高さが伺えることが理由の一つである。
また、九州では珍しい最大級のループ橋ということでマスコミ各社が取り上げ報道していただいたのも十分なPRにつながったと手ごたえを感じている。
今はただ、三瀬トンネル有料道路の利用増を願うばかりである。
最後に三瀬トンネル有料道路(2期)の実施・供用にあたり多大なるご指導・ご協力を賜りました関係各位の皆様に厚くお礼申し上げます。

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