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心の健康を保つ~ストレスと如何に上手く付き合うか
義経俊二
1.はじめに
厚生労働省が5年に1 回行っている労働者健康状況調査によれば、「仕事や職業生活でストレスを感じている」労働者の割合は、2007 年では約58%と、今や働く人の約6 割はストレスを感じながら仕事をしている。特に、30 歳代・40 歳代のいわゆる働き盛り世代のストレスが高く、この傾向は男女ともに共通している。
私が勤務する福岡県庁においても、メンタル疾患による長期病休者は増加しており、「心の健康を保つ」ことが喫緊の課題となっている。

2.ストレスとは

ストレスとは、一言でいえば、心身に負荷がかかり、緊張を強いられること。現代社会で生きる以上、ストレスから逃れることはできない。ストレスを感じる自分を責めたり恥じたりすることを止め、ストレスが自分にあることを認めたうえで、うまく付き合う自分
なりの方法を早く見つけ出すことが重要となる。
日本人がストレスに弱いのは、「臭いものにフタ」的な対応で自分自身のストレスの原因を直視したがらないことに起因しているとの説もある。自分のストレスはどのような物か、その原因が何かを見極めることが始まりとなる。
「解決できることは、解決のための努力」をすれば良いが、「自分の力だけではどうすることもできないこと」があることも世の中の事実である。そのような扱いが難しいストレスは、とりあえずそのまま受け入れておくしか無いのだろうが、上手な受け入れ方、受け流し方があるように思う。
以下に生身の人間として「ストレスとどのように上手く付き合えば良いのか」自分の方法論に触れながら考えてみたい。

3.ストレスの付き合い方
(1)ON とOFF の切り替え

私自身が決してストレスに強い人間では無いことを自覚している。若い頃は「常時戦闘態勢」であっても何とか健康は保たれていたが、40 台半ばを過ぎた頃から体に不調を覚えることもあり、何か自分を守る方法を見つけなければその内に大変なことになると思い知
らされた。
いくつか試して行く中で見つけた方法が、いわゆる「ON とOFF の切り替え」を自覚的に行うことだ。「まだまだ頑張れ道半ばの自分」と「既に十分に頑張っている自分」を使い分けること。このやり方は今でも割に上手く行っている。

(2)「OFF」の時の過ごし方

「ON」とは、仕事の仕方、仕事中の心構えといったことなので、ここでは特に触れない。「OFF」の時の過ごし方について述べる。
一言でいえば、「OFF」の時は自分に優しくすることだ。年長になればなるほど、褒められることはほぼ無くなるので、意識的に自分を褒めたり、自分に褒美を与えることが大事だ。
また、いくら忙しくても、一日に数分は体に風を通し自分を取り戻す。自分なりの風の通し方を見つけた方が良い。

○目の前の心配事を消す

人間の脳は考えまいとすると余計に考えてしまう傾向があるため、脳に何か「心に良い」ことを考えさせておくことが有効だ。私は数年前に「目の前の心配事を立ちどころに消す方法」を発見した。それは「より大きな心配事」を見つけ出し、脳に考えさせることだ。(ここは半分冗談、半分本気)
例えば、「宇宙の始まりは何か、終わりはあるのか」このテーマは人類の究極の心配事の一つだろう。
私は、もう1 年近く大栗博司博士の「重力とは何か」(幻冬舎新書)を、読み返している。「ブラックホール」とか「超弦理論」とか分からないことばかりだが、難しいことを分かりやすく伝えようとの博士の意欲に支えられて、「分かりたい」好奇心が自分ながらも不思議に継続している。この時、目の前の心配事は完全に忘れている。山深いキャンプで満天の星空を眺めている時の不思議な感覚に近い。
余談だが、このような技術解説本の中で意外にも、「短命かもしれないと知り、生きることには価値があって、自分には成し遂げたいことがたくさんあることを知った。」(スティーブン ホーキング博士)といった勇気が沸く言葉に出会うことができたりする。

○体を動かすこと

運動によりストレスが軽減することは、経験上明らかである。ここでは、自転車の話をしたい。
数年前、義兄からイタリア製の自転車をもらったが、全く興味も無かったため放置していた。2年ほど前、春の陽気に誘われ、何となく乗ってみたところ軽やかな走りが実に心地良く、それほど苦労もせず長い距離を走ることができ、驚き感動した。いわゆる日本の「ママチャリ」とは、違う乗り物であることを知った。
書物によると、有酸素運動である自転車走は、リズミカルな運動で、「幸せホルモン」ともいわれる「脳内物資セロトニン」の分泌が進み、不安・ストレスをやわらげ鬱病予防に効果があるとのことだ。
また、つい最近テレビで知ったが、NO(一酸化窒素) は、私達の体内で自然につくられており、特に心血管系の健康にとても重要な働きをする物質らしい。30 歳を過ぎるとNO の産生能力が低下するので、食事や運動などでNO の産生を助ける必要があるとのこと。1 回20 分以上の有酸素運動を週3 ~ 4 回目安に行うとより効果的であり、何もしない状態と比べると、なんと10 倍も高いNO レベルになるらしい。
自転車走が、体にも心にも良いと感じていたが、科学的根拠があったのだ。自転車がある暮らしを末永く続けて行きたい。

余談だが、来春には、自分自身への褒美として、より長いツーリングが可能となる「ロードバイク」の入手を画策しており、予算確保のため家内に「自転車の美脚・美容効果」など、さりげなく吹き込み仲間に引き入れようとしているところである。

(3)「心の薬」を準備しておく

私は言葉の力を信じている、良い言葉は人を自由にする。
文豪・偉人・達人などの言葉は他に譲ることとし、ここでは身の回りの普通の人々が何気なく発した、或いは身の回りの人から聞いた「ちょっといい言葉」を紹介しておきたい。私は、時々読み返して、心に風を通している、いわば「心の薬」である。
○自分は、ひとつの褒め言葉で1週間頑張れる。→人を褒めるプロになる。
○「うまく行かなくて当たり前」と思っておく。落ち込まないけど、あきらめない。そして、うまく行ってもいい気にならない。
○ これ一報です、今対応策考えています、でき次第すぐ来ます。~上司がどこに着目するか、どこを怒るのか、探れる。格段に次の手が打ちやすい
○目に見えぬところの丁寧さが、最後には表に出てくる。
○ 部下の仕事のあら探しをしていないか。部下であっても礼儀あり。親しき中にもお世辞あり。
○失敗したら即「切り替え」悩んでも3 時間、次の企画を考える。
○見返りを期待してやるなら、しない方が良い。
○学習したという自信が、色んな局面で学習する姿勢に繋がる。
○ 人間は譲れた方が器は大きい。しかし、ある一線より先は絶対に譲らない。いつでも戦う用意はあるとの心構えを持つ。この心構えは確実に相手に伝わる。
○待ったら駄目だ、体が固くなってイレギュラーに対応出来ない(高校野球監督)
○自己実現欲は良いことだが、それのみでは駄目。自己実現の成果を社会、他者に還元すること、社会の向上に役立てようとする意識が大事。
○「言うべき時に言うべきことを、言うべき分量だけを言う」「言うべきでない時は、言うべきでないことを言わない」
○正しいことは控えめに言う
○人より一時間余計に働くことは尊い、努力である、勤勉である。だが、今までよりも一時間少なく働いて、今まで以上の成果を上げることも又尊い。そこに人間の働き方の進歩がある。
○仕事をする上で必要な「三つのかく」がある。汗をかく。恥をかく。文字をかく。
○あの時君がいてくれて、本当に良かった。

4.終わりに

公共施設の予防保全と同様に、日頃からの能動的な健康管理が求められている。
これまで述べた私なりの方法が万人に効くとは思わないが、少なくとも一度試して見る価値はあると思う。各人が自分に合うストレスとの付き合い方を早く見つけ、健康な日々が送れることを願っている。

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