「平成21年7月中国・九州北部豪雨に伴う
【緊急災害対策派遣隊】活動報告」
~ 九州地方整備局 第1号【TEC-FORCE】派遣 ~
【緊急災害対策派遣隊】活動報告」
~ 九州地方整備局 第1号【TEC-FORCE】派遣 ~
九州地方整備局 与那嶺淳
九州地方整備局 永谷恵一
九州地方整備局 永谷恵一
1.はじめに
国土交通省は地球温暖化等による災害リスクの増大に対し、危機管理体制の強化を図ることを目的として、平成20年4月に「緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)」を創設した。
TEC-FORCEは、大規模な自然災害等が発生した際において、被災地における被災状況の迅速な把握、被害の発生及び拡大の防止、被災地の早期復旧その他災害応急対策に対する技術的な支援を実施している。
本報告は、平成21年7月の中国地方での豪雨に伴い「緊急災害対策派遣隊」として九州地方整備局より派遣された2名の活動状況を報告する。
2.平成21年7月中国・九州北部豪雨の発生
7月19日から26日にかけ、西日本で梅雨前線の活動が活発になり、山口県防府市の防府観測所では7月の平均降水量の2倍近い549㎜に達するとともに、1時間雨量、24時間雨量ともに観測史上1位を更新する降雨となった。
3.中国地方における土砂災害の概要
この豪雨に伴い、山口県、鳥取県、島根県、 岡山県、広島県と中国地方の広範囲にわたり、 土砂災害発生件数は378件、死者20名となる大規模なものであった。
特に被害が集中した山口県では、全体の約51%の土砂災害が発生するとともに、19名の尊い命が犠牲となった。
4.九州地方整備局第1号TEC-FORCEの派遣
このような状況に鑑み、九州地方整備局は被災地の早期復興を支援するため、九州地方整備局で初となるTEC-FORCE(隊員2名)を中国地方整備局へ派遣した。主な支援内容としては、土砂災害発生箇所における現地調査及び直轄砂防災害関連緊急事業の申請に関する技術的支援を実施した。
5.支援活動報告
派遣期間における支援活動としては、主に山口県防府市内に発生した大規模な土石流災害に関する災害申請の支援及び現地調査を実施した。概要を以下に記す。
1)現地調査
1月31日(金)には申請予定箇所である山口県防府市内における土砂災害発生状状況の現地調査を実施した。
発災から1週間程度経過していたが、現地は未だ復旧の兆しはなく、被災者からは早期の応急対策を望む声が聞かれた。
また、大規模な土石流に襲われた特別養護老人ホーム(ライフケア高砂)では、身の丈以上の巨石が点在しており、土石流の 破壊力の強さ及び凄惨さを改めて感じた。
今回の土石流災害箇所は数箇所で発生しており、山腹崩壊を起因とするもの、また 渓流を浸食して土石流化したものなど、その凄まじい移動形態を現地でまざまざと見せつけられた。
2)直轄事業区域外における直轄砂防災害関連緊急事業の実施
「 平成16年新潟県中越地震」「平成20年(2008年) 岩手・宮城内陸地震」等、近年直轄砂防事業区域外において大規模な土砂災害が発生している状況に鑑み、平成21年度より大規模な自然災害の発生により緊急に砂防工事等の事務を行う必要があるときは河川事務所等において当該事務を行えるよう地方整備局組織規則が改正されたことから、当該地区において組織規則改定後全国初の直轄砂防事業区域外における直轄砂防災害関連緊急事業の申請を行い、早期の応急対策の実施を行った。
今回の直轄砂防災害関連緊急事業申請は2回行い、第1回申請時に3地区、第2回申請時に2地区の採択が行われた。
<第1回申請>
【採択日】
・平成21年7月31日
【採択箇所】
・防府市大字下右田字勝坂
・ 〃 高井字神里
・ 〃 真尾字上田
【採択額】
・約10.1億円(3箇所)
<第2回申請>
【採択日】
・平成21年8月7日
【採択箇所】
・防府市大字奈美
・ 〃 大崎
【採択額】
・約6.8億円(2箇所)
※九州TEC-FORCE隊員は本申請に関する技術的支援を実施
6.TEC-FORCE派遣にて得た課題
今回の土砂災害対策に伴うTEC-FORCE派遣において、いくつかの課題及び同様の土砂災害が発生することを想定した準備を行う必要があることを感じたので以下に示す。
1)TEC-FORCE派遣に関する課題
TEC-FORCEの派遣を行う際は、受け入れ先における対応が困難であることから、派遣先において隊員の装備・宿泊場所の確保等隊員のロジを派遣地方整備局において行う体制及び準備が必要。
2)TEC-FORCE 隊員の訓練
TEC-FORCE はいつ派遣されるか分からない状況であることから、各隊員の役割(任務)を事前に明確化し、その準備及び専門的な訓練を日頃から行うことが重要であると思われる。
3)更なる技術力の向上
現地での調査を基に、設計への応用を素早く反映できるよう、日頃から技術力の向上を考えた業務の実施を心がけることが重要と思われる。
7.最後に
今回の派遣において、生の災害現場に触れることによって今後の業務により一層の励み、更には活力を与えられ一技術者としての使命を深く自覚したところです。
最後に、今回の災害復旧支援で多大にご支援を頂いた中国地方整備局の方々を含め、関係各位に深く感謝の意を表すとともに、被災地及び被災された方々の1日も早い復興を心より祈念致します。
TEC-FORCEの内容については、HPをご覧ください。
http://www.mlit.go.jp/river/sabo/sabo_tec_force.html