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LED 照明の道路照明への適用と今後の展望
大石睦男

キーワード:LED、道路照明、トンネル照明

1.はじめに

平成23 年9 月15 日に、LED 道路・トンネル照明導入ガイドライン(案)(以下、「LED ガイドライン」と言う)がとりまとめられました。九州地方整備局においても、順次 LED 道路照明・トンネル照明の導入検討を行い、省電力化及び維持費の低減を図っているところである。今回、LED照明の道路照明への適用と今後の展望について記載していく。

2.LED 道路照明の特徴
LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)道路照明の特徴として、これまでのHID(HighIntensity Discharge:高輝度放電)道路照明として一般的な高圧ナトリウム灯と比較すると次のことが言える。
・環境負荷が少ない CO2 排出量約30%削減
・長寿命 約60,000 時間(15 年) 2.5 倍
・電気料金が安い 約半分(300 → 200W 契約)
・照明率 高い(約1.5 ~ 2 倍)
また、照明灯具(照明器具+光源)の基本構造に大きな違いが見られ、光学特性の違いとなっている。具体的にはHID 照明は、1 つの灯具に存在する光源(ランプ)が1 つだけなのに対して、LED 照明は光源(LED 素子)が多数存在する。また、LED 照明灯具のLED 光源からの配光制御は、反射板方式、レンズ方式、又はこれらの組合せ方式と、様々な配光方式の灯具が存在している。これらの特徴により、LED 道路・トンネル照明灯具が自由度のある開発となっており、LED ガイドラインの灯具技術仕様においても、光学特性の大部分の規定がなされていないことにつながっている。
上記で述べたことから分かるように、LED 道路・トンネル照明は、従来のランプ出力(W)や、光の広がり(配光)による灯具型式(KSH 等)の規定ができない。そのため、LED ガイドラインでは、目的物(LED 照明灯具の仕様)を明示した設計及び発注では無く、道路条件(道路に求める照明性能指標等)を設計条件とした性能規定での設計及び発注となっている。

 

3.LED 道路照明の導入状況
平成23 年9 月にLED ガイドラインが作成された後、九州地方整備局管内においても、LED 道路・トンネル照明の導入が本格的に始まり、平成24年度末までに整備されたLED 道路・トンネル照明は、LED 道路照明灯が約500 灯(約1.7%)、LEDトンネル照明が約1700 灯(約7.4%)となっている。今後も、新規の道路照明及び既存照明施設の更新に合わせ、導入を進めていく予定である。

4.LED 道路照明の基準等
平成21 年度から22 年度にかけて、九州地方整備局において、フィールド提供型技術募集により、LED 照明技術が道路照明灯として適用できること、及び適用する照明灯具が複数メーカで満足することを確認した。また、平成22 年11 月にLED 道路・トンネル照明に関する実証実験への参加者の公募及び技術に関する意見の募集を行い、平成23 年1 ~ 2 月に実施した実証実験の結果などを基に、LED ガイドラインが取り纏められた。LED ガイドラインは、LED 照明技術を道路・トンネル照明に適用する場合の基本的条件、照明設計の手法、LED 照明灯具の技術仕様などを示すと共にライフサイクルコスト算定や導入手法などの考え方を示すことで、道路・トンネルにおける適切な照明環境を確保しつつLED 照明技術の的確で円滑な導入を図り、道路・トンネル照明の省電力化及び維持費の低減を目的としている。
なお、トンネル入口照明等の設計条件タイプは、技術的に適用できる照明が確認されておらず、LED ガイドラインの規定には含まれていない。

5.LED 道路照明導入時への基準の適用
 LED 道路・トンネル照明工事の発注時には、LED ガイドラインの灯具技術仕様により構造的確認及び光学的確認等を的確に行う必要がある。これはLED 道路・トンネル照明が導入初期であり、またHID 照明のように仕様が十分規定されていない状況であり、不的確品の確実な排除を目的としている。発注者としては特に、LED 灯具の構造確認に加え、製品試験の結果等による灯具の光学特性の確認を行う必要がある。写真4 ~ 6 には、工場におけるLED 照明灯具の試験の一部を載せている。また、LED 照明灯具の光学特性から計算される性能指標(平均路面照度等)、LED モジュール及びLED モジュール制御装置の定格寿命については、発注時に十分確認を行うべき項目として運用している。

  

6.LED ガイドラインによる照明設計等
道路照明施設設置基準・同解説では、各照明施設における性能指標(規定値)と推奨値が規定されている。LED 照明工事は性能規定での発注であり、その値を明確にする必要があることから、設置基準における性能指標(規定値)のみならず、推奨値も、契約上の規定値として扱っている。表. 1に設計対象項目と設計計算方法の関係を記載しており、光束法は定格光束と照明率、逐点法は定格光束と光度値により算出する。

表. 2 には、LED ガイドラインに基づき、工事発注で求める照明灯具の光学データ、照明計算等の提出資料を記載している。2 項で述べたとおり、LED 照明の光学特性は、従来のHID 照明のように規定されていないため、業者からの提出を求め確認することとし、照明灯具の光学特性による照明計算も確認することとしている。

7.今後の展望と基準等の整理
LED 道路・トンネル照明は、省電力及び維持費の削減のため、急速に導入が進むと考えられる。これに際して、基準等のさらなる整備を行い導入時の品質確保や設計及び発注の明確化が求められる。LED ガイドラインは、LED 照明技術やコストの動向を踏まえて改訂を継続して行うことになっている。最新技術の動向調査を行い、追加又は改訂検討が求められる項目を次のとおり記載する。
(1)設計条件について
1)設計条件タイプのパターン追加
実際の道路は、現在のLED ガイドラインの設計条件より多くのパターン(形状)の道路が存在する。交差点等の設計条件タイプのパターンを追加することが求められる。
2)技術的な適用性を確認できた設計条件タイプの追加
最新技術の動向調査により、技術的な適用性を確認できた設計条件タイプ(主に高出力のLED照明が必要な設計条件タイプ)を追加することが必要である。
3)LED トンネル基本照明の設計条件タイプ
 同様に光束法で平均路面輝度を算出する連続照明と比較して、LED トンネル基本照明の設計条件タイプでは設置間隔が設定されていない。このことは、現在のLED ガイドライン設計条件では1灯当たりの定格光束等の光学特性が大まかにも定まっていないことを意味する。LED トンネル基本照明は、標準スパン型、広スパン型など、メーカにより開発状況が様々なことが要因であるが、設置間隔又はそれに変わる規定を追加する必要がある。
4)LED トンネル入口照明の追加
トンネル入口照明は、基本照明の10 ~ 20 倍の路面輝度が必要であり、LED ガイドライン発出時には、技術的に適用できるLED 照明は困難であると記載されている。LED トンネル入口照明の設計条件タイプについても、最新の技術動向の調査結果により、LED ガイドラインの規定に追加することが今後求められる。
(2)照明設計について
1)設計標準値
LED 道路・トンネル照明は、定格光束等の規定が無いため、照明設計に用いる光学特性が定まっておらず、各メーカ毎の特性を用いている。LEDガイドラインでは、設計標準値の記載はあるが、それは概略値であって、詳細設計に用いることができる値では無い。最新技術の動向調査を行い、設計条件タイプ毎の定格光束及び照明率等を取り纏めることにより、現在の設計標準値に変わるものを設定する必要がある。
(3)灯具技術仕様について
1)LED モジュールの光束維持率の明確化
 LED ガイドラインに記載のあるLED モジュールの寿命の光束低下70 % は、JIS C8155 白色LED モジュールの定義に合わせ記載されている。また一方で、LED 道路・トンネル照明設計上考慮した実環境下での光束低下は80%としている。規定の明瞭化のため、LED 道路・トンネル照明に使用するLED モジュール寿命の光束低下及び初期光束維持率の補正率80%とした誤解を招かない記載とした方がよい。
2)LED トンネル照明の定格寿命の見直し
LED ガイドラインでは、LED トンネル照明のLED モジュール及びLED モジュール制御装置の定格寿命は、それぞれ現在6 万時間と規定されている。LED トンネル照明灯具は、LED 道路照明灯具と比較して放熱特性に優れているため、より長時間の灯具が一般的となっているため、最新技術の動向調査により、より長い定格寿命(9 万時間程度)に見直す必要があると考える。
3)LED 道路照明灯の耐雷サージ性能規定の見直し
LED 道路照明灯の耐雷サージは、現状JIS C61000.4.5 に規定するクラス4 の条件のコモンモード(耐地間)4kV で設定されている。しかしトンネル照明とは違い、屋外に設置されるLED 道路照明灯については、現実的により高い条件(10kV程度)が必要であり検討すべき項目と考えられる。
4)設計寿命の検証方法、根拠資料の明確化
LED モジュール及びLED モジュール制御装置の設計寿命は、LED 照明灯具納入時において、将来に渡る信頼性評価を行うものであり、LED 道路・トンネル照明工事の中で、一番重要な確認項目の一つとなっている。LED ガイドライン改定時には、より具体的な業者提出資料及び寿命確認方法の事例を記載することにより、納入業者より提出させる設計寿命の根拠資料を明確化することが望まれる。
5)自由度のある調光率の導入
LED トンネル照明の調光率は、LED ガイドラインでは、現在1/2 及び1/4 のみの規定だが、LED 照明技術の特徴である自由度のある調光率が導入されれば、夜間又は深夜における維持費削減が見込まれる。各メーカ側の製品も、発注時に指定する任意の調光率に対応することが望まれており、本機能を標準化することが、省電力化及び維持費の削減ために必要となっていくと考える。(例:基準輝度2.3cc/㎡のトンネルの場合、夜間は輝度1/2 低減の1.15cd/㎡に調光し、さらに深夜に輝度1/4 低減とすると最小規定値0.7cd/㎡を下回るため、深夜調光ができない状況である。自由度のある調光として31%調光を行うと、深夜時に路面輝度0.7cd/㎡が実現できる。)
(4)発注関係について
1)総皮相電力の条件明示
LED 道路・トンネル照明では、省電力による維持費の削減が求められている。最新技術の動向調査により設定された照明灯具の総皮相電力を条件明示することにより、道路に求める明るさの性能規定に加え、省電力化を必須条件として求めていくことが望ましい。
2)新たな発注方式の導入
LED 道路・トンネル照明は、灯具の光学特性が規定されていないため、工事発注前の設計では、コンサルタント業務により各メーカの技術調査が行われている状況である。詳細設計付き工事等を行うことにより、工事発注前の事前設計で、各メーカの技術調査を行うことを省略でき、このような新たな発注方式の導入が必要と考える。
8.おわりに
LED 道路・トンネル照明は、国や都道府県道路において、急速に導入が進んでいきます。一方で、ベンチャー企業や海外なども含め多数の製品が今後供給されていくことになると思われます。このため、LED 道路・トンネル照明の導入に際して、適切に品質確保を行うとともに、設計及び発注の設計条件の明確化のためにも、今後も基準等の検討をさらに進めていくことが重要になります。

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