一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
S28年災害から50周年のパンフレットについて

(前)国土交通省 九州地方整備局
河川計画課 課長補佐
国土交通省 九州地方整備局
 熊本河川国道事務所 技術副所長
大 塚 強 史

1 はじめに
平成15年7月に九州地方を襲った梅雨性の集中豪雨は,九州各地に大きな爪跡を残す結果となりました。福岡県においては,福岡市を流れる御笠川の氾濫により,博多駅周辺を中心に4,000戸以上の家屋浸水が発生。飯塚市,穂波町においても,遠賀川支川穂波川において計画高水位を超える洪水が発生し,内水により飯塚市街部を中心に4,000戸以上の家屋浸水が発生しました。さらに,熊本県水俣市においては土石流により15名もの尊い人命が奪われました。
くしくも昨年の平成15年は,昭和28年6月,西日本地方を襲った長い治水史上まれにみる未曾有の大洪水から50年目の節目の年でありました。
この50年目の節目の年を向かえるにあたり,当時の洪水の貴重な体験や資料を後世に継承するために,洪水体験者への聞き取り調査,写真等の資料収集を行いました。またこれをもとに一般住民の方へ過去の洪水を教訓として生かしてもらうためのパンフレットの作成を行ったのでここに紹介いたします。

2 昭和28年水害の概要
昭和28年6月25~29日にわたり梅雨前線は,九州北部を中心に移動と停滞を繰り返し,この前線上を通過する低気圧も通常とは異なる動きを示した。このため25日の9時前後からの雨は,筑後川流域で日雨量で400mmをこえ,時間雨量80mm以上の記録する所も見られた。連続雨量は,大山川流域で平均960mm,筑後川中流域で700mm,遠賀川流域で600mm,大分川流域800mm等を記録した。特に筑後川流域では,死者行方不明者1,028名,家屋全壊流失8,968戸,堤防決壊58箇所等災害史上未曾有のものでした。

3 昭和28年災害の記録整理
1)調査の概要
昭和28年の災害から50年の年月を数え,当時調査解析された洪水・水害に関する記録の資料の所在が不明確になることから,これらの資料の調査と所在リスト作成を行いました。さらに,実際に災害を経験された方々が少なくなるなか,今後の洪水時の教訓として活かすために,貴重な水害体験をされた本人から聞き取り調査を行いました。また,これらの調査を行うにあたって,学識経験者,報道関係者,災害が甚大であった筑後川,遠賀川,白川等の国土交通省(当時建設省)の事務所長経験者で構成する懇談会(会長:佐藤幸甫元筑後川工事事務所長)を設け,意見を聴きながら作業を進めました。

2)昭和28年災害の記録リスト作成
昭和28年災害に関する写真,関連新聞記事,気象関係資料,被災状況資料,河川技術的資料等について国・県・市町村の行政機関,マスコミ関係,個人等の所有するリストの作成を行い,今後の洪水対策及び水害時おけるソフト対策等へ活用できるようにしました。

3)昭和28年災害体験者の体験の聞き取り調査
昭和28年災害体験者については,筑後川含む6河川で災害体験されていた方にアンケートをお願いし約60名の方から回答をいただき,このなかから45名の方に直接面会し水害体験についてお話をお聞きしました。

4)昭和28年災害パンフレット作成
収集した資料やインタビュー調査結果をもとに,当時の水害状況写真と水害体験談を中心とした『語り継ごう一50年の節目を迎えて一』(筑後川,遠賀川,菊池川,白川,嘉瀬川,大分川)のパンフレッ
トを作成しました。ここに,パンフレットに掲載している水害体験談の一部を紹介します。

7 あとがき
昭和28年水害に関する作業は,平成14年から約1年半かけて進めて来ましたが,実際に体験した方からの話をお聞き,水害の恐ろしさを肌で感じた思いがしました。
また,この作業を進めている時期に,福岡市と飯塚市等で甚大な被害が発生しました。治水事業の遅れと合わせて,水害が起きた際の気象・水害に関する情報を河川管理者である我々が日頃から流域の住民に,河川に関する情報をきちんと説明していくことの重要性を改めて認識しました。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧