道守九州会議活動と「みちづくし in KUMAMOTO」の概要
道守九州会議 事務局長
[㈳九州地方計画協会 副理事長]
[㈳九州地方計画協会 副理事長]
森 将 彦
道守くまもと会議 代表世話人
[熊本の道を語る女性の会 代表]
[熊本の道を語る女性の会 代表]
中 村 幸 子
九州幹線道路協議会 道守分科会長
[国土交通省九州地方整備局 道路調査官]
[国土交通省九州地方整備局 道路調査官]
奥 村 康 博
1 はじめに
近年,市民団体やNPO,企業など民からの道への働きかけを通した暮らしや地域づくりへの活動が活発になってきている。清掃美化や育花樹,安全安心な道また円滑な道への調査実践,道の歴史や文化の発掘・保全・活用などその活動の幅や主体も多様である。九州ではこのような様々な道への働きかけを行う人々(道守)が交流・連携を深め,関係行政との連携を持ちつつ道守活動の普及や市民意識への働きかけなどを行っていくため平成16年2月に「道守九州会議」を発足し活動を展開してきている。また,平成16年10月にはこれら九州の道守と行政が初めて交流・学習する第1回の道守九州会議交流会「みちづくしin KUMAMOTO」を開催し多彩な議論と連携の絆の深まりなど多くの成果を得た。
ここでは,これら道守九州会議の活動や「みちづくしin KUMAMOTO」の概要を報告する。
2 道守九州会議とその活動概要
「道守(みちもり)」,万葉集の歌にも出てくる言葉で,道での清掃美化,育花樹,安全安心また円滑な道への調査実践道の歴史や文化の発掘・保存・活用などなど,道を舞台にあるいはテーマに様々な活動を行っている人々を「道守」と名付け,九州のこのような道守が行政を含めネットワークし交流・連携し,学び・励まし·理解しあいながら道守活動の普及や利用者意識への働きかけなどを行っていこうと「道守九州会議」を設立。また,より地城に密着した活動推進にむけ各県でも道守会議を組織し,九州7県で稼動している。
(1)道守会議の活動概要
九州会議,県会議には世話人や事務局など役員体制を置き,活動計画などは行政も参加し検討。この意思疎通自体も民と行政の相互理解を育む大きな効果を有している。
以下に主要な活動事例を報告する。
① 機関紙「道守通信」の発刊
各地の道守活動や関連する動向,関係行政情報,道の話題などからなる機関紙「道守通信」を季刊として頒布(道守会議の収益事業)。
② 道守ホームページでの情報活動
各道守や関係行政,一般者をつなぐ情報ツールとしてホームページを開設し情報活動を展開。
(道守HP http://www.michimori.com/)
③ 道守九州会議交流会
道守九州会議の全体交流・学習の場として年一回開催。初年の平成16年度は熊本で道守や関係行政の皆様など約350名が参加し開催。(後述)
④ 個別活動
a 道守パネル展
各道守の活動を広く紹介し意識啓発や活動動機培養などを促すパネル展で,九州の主要な道の駅での巡回展示や各種シンポなどの催事時展示を行った。
b 道守体験事業
新規場所での道守発掘や新しい仲間募集,また児童や親子道守の発掘育成などにむけ行政と連携し九州の各地で体験事業を実施。
c 行政との交流活動
国県,市町,村など関係行政と道守が地域レベルで問題意識などを交換する意見交換会や現場学習会,道路施策報告会などの交流・学習活動を各地で実施。
d シンポなどの学習,啓発活動
関係行政などと連携しシンポ,フォーラムなどでの学習を深める活動やラジオ,チラシなどでの啓発活動を推進。
⑤施策テーマ活動
九州の道路施策を担当する九州地方整備局と共同し道守活動に関連する施策テーマ活動を推進。
a 「とるぱ(フォトスポット&パーキング)」
道筋の美しい景色などのフォトスポットと安全円滑に駐車できる近傍の駐車場情報をセットで旅行者等にインターネットや携帯端末にて提供し,現地での案内標識や駐車場での案内板などの管理者施策と併せ計画的な観光やドライブ支援をはじめ迷惑駐車や迷走運転防止,ひいては地域の観光振興などにも役立てていこうとするもので,平成16年12月にホームページを開設し情報募集と提供を行っている。
開設を記念したフォトコンテスト(12/21~2/28)には620点(405駐車場)の応募をいただき4月8日に入選作発表を行った。
今後も定期的なコンテストやユーザーからの人気投票,ランキングなどの趣向もおりまぜながら募集と提供を行っていく。
とるぱHPトップページ(http://www.torupa.com/)
b 「シーニックバイウェイ」
道筋の景観や環境,美しさの創出維持を基本に沿線の自然や景観,歴史,文化,食・産物,考古,催事などの地域資源を,民と行政が力を合わせ発掘保全,維持,活用し地域の誇りや観光振興,地域の元気に活かしていこうとする「シーニックバイウェイ」への九州での取組みを模索するため「シーニックバイウェイ九州・研究会」を設置し,この2月3日に第一回の研究会を開催。初回研究会に地域から参加した宮崎,佐世保,小国,湯布院と九州の中枢都市・福岡の天神博多の5地域を研究素材に具体研究を深めることとなった。
また,この研究会は行動への想いある地域などはいつでも参加いただけ,各地での実践などにも積極的に連携していくこととしている。
(2)道路行政での関連する連携動向
前節のような民サイドの道守の連携活動とも呼応し,’’道路管理者の行政側も連携し民の道守活動と向きあっていこう…”との九州地方整備局の呼びかけで九州幹線道路協議会(会長:九州地方整備局長,国や県などの関係機関で構成)に「道守分科会」が平成16年12月に設置されたのを皮切りに各県の幹線道路協議会(会長:土木部長,国や県市などの関係機関で構成)でもすでに宮崎,大分,鹿児島の3県で設置され,民の道守活動と行政の連携をより強化する枠組みが整いつつある。
これら国,県から市町村まで根を張った民と行政との連携と協働への枠組形成は,地域づくりなどへの地域総合力を大きく育てる契機にもなると期待している。
3 みちづくしin KUMAMOTO
「みちづくしin KUMAMOTO」は道守九州会議発足初年度の第1回交流会として九州地方整備局道守九州会議,道守くまもと会議,くまもと道のフォーラムが共催し平成16年10月15~16日に熊本市において開催した。
道守九州会議代表世話人の樗木九州大学名誉教授,熊本県知事代理の古田出納長,幸山熊本市長,くまもと道のフォーラム代表の坂本熊本学園大学長そして岡山九州地方整備局長からの挨拶による開会セレモニーで幕を開き,分科会討議,記念講演,全体報告会,交流集会へと初日プログラムを進めた。
16日(土)は午前に熊本城ぐるりんめぐり,豊前及び薩摩街道を探訪する徒歩やバス視察を,そして,午後の一般市民も交えた「全九州対抗爆笑かごかきレース」を最後に閉幕した。
(1)分科会(みんなで語ろうみちづくし)
分科会は次の6テーマを設定。
①「清掃美化・育草木」
“美しく快適なみちづくり地域づくり”
“美しく快適なみちづくり地域づくり”
②「歴史・文化遺産」
“歴史文化からのみちおこし地域おこし”
“歴史文化からのみちおこし地域おこし”
③「景観・アート」
“美と感動のみちづくり地域づくり”
“美と感動のみちづくり地域づくり”
④「楽しみ・賑わい」
“楽しみ賑わいからのみちおこし地域おこし”
“楽しみ賑わいからのみちおこし地域おこし”
⑤「暮らしと交通」
“都市や地域の交通課題への挑戦”
“都市や地域の交通課題への挑戦”
⑥「きらめき創造と観光振興」
“地域資源を磨き活かした観光振興’
“地域資源を磨き活かした観光振興’
各分科会の座長や報告者には九州各地で活躍される市民団体やNPO,企業,行政,観光団体,学識者など33名の多彩な皆様と約300名の参加者を交え活発な討議を繰り広げられた。
各分科会での議論の様子や骨子はここでは省略する。
(概報は道守九州会議機関紙「道守通信 vol4,又は
道守HP[http://www.michimori.com/]内の交流会紹介コーナーを参照」)
道守HP[http://www.michimori.com/]内の交流会紹介コーナーを参照」)
(2)記念講演
記念講演は「自然を愛する会」で海外を含め年に400もの登山を主催され,また大分から熊本までの参勤交代の「みち」を27年問多くの小中学生と一緒に歩いておられる地元熊本の”阿南誠志”氏に講演をいただいた。
200名を超える児童と指導や世話にあたる大学生が一週間,共に生活し歩く行事。旅の途中途中での地域の方々とのふれあいや,大学生のリーダーと小中学生がグループを作り共に旅を成しとげること,また揃いの参道笠をかぶり300年の歴史を感じ歩くことなどなど,街道という歴史資産を舞台に多くの児童がふれあい,体験し,学習し,同期・先輩後輩・兄の大学生などと共通の生活体験の中から社会性や人間性を磨いていくこの催しには毎年参加する児童が多く,新たに薩摩街道や豊前街道を歩くプログラムも始められるなど,好評ゆえのご苦心も多いお話など,貴重な活動の様子の報告は参加者にも大きな感動を与えていただいた。
(3)全体報告会
全体報告会では早稲田大学客員教授の大石久和氏からの講話「道は暮らしの舞台」の後,大石教授を座長に各分科会座長が報告者の形で報告,討議を行った。
各分科会での活発な討議から「みち」の持つ様々な役割や価値,地域づくりや暮らしとの関わりなどについて道守がより積極的に考え行動し,行政との連携を含めたネットワーク活動を通じ,種々の道守活動がより地域に活きる仕組づくり,また,元気に円滑に楽しくやりがいを持って推進できる環境づくりなども今後の道守会議の重要な活動視点であることが確認された。
(4)交流集会
全体報告会で初日の日中プログラムは終了し庭に会場を移し交流集会を開催。道守くまもと会議中村代表世話人の挨拶と安藤熊本河川国道事務所長の乾杯のあと,時間の関係で持ち越した「道守九州会議総会」の報告事案を済ませ交流歓談に移行。各テーブルでは九州各地から集まった約150名の道守や行政関係者で熱気ある懇談が続けられた。地元道守のハーブ演奏,各県道守や行政関係者からの地域報告など多彩な交流の中で賑やかに楽しい時間が流れた意義深い交流集会であった。
4 おわりに
道を舞台にあるいはテーマに活動する市民団体やNPO,企業,個人など様々な民の関係者が集う道守九州会議は全国でも始めての幅広いネットワーク活動組織体として歩みを始め1年数ヶ月。会員規模も約22千人名(約490団体・個人)の皆様のネットワークに成長している。また,より地域に根ざした活動母体としての道守県会議の稼動や,国から県,市町村までの道路行政側での連携体制の稼動など,官民協働体制の枠組みも強化されつつあり,地域での道守活動の普及さらには地域づくり施策へと協働活動も幅広い領域へと進化している。発足2年目の平成17年度は協働の枠組みをより強化しつつより多くの道守が交流連携を深め協働の道づくりを通じた地域づくり九州づくりに積極的に向きあっていく所存で,より多くの道守の皆様の参加を待っています。