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駐車場問題に関する検討について

建設省九州地方建設局
道路部道路計画第一課長
並 河 良 治

1 はじめに
近年,都市の中心部における駐車場問題がクローズアップされてきており,特に路上駐車の問題は深刻であり,交通容量の低下に伴う交通渋滞や交通事故等の大きな原因の一つとなっている。
こうした問題を解消するために駐車場整備に関する調査,その結果に基づく駐車場,駐車場案内システムの整備が進められてきたが,路上駐車や駐車場周辺の交通確保や安全の問題など量的な確保だけでは解決しない問題が残されている状況にある。
自動車が本来持つ機能を充分にし,都市内の高度なモビリティーを支えるためには,「走行する空間」としての道路整備とあわせて「停まる空間」としての駐車場を一体的・総合的に整備することが求められる。本文では,このような問題を総合的に把握し,道路管理者の立場から駐車場施策の検討を行ってみた。

2 駐車場の現状
(1)需要の実態
ピーク時における,駐車需要を駐車場所別にみると,昭和60年度の道路交通センサスによれば,帰社・帰宅目的を除く,目的地での駐車需要は700万台,そのうち,路外駐車需要が540万台(全体需要の約77%)となっている(表ー1)。
また,駐車需要を駐車施設別にみると,構成比として最も高い施設は事務所(52.5%),次いで無料の路上駐車場(23.8%),空き地(11.5%)とその大半が路外の専用駐車場,ないしは無料の路上の駐車場になっており,一時預り駐車場や駅前広場の占める比率は極めて小さくなっている。

(2)路上駐車の実態
全国ベースでみた路上駐車需要のシェアは,昭和60年で23%になっている。これを都市規模別にみると大都市と地方都市ではかなりの格差が見られる。それは図ー1にあるように,三大都市では昭和60年度の路上駐車需要のシェアが約41%であるのに対して,地方中心都市では約21%と,2倍近い格差が見られる。
また,平成2年度との比較で見ると,対象都市全てにおける路上駐車需要のシェアは,昭和60年度値より下がっている。ただし,三大都市と地方都市のシェアの格差は依然として同程度の傾向を示している(図ー1)。

また,路上駐車のうち,大部分は違法駐車であると考えられる。図ー2に道路延長あたりの瞬間路上駐車台数を見ると,瞬間路上駐車台数が最も多いのが大阪市で53台/km,次いで東京区部の17.6台/kmとなっている。そのうちで違法駐車台数の占める割合は,東京都区部では約88%と,大阪市では約86%と,路上駐車の大半が違法駐車であることが分かる。

2 駐車問題の明確化
(1)駐車場利用特性
次に,路上駐車の特性について,福岡市と長崎市においてドライバーに対して行ったアンケート調査から考察してみる。図ー3は路上駐車を便利と考える理由について,目的地までの近さ,待ち時間,料金等について,質問事項を集計したものである。それによれば,路上駐車の利便性は,平日・休日ともに目的地まで近いことを第一にあげている。このことから路上駐車の利便性は,料金抵抗や待ち時間よりも,目的地への近接性が最大のキーファクターとなっていることを示している。

(2)駐車違反検挙の実態
違法路上駐車の取締り件数の推移を,昭和54年を100とした時の各年の指数の推移を見たものを,図ー4に示す。年度によっては,指数が下落している地域もあるものの,概ね検挙件数は増大傾向を辿っている。また全国との比較でみると,東京は昭和58年以降全国指数を上回り,大阪は昭和63年以降全国指数を上回る状況にあり,その乖離が大きくなっていく傾向にある。

また,東京都と大阪府における違法路上駐車取締り件数と,違法路上駐車台数をみると,平成2年度における東京都の瞬間違法路上駐車台数18.5万台に対して,日平均取締り件数は1,300件となっているに過ぎず,実際の違法路上駐車に対する取締り件数比は1%に満たないのが現状となっている(表ー3)。

路上駐車は,原則として認めない方向で法制度上も実際の施策上も取組みがなされてきたが,路上駐車の完全な取締りは上に見るようにほとんど不可能な状況であり,路上駐車は違法路上駐車として顕在化しているのが現実の姿であるといえる。
(3)利用者ニーズと駐車場
駐車場の利用ニーズは,利用者のトリップ目的によって異なるものと考えられる。たとえば,通勤目的と買い物目的の利用者とでは,駐車時間も利用駐車場も異なるものと考えられる。利用者のトリップ目的別の駐車場の利用ニーズを整理したものを表ー4に示す。たとえば,通勤・通学目的の利用者ニーズは,駅・バス停等のターミナルにおける長時間の駐車ニーズであり,一方,買い物等の私用目的での利用者ニーズは店舗等の目的施設に近接する場所での短時間の駐車ニーズであり,また業務目的の利用者ニーズは商業施設等の直近での荷降し・荷さばきのための短時間の駐車ニーズとなっている。
駐車場問題は,基本的には駐車場整備が多様な利用者の駐車ニーズを充足するに足らないために,利用者の側で路上駐車を選択し,こうした路上駐車は従来型の取締りによっては一掃することができずに,違法路上駐車の形で顕在化している点にあると考えられる。

3 駐車政策への一提案
(1)駐車問題の概観
駐車問題を概観すると,概ね次のように整理される。
◦従来の道路整備は,車の走行空間としての道路の整備に重点が置かれているために,短時間の駐車のための空間整備が駐車ニーズを反映したものとなっていないため,違法路上駐車を生じさせている。
◦休日の買い物目的等の利用者,および荷おろし等の業務目的の利用者は,目的施設近辺での駐車ニーズが顕著であり,かつ特定の時間帯に集中して駐車ニーズが発生する等の駐車需要特性を示すために,必ずしも現有の路外駐車場が有効に利用されることなく,需給に時間的・空間的アンバランスが生じ,超過需要分の駐車ニーズは路上駐車によって満たさていれる。
◦路外駐車場はその種類別に利用効率に偏りが見られ,専用駐車場等目的施設直近の駐車場の利用効率が高い一方で,一時預り駐車場等の利用率が低く,路上駐車を吸収する機能を持っていない。
これは,路上駐車をする理由の第1が目的施設に近いこととなっていることから,駐車ニーズのキーファクターが目的施設との距離であることにも起因することと考えられる。
(2)駐車政策への一提案
こうした駐車問題の現状を眺める時,駐車ニーズを充足するために駐車場の整備を,路外駐車場の量的拡充のみに頼っているのでは,明らかに無理があるものと考えられる。また,車の走行空間としての道路の整備に重点が置かれる以上,自動車交通が増大していくこととなり,停留するための駐車空間の不足はますます顕著になっていくものと考えられる。道路管理者の立場から駐車政策を考えていく時に,道路空間を自動車の走行のための空間であると同時に,沿道の施設とのアクセス容易性まで考えた短時間駐車が可能となるような空間としても位置付けていくような視点が必要であるものと考えられる。
具体的には次のような施策の検討の余地があるものと考えられる。
① 停車帯を念頭に置いた広幅員道路整備の促進
② 交差点近傍等で路上駐車が交通に与える影響が大きい箇所でのみ,重点的に違法路上駐車を取締る等の取締り施策の転換
③ パーキングポケット等の路上駐車スペースに関する新しい道路構造の検討
④ 路上駐車スペースの利用にあたって,利用時間長別に料金水準を定める等,利用の状況にきめ細かく応じた利用者負担の仕組みの検討
⑤ パークアンドライドによる都心部への公共交通機関への利用転換率等,都市部への自動車流入を抑制するなどの駐車需要のコントロールを含めた都市計画的見地からの駐車政策の検討

4 あとがき
増大する駐車需要に対応するための一方策として,本稿では駐車問題の性質を概観し,そのための対策の一つとして主に路上駐車スペースの活用の可能性について整理してみた。今後,こうした施策を検討する上での課題は,たとえば次のような事項が考えられる。
① 路上駐車を容認することに対する社会一般のコンセンサスの形成をどう図っていくか
② 駐車需要に対して,路外駐車場の量的拡充によってどこまで対応可能なのか
③ 道路整備の一環として路上駐車場整備を組み入れていくとき受益者負担の在り方をどう具現化していくか。

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