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昭和51(1976)年6月20日、大分県大分市生まれ。地元の小・中・高等学校を卒業後、「福岡リゾート&スポーツ専門学校」に入学し、水泳のインストラクターを目指す。卒業後、大分市のスポーツクラブに1年半勤務。25歳でライフガードとなる。平成14年「大分ライフセービングクラブ」発足。平成17年特定非営利活動法人(NPO)ウォーターセーフティーマネージメント協会を立ち上げ理事に就任。29歳。
ホームページ http://www.wsma.or.jp/
取材・文/西島 京子
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ビーチクリーン活動で約1時間清掃を行う
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大分県大分市大字神崎浜にある田ノ浦ビーチは、大分市民の休養とレクリエーションの場となる総合公園として、夏は海水浴客でにぎわう。ここはかつて大分市唯一の自然海岸だったが、海浜の浸食を受け続け海岸としての魅力を失っていた。そこで平成4年度から国・県・市の合併事業による田ノ浦公園整備事業が展開され、現在のような美しい人工海浜となった。
この田ノ浦ビーチで夏の間、海の安全を守っているのが「大分ライフセービングクラブ」の面々で、代表の尾田智史さんは、昨年、NPOの「ウォーターセーフティーマネージメント協会」を立ち上げ、「水辺の安全管理初級指導者養成講習会」を開催。子どもだけでなく、大人を対象とした水辺の環境活動や安全教育に取り組んでいる。
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10月29日別府市上人ケ浜で海辺の自然体験教室「みんなの磯」を開催(WSMAと国土交通省別府港湾・空港整備事務所の共催)。小学生29名とスタッフ含め総勢約60人が参加した
12月3日上人ケ浜で開催のオーシャン・ミュージアムには、41人の子供が参加した
スマトラ沖大地震の追悼チャリティイベント「願波」のひとこま
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「大分ライフセービングクラブ」は「いつでも海を愛する。誰でも参加できる活動」をモットーに、平成14年9月11日、サーフィンを愛する仲間6人で発足された。海の楽しさ、厳しさ、自然の大切さ、素晴らしさを伝えたいと、夏場の海水浴シーズンのビーチガードだけでなく、救助技術の指導、水泳指導、水辺の環境保全、ライフセービング競技大会など、地域と密着した活動を地道に続けて来た。
平成15年には、海岸を子どもたちと一緒に清掃するビーチクリーン活動が環境美化活動として認められ、大分県の「ごみゼロ推進隊」の一団体として認定され、翌年の5月には、日本ライフセービング協会の加盟クラブとなった。
「我々の活動は海がメインなんですが、オーシャンミュージアムという子どもを対象にしたビーチクラフト教室では、最初にゴミが海に集まる過程をパネルやアニメーションで教え、ゴミだらけの海や川では遊びたくないよね、清掃活動をしようねと話を進め、ゴミを拾うだけではなくリサイクルして何かを作るところまで体験させています。昨年の5月と12月、そして今年の2月26日に3回目を開催しました。場所は上人が浜や田ノ浦ビーチです。2回目の時には、スマトラ沖大地震の追悼チャリティイベント「願波」をしました。また、3年前に大分県竹田市直入の芹川リバークリーン&レスキュー講習会に参加し、地元の人たちと河川でデモンストレーションをし、子どもたちとラリー形式のゴミ拾いをしました。大野川で活動されている方々とも出会いましたので、地道に川と海の連携を取り合って活動していきたいと思っています」
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クラブ員の面々
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尾田さんは19歳のころサーフィンに出会い、海の楽しさを知ると同時に自然の怖さを知ったという。「波に飲まれ、もうダメだと思ったことは何度もあります。毎年何人ものサーファーが海で亡くなっています。スポーツクラブで働いていた時、知人が『ライフガードのいない海では泳げない』と言うのを聞いて、その存在意義を強く感じました。事故がなければ存在さえ気付かれない仕事ですが、いることで多くの命を守れる素晴らしい仕事だと」
ライフガードは文字通り命を守る仕事、ライフセービングは水辺の事故をなくすことを目的とした活動のこと。ライフセーバーはそれに携わる人々の名称だ。そして「大分ライフセービングクラブ」のライフセーバーたちは、これまで何人もの命を救ってきた。
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PWCトレーニングの様子
※PWC=パーソナルウォータークラフト(水中オートバイ)の略語
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現在「大分ライフセービングクラブ」のクラブ員は10人で、イベント時のボランティアを含めると20人いる。NPO「ウォーターセーフティーマネージメント協会」を立ち上げてからは周囲の人の目も変わってきた。
「NPO法人として更なる活動の充実と向上を図るために一般の方を対象に水辺の安全管理の技術を指導する指導者養成講習会をひらくようになりました。道のりは険しく長いでしょうが、私にはライフガードの地位を確立したいという思いがあります。海が好きでこの仕事が好きだからと、冬場はバイトで稼ぎ、夏の2カ月だけプールや海水浴場監視の仕事をする彼らの、命や暮らしを守る義務が私にはありますから」
にこやかに話していた尾田さんの表情が引き締まる。ライフガードのスキルアップはまだまだ続きそうだ。