期待が膨らむ日出バイパス開通
国土交通省 大分工事事務所
副所長
副所長
岡 元 次 男
国土交通省 大分工事事務所
工務第二課 設計係長
工務第二課 設計係長
渡 辺 幹 夫
1 はじめに
日出バイパスは,JHが管理する九州横断自動車道及び一般有料道路宇佐別府道路と大分県道路公社が管理する大分空港道路を結ぶ地域高規格道路であり,一般国道10号のバイパス区間である日出バイパス(L=9.0km)と一般国道213号のバイパス区間である大分空港道路延伸部(L=2.5km)からなります。今回の開通により,空港アクセスの定時性・高速走行性・安全性を向上させ,別府市や湯布院町・国東半島等の観光地振興など地域の発展に寄与するものと期待されます。また,今年は2002FIFAワールドカップ開催の年でもあり,大分スタジアムで3試合が予定されていることから,開催時における選手団・応援団・観戦客が現道の渋滞に影響されない輸送路としても期待しているところです。
2 事業の概要
日出バイパスは,延長L=9.0km(トンネル部1.7km,橋梁部1.3km,土工部6.0km)であり,暫定2車線(幅員10.5m,設計速度80km/h)の第1種第3級の自動車専用道路として平成3年度に事業化,平成7年度に用地及び橋梁工事に着手後,約7年間で今回の開通を迎えたものであります。なお,その総事業費は約570億円となっています。
3 新技術・新工法を積極的に採用
本バイパスは,別府島原地溝帯に平行する路線であり数本の活断層に接近し,これらの活断層から派生した多くの断層帯を通過する路線であります。このため工事中の安全はもとより供用後の通行車両の安全確保における斜面の安定に関し,新技術・新工法を多く取り入れ対処しております。特に仁王地区(No.375~No.395間)は地層の乱れ及び巨大転石の集中が顕著であり,斜面の安定・落石対策について各種対策を実施しています。その中で,切土部ではアンカー工の採用による切土法面の安定化,盛土部では超軽量盛土(EPS工法)による過重軽減工法を採用,また自然斜面に点在する転石対策として,転石破砕・ロープネット工法・高エネルギー吸収型落石防止工(RC工法・RSS工法)を採用しています。この他にも工期短縮・コスト縮減及び工事の効率化対策として各種二次製品による施工や新技術を採用(表ー1参照)しています。
4 霧発生による通行規制の縮減
本路線では,標高200m以上の区間において別府湾からの気流による滑昇霧が頻繁に発生する特殊な地域であり,交通の支障となることが予測されるため,霧対策区間(約5km)において防霧ネット・LED方式の視線誘導標及び高視認性区画線を設置し,霧発生時による通行止め時間の縮減に努めています。
5 周辺環境に配慮した植栽計画
植栽計画にあたっては,周辺環境との調和ならびに景観の配慮を基本とし,各地区毎の設計テーマを設定する中で樹種選定を行っています。バイパス全体の基本テーマとしては,日出町豊岡の銘木「魚見桜」が知られていることの他,現空港道路の路傍にサクラが採用されていることから,路線全体のテーマ樹種に「サクラ」を選定。また,日出IC近隣には日出藩主木下氏の菩提寺である「松屋寺」があり日本一の巨大ソテツで有名である。このためソテツを日出ICの指標植栽に選定した。その他路傍部においても周辺環境に応じ,自然環境・生活環境・生態系保護・病虫害防止等々を考慮した植栽計画で実施しています。
6 おわりに
本バイパスは,2002FIFAワールドカップ開催まで供用という目標もあって,用地及び工事着手から7年間という短期間で完成できたことは,工事施工業者の努力はもとより,用地提供者ならびに地域住民の理解と協力を早期に獲得できたことが最大の教訓といえます。今後,他事業の取り組みにおいてもこの教訓を踏まえ,PI方式の導入や新技術・新工法採用によるコスト縮減など「よりよいみちづくり」を演出していきたいと考えております。