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開通記念1万人イベントを市民の手づくりで
~一般国道269号天満てんまんバイパス・天満てんまん橋~

宮崎県 宮崎土木事務所
 道路課長
井 上 康 志

1 はじめに
宮崎市中心部を流れる一級水系大淀川の両岸を結ぶ国道269号天満バイパス・天満橋が,平成18年3月末,開通した。大淀川は宮崎市の中心市街地を東西に貫く一級水系である。その川をひと跨ぎする橋の完成を,1万人の市民を集めて橋の上でお祝いしてもらおうとの狙いから,市民自らが主役となってNPOや行政と協働した開通記念イベントを企画し,開通直前の2日間,橋の上を市民に開放した。この取組みについて紹介する。

2 概 要
イベントは天満橋の上とその周辺を使って行われ,初日はテレビ中継を行いながら昨年の台風被害者に対する災害復興支援コンサートや1万人のキャンドルナイト,市民参加のフラワーブリッジ,カヌー教室,2日目は自転車を使った2日間にわたる多彩なイベントを繰り広げた。
(1)イベントの実施方法
イベントの実施に当ってはNPO代表で宮崎大学工学部の出口助教授を委員長とする実行委員会を設置し,計4回の準備会,計10回の実行委員会を開催し,資金調達から企画,運営を行った。
実行委員会は様々なNPO(特定非営利団体),市民団体,個人,大学,事業者が無償で参加。高校生や企業など延べ400名を超えるボランティアの応援を得て,受付,運営,人員整理,警備等を行った。また,実行委員会メンバーが地元新聞やテレビ・ラジオなどのマスコミに働きかけ,自らが出演して事前告知を行ったり,独自にデザインした50,000枚の告知チラシの配布やホームページ上でPRに努めた。

写真-1 ボランティアによる準備風景

写真-2 子どもたちも準備中

写真-3 着々と進むイベントの準備

(2)協働して苦労したこと,よかったこと
イベント半年前は,予算ゼロからのスタートであったため,実行委員が銀行から借り入れをすることも検討された。補助事業に取り組もうにも自己資金が必要だったからである。またイベントのセクション同士で予算のやり取りを巡り険悪になることもあり,前途多難な状況であった。
資金調達に当っては,基幹となる地元NPO「宮崎文化本舗」のこれまでの実績と信用が大きくものをいった。東京を本拠にする財団法人から「宮崎文化本舗さんなら応援する」との回答を得,急ぎ東京へ飛んで企画を説明し,快諾された。市民自らが様々な民間団体や大学・行政と協働し,連携する取組みが評価されたといえる。この力強い市民レベルのネットワークによって様々な難局を切り抜けられたものと考える。

(3)協働に際しての留意事項
協働に際し,もっともこだわったのは“責任の所在”を明確にすることであった。責任は実行委員全員が負い,その最高責任者は委員長である。そして課題に対する迅速な判断と解決策の決定を下す。そしてスタッフを含めて参加者の事故やけが人を出さないために,危機管理チームを独自に編成する中,みんなの心がひとつになった。
全スタッフの真剣で前向きな取組みによって,雨による多少のトラブルはあったものの,大きな事故もなく無事終了することができた。

写真-4 ボランティアによる巨大パエリア
(400人分/日)

写真-5 受付開始直後。ひと,ひと,またひとの例

写真-6 散策する親子

写真-7 橋の上は人だらけ

(4)協働による成果とその評価
結果として2日間で1万5千人もの市民が新しくできた橋のお祝いに駆けつけた。そして大人も子どもも高齢者も,開通後には自動車に奪われてしまう橋の上を2日間に渡り自由に歩き回り,橋の上から見る自然豊かな景観や,広々とした道路空間を存分に楽しんだ。恐らく一生の記念として心に刻んでもらったのではないだろうか。
またこのイベントを支えた市民による協働作業は,ひとりひとりの多様な価値観とやる気がひとつになることによって,その数倍のパワーとなって目的を達成する快感をスタッフに与えた。
実はこのパワーは数カ月後,再び発揮されることになる。
夜のイベントは,荒廃した里山の竹を使い,水を入れたペットボトルに廃油ローソクを浮かべたキャンドル10,000個を準備し,来場した市民に点灯してもらった。このキャンドルナイトは昨年9月に甚大な被害をもたらした台風14号災害復興への願いとともに地球温暖化防止キャンペーンも兼ねている。

写真-8 台風災害復興支援コンサート

写真-9 市民による点灯

写真-10 ナイトイベント
(10,000個の廃油キャンドル)

写真-11 ナイトイベント(スタードーム)

写真-12 ナイトコンサート

写真-13 ナイトコンサート

2日目は生憎の小雨模様となったものの,参加者はカッパを着込んで挑戦。親子ともども一生懸命,真新しい舗装の上を駆け抜けた。すべったり,転んだり。ここでも実行委員会スタッフも参加した市民もいい笑顔でイベントを楽しむことができた。

写真-14 ちびっこサイクルフェスタ

写真-15 わたしもガンバル!

3 おわりに
開通後は,橋を散策したり運動したりする市民の姿が後を絶たず,はじめのうちこそ空き缶や犬のフンが散見されたものの,現在でまったく見られなくなった。落書きやいたずらがないことも,この橋が市民にいかに愛されているかを物語っている。
開通記念イベントを企画した市民やNPOと県や市といった行政との信頼関係は現在も固く結ばれており,道守や風景街道といった施策を後押しする地域づくりにも積極的に関わってくる“気持ちのいい関係”が育まれている。準備期間1ケ月で3,000名を集客した8月の「Yappa!あおしまDE ナイト」をはじめ,県内各地で着々とその成果を発揮しつつある。そのパワーの源こそ「天満橋開通記念・市民イベント」ではなかったか。そのことに気付く自分に「ハツ」とするとともに,苦労を共にした市民という頼もしい「仲間たち」がそこにいてくれることを,心から誇りに思う。

写真-16 橋詰広場で休憩

写真-17 橋を散策する市民

写真-18 早朝の風景

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