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地域高規格道路「中津日田道路」
本耶馬渓耶馬溪道路の供用開始に寄せて
大澤藤和

キーワード:地域高規格道路、中津日田道路、供用開始

1.はじめに

中津日田道路は、大分県中津市と大分県日田市を結ぶ延長約50㎞の地域高規格道路である。
本路線は、北九州・大分の都市圏を結ぶ東九州軸と、佐賀・久留米方面と中津市を結ぶ北部九州横断軸の重要なクロスポイントに位置しており、九州横断自動車道と建設中の東九州自動車道とを連結することで循環型高速交通ネットワークの形成を図るものである。
本路線全区間の整備が完了すれば、中津市から日田市までの所要時間は約50分となり、整備前に比べて30分以上の時間短縮効果が見込まれるなど、県際を越えた様々な地域間交流と県北部の産業集積を促進する道路として、早期完成が期待されている(図-1)。
ここでは、中津日田道路の整備状況と平成24年3月31日に供用開始した本耶馬渓耶馬溪道路の概要について報告する。


2.中津日田地域の現状と課題

中津市は、周防灘に面した重要港湾中津港を有し、ダイハツ九州㈱に代表される活力ある企業が数多く立地しており、医療面においても県北地域の基幹病院として中津市民病院の建設が行われるなど、生活・産業資源に恵まれた人口増加都市である。一方、市南部は、ほぼ全域が耶馬日田英彦山国定公園に指定されており、青の洞門や羅漢寺、深耶馬溪に代表される豊富な観光資源に恵まれた地域でもある。
こうした多彩な資源を活かすためには、物流効率化や生活圏拡充を支援する広域的な道路整備が必要であるが、広域交通網の整備の遅れによって、魅力ある地域の資源が十分には活用されていない現状となっている。
中津市と日田市とを結ぶ唯一の幹線道路である国道212号(現道)においても、2車線改良が完了しているものの、落石等の要防災対策箇所や線形不良箇所が点在しており、災害や事故等発生時のリダンダンシー確保が大きな課題となっている。
また、朝夕の通勤時間帯や観光シーズンには、市街地や観光地周辺での慢性的な交通混雑が発生するなど、定時制の確保が困難であることも問題化している。
こうした諸問題を解決するため、中津市と日田市とを結ぶ新たな高速幹線道路となる中津日田道路の整備が急務となっている。


3.路線の概要と指定状況

中津日田道路は、平成6年12月に計画路線の指定を受けた後、優先度の高い区間から順次事業に着手している(表-1)。
現在までに起点側の約33㎞区間(重要港湾中津港~中津市耶馬溪町大字大島)を事業化しており、このうち平成20 年度末に中津港線②及び中津道路(定留さだのみIC~伊藤田いとうだ)IC、L=3.6㎞)を、また、平成23年度末に本耶馬渓耶馬溪道路(本耶馬渓IC~耶馬溪山移IC、L=5㎞)をそれぞれ供用開始したところである(図-2)
未着手の区間は、耶馬溪町~山国町間(L=9㎞)と山国町~日田市間(L=10㎞)の2区間となっており、これらの区間についても早期事業着手を望む意見が県民・産業界など各層から寄せられている。

4.本耶馬渓耶馬溪道路の整備状況

本耶馬渓耶馬溪道路は、平成8年度に事業化され、用地取得後、平成12年度から本工事に着手した。
完成2車線の自動車専用道路(設計速度80㎞/h)で、区間延長は5㎞。完成までに16年の年月と180億円の事業費を要している(図-3)。
当該区間の大部分が耶馬日田英彦山国定公園の特別地域を通過するため、自然環境の保全には細心の注意を払って整備を進めてきた。また、山間部を通過するため、トンネルや橋梁といった構造物の比率が高く、工事の難易度も高かった。
以下に、当該区間における代表的な整備事例と
開通式の状況について簡単に紹介する。

(1)西谷川の付替
平成14~15年度にかけて、本耶馬渓ICの施工に伴い必要となる西谷川の付替工事を行った。
工事実施に当たっては、学識経験者からなる「西谷川環境保全対策研究会」を立ち上げ、河畔林の保全、寄り州(瀬、淵)の形成、緑陰復元のためのネコヤナギによる水際緑化等のアドバイスをいただきながら整備を進めた(写真-1)

(2)山移大橋
平成14~18年度にかけて、山移川を渡河する「山移大橋(L=88.6m)」の新設工事を行った。
橋梁型式は、鋼下路式曲弦ワーレントラス橋。
現地の地形条件から、支間中央部に支保工の設
置が困難であるため、ケーブルエレクション直吊
工法を採用した(写真-2)。

(3)はなぐりトンネル
平成19年度末に、大分県が管理するトンネルでは最長となる「はなぐりトンネル(L=1,869m)」の本体工事に着手した。
起点側・終点側両坑口からの掘削が可能であったことから、本体工事を2 本に分けて発注し早期完成を目指したが、当初想定した以上に土質が悪く湧水量も多かったため、本体工事の完成は平成22年12月末となった(写真-3)。
掘削で発生した約20万㎥のズリは、トンネル前後の盛土材として有効利用した。

(4)開通式
平成24年3月3 日に、本耶馬渓耶馬溪道路(L=5km)を供用開始した(写真-4)
開通式には、広瀬勝貞大分県知事をはじめ、中津市・日田市の両市長、地元選出の国会議員、地元関係者等、総勢180名が出席した。
当日は、朝からぐずついた天候だったが、テープカットをする頃には晴天となり、晴れやかな門出を迎えることができた(写真-5)。

5. おわりに

高速交通ネットワークの整備は、地域間交流を促進するだけでなく、産業・経済の発展や救急医療を支える重要な施策であり、その充実は大分県の“悲願”となっている。
県政の基本目標である『「安心」「活力」「発展」の大分県』を実現するためにも、中津日田道路の一日も早い全線完成に向け、より一層努力していきたい。

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