民間活力導入による一村一品クラフト公園整備
大分県土木建築部都市計画課長
工 藤 昭 二
1 はじめに
一村一品クラフト公園は,昭和60年に面積40.0haで都市計画決定され,そのうち23.5haが建設省の施策事業としてのクラフトパーク事業として事業認可を受け、平成3年春の開園をめざして建設が進められている。
その建設場所は,南に別府湾を望み,北は国東半島の大自然に抱かれた速見郡日出町に位置しており,県都大分市から約30km,車で約45分,大分空港から約25km,車で約40分,日出町の中心部から約4km,車で10分の国道10号沿いの丘陵地にある。
2 一村一品クラフト公園の概要
大分県は全国に先駆けて平松県知事の提唱による「一村一品運動」を展開しており,この運動は県下の市・町・村が,自立自助の精神で地域の特性や資源を十分に生かしながら,人づくり,ものづくりを行い,全国的に,また,国際的にも通用するものに育てあげていきながら地域の活性化を図る地域づくりの運動である。
一村一品クラフト公園は,このような背景の中で,文化活動を通じて郷土文化に対する意識の高揚,地域コミュニティの形成等の拠点,国際性豊かなグレードの高い都市公園として,楽しみながら創造性も磨ける参加学習型のテーマパークとして建設に着手したものである。
しかしながら,この公園が単に一村一品運動の成果を展示するだけのものであれば来園者は,単に運動についての表面的な部分を学ぶだけであり,精神的なものまでは感じることはできないであろう。
そこで一村一品クラフト公園においては,「体験する」,「参加する」,「学ぶ」,「作る」,「遊ぶ」,「発見する」といった行為を通じて,運動の基本的理念を具体化する施設を公園全体に配置している。
3 民間活力の導入
一村一品クラフト公園は,昭和60年に広域公園として都市公園の事業認可を受けスタートした。しかしながら,より魅力のある施設を揃え,一人でも多くの人々がこの公園に集まり,地域文化に触れながら楽しい一日を過ごせるような公園施設を整備するには公共事業のみでは限界があると考えられ,民間の有する資金力,幅広い企画力,演出力,運営ノウハウの導入が不可決であると判断し,民間活力の導入方策について検討することになった。
その結果,昭和63年10月にキャラクター商品,ギフト商品の最大手である㈱サンリオを中心に,県,日出町の2公共団体および金融機関,地元マスコミ機関,地元交通機関の共同出資による第三セクターの㈱ハーモニーランドが設立され,種々の公園設備の設置に参画することとなった。
第三セクター㈱ハーモニーランドは,都市公園法に基づく公園施設設置許可を受け,かつ,都市計画法に基づく都市計画事業認可(特許事業認可)を受け,また,建設資金としてNTT-C型事業として,日本開発銀行の無利子融資等を積極的に活用し,平成元年1月より施設整備に着手している。
県事業と第三セクター事業の整備分担としては表ー1のとおりであるが,基本的には,一般的公園施設部分は県事業,極めて演出性の高い有料施設部分の整備を第三セクターが施工することになっている。
4 施設の概要
① パーキングエリア・エントランス
第1駐車場から第3駐車場まで全体で約1,500台の車が駐車でき,4ケ所のチケットブースでは,季節毎に変わる行事に合わせていろいろなアドバイスも行う。
② ハーモニービレッジ
一村一品館,キャラクターショップ,クラフトマンの家,ミニプラント(ジュース,アイスクリーム等の製造行程を見せる),インフォーメーションが含まれ,入園者がすべて集まる場所であり,キャラクターによるパレードもここで行われる。
③ 豊の国館
北側の斜面にそびえたつこの豊の国館はレストランであるが,食べるだけの場所でなく仲間や家族が楽しい時間と空間を共有する場所でもある。
④ 自然のハーモニー館
森に住む動物たちや木々たちが,歌ったり踊ったり。「人と自然の調和の大切さ」をテーマに,最近のSFXとロボトニックによる素晴しいミュージカルショーが繰り広げられる。
⑤ 神話と伝説の宮殿
丘の上に建つファンタスティックな宮殿で懐しい神話と伝説の世界が舞台空間で繰り広げられる。
⑥ 夢のタイムマシン
3D立体映像,サラウンド効果による立体音響,ムービングシート等,あらゆる特殊効果を駆使して時間と空間を超越していく夢の宇宙船です。
⑦ ハーモニートレイン
「ハーモニーランドの楽しさ」と「大分の自然に触れながら園内を一周する森林鉄道。
⑧ ―村一品ボートライド
水流によりボートが移動しながら,かわいいキャラクターと一緒に楽しい冒険旅行が体験できます。この旅行で一村一品運動の「こころ」を発見できます。
⑨ フェスティバルステージ
素敵なオリジナルショーや,大分の伝統芸能を毎日行っている野外ステージ。
⑩ ピクニック広場
明るい太陽のもと,さわやかな風や季節の花の中で持参の弁当を広げられる語り合いの場所。
5 一村一品クラフト公園の位置付け
近年都市においては,生活のゆとりや余暇時間の増大に伴い人々のレクリエーション活動は,うるおいや憩いを自然の中へ求め,今までのように与えられた現境だけでなく,いかにしてそれを利用し,参加するかというふうに変化しつつある。
こうした中で,四季を通じて各種のスポーツ・レクリエーションや様々な体験・学習などの活動ができるリゾート地域の整備が全国的に展開されている。
本県でも,昨年の10月には別府くじゅう地域の概ね15万haの圏域が総合保養地域整備法に基づく承認を受けたが,一村一品クラフト公園はこの別府くじゅうリゾート構想における重点整備地区の一つである「日出・一村一品クラフトエリア」の内の中核的施設として位置づけられている。
6 期待できる波及効果
一村一品クラフト公園には,総事業費約170億円という投資による経済普及効果のほか,地元出身者だけに限られる230名予定の雇用機会の創出,地場産業や,観光,商業,交通などの関連産業における需要の拡大・地域のイメージアップ等,直接,間接の波及効果が期待されている。
7 おわりに
最近,全国的にテーマパークの建設が行われており,九州地区においても長崎のオランダ村をはじめ,北九州市のスペースワールド等既にオープンしている。また,各地で大型のイベントや海外旅行等で観光客の要求が高度なものになっている。一村一品クラフト公園が中途半端な施設内容では相手にされないであろうと思われる。従って,如何にして公園独自の魅力,個性を持つかということが成功の決めてになると考えている。
また,一村一品クラフト公園の集客力を向上させるためには,公園へのアクセスとしての道路網の整備が必要であり,現在建設中の九州横断自動車道,北大道路等幹線道路の早期完成が不可欠なものとなり,完成することにより九州全域はもとより,関東,関西からの観光客を呼びこむことが可能となると期待している。
※ 附表
一村一品クラフト公園のこれまでの経緯
・県事業
都市計画決定 昭和60年11月29日
面積 44.0ha
事業認可 昭和60年12月2日
面積23.5ha
事業期間 昭和60年度~平成4年度
事業費 56億円
都市計画決定 昭和60年11月29日
面積 44.0ha
事業認可 昭和60年12月2日
面積23.5ha
事業期間 昭和60年度~平成4年度
事業費 56億円
・第三セクター
㈱ハーモニーランド設立
昭和63年10月22日
都市公園法に基づく公園施設設置許可
昭和63年11月24日
都市計画法に基づく都市計画事業認可
昭和63年11月25日
事業期間 昭和63年度~平成2年度
事業費 約113億円
㈱ハーモニーランド設立
昭和63年10月22日
都市公園法に基づく公園施設設置許可
昭和63年11月24日
都市計画法に基づく都市計画事業認可
昭和63年11月25日
事業期間 昭和63年度~平成2年度
事業費 約113億円