都市計画道路「下郡中判田線」街路改良事業
における跨線橋架設工事について
における跨線橋架設工事について
宇佐野玄太
キーワード:下郡中判田線、跨線橋架設、送り出し工法
1.はじめに
下郡中判田線は大分市中心部より東側約2㎞に位置する都市計画道路で、道路の北側には大分市街地、臨海工業地帯が立地し、南側では九州横断自動車道 大分米良IC と接続しており、南北方向
の主要幹線道路と位置づけられている(図ー1)。
の主要幹線道路と位置づけられている(図ー1)。
当該道路は、大分市牧.下郡でJR 日豊本線とJR 大分車両センター(車両基地)により、分断されている。また道路の周辺では朝夕の通勤・通学時の渋滞は著しく、整備が求められている。
このことから、跨線橋により鉄道と立体交差し、南北の連結を図り、市街地の道路網の整備並びに高速道路とのネットワーク強化を目的として事業が計画された。
その跨線橋の架設は、平成22 年度に行われ、延長約90m、幅約20m の桁を送り出す工法で、当時、全国的に最大級の規模の施工であった。
ここでは、その架設の概要について報告する。
2.下郡中判田線の概要
施工場所 大分市牧.下郡
路 線 名 都市計画道路 下郡中判田線
事業延長 L = 840m
幅 員 W = 13.0(21.0 .44.5)m
3.下郡跨線橋の概要
(図ー2)
橋 長 L= 382.2m
幅 員 W = 13.0(21.0)m
上部工型式
鋼3 径間連続非合成箱桁、鋼単純鋼床版箱桁
鋼2 径間連続非合成箱桁、PC3 径間連結プレテンT 桁
下部工型式
逆T 式橋台、張出式橋脚、ラーメン式橋脚
交差物件
JR 日豊本線、JR 大分車両センター
4.架設工法(送り出し工法)の概要
工事名 大分・牧間下郡Bo鋼材架設他2工事
発注者 九州旅客鉄道㈱(大分県委託工事)
施工者 九鉄工業・さとうベネックJV
送り出し区間 (P3 ~ P4 間 92m)
本桁 鋼床版箱桁 (図ー3)
L = 92m、W = 21.0m
鋼材重量 1,185t
手延機 L = 88.5m、486t
連結構 L = 3.5m、94t
自走台車 480t × 3 台
従走台車 240t × 3 台
(送り出し設備図 図ー4)
5.施工上の注意点
送り出す区間が約90m と非常に長く、送り出し直下には鉄道があることから作業工程の中で、次の注意を要した。
5.1 送り出し作業(写真ー1)
1)送り出し時間の制約
架設はJR 日豊本線、JR 車両センターの列車運行がない時間帯(線路閉鎖時間)での施工となり、その時間は約140 分と、非常に短い時間での施工が求められた。また、そのうち送り出し作業については施工上の安全性確保のため、起電停止して作業を行うことから、その時間は更に短い約90 分での施工となった。
2)手延機のたわみ対策
手延機がL = 88.5m と長いことから、自重によって受け側到達時の手延機先端のたわみ量が、計算上では約3.6m あることから、手延機を持ち上げる必要があった。
3)架設時の荷重バランスの保持
本桁の端部は橋軸直角方向に対して25°の斜角があり、送り出し時に片側に傾きやすい。
また、送り出す区間が長く、重量も大きいため自走台車にかかる反力と到達側の支点となるローラーにかかる反力が逆転する箇所も考えられる。
このことから、桁を安定した状態で送り出すためには、荷重バランスを保って施工をすることが求められた。
5.2 降下作業
桁の総重量は約1,200t もあり、油圧降下装置を使用する降下作業では、均等を保って降下させる必要があった。
6.実作業の状況
6.1 送り出し作業(写真ー2)
1)架設可能な時間での対応
短時間に安全で効率的な作業を行うため、施工計画を検討し、詳細なタイムスケジュールを立てて施工を行った(以下、作業内容及び時間)。
①送り出し時間 35 分(起電停止時間内)(移動量 2.5m/ 分)
② 1 回目のたわみ処理時間 95 分
(たわみ処理量 約2m)※残りの、たわみ
処理(約1.6m)は翌日に行った
処理(約1.6m)は翌日に行った
計(①+②) 130 分(線路閉鎖時間内)
2)手延機のたわみ対策(写真ー3、4、5)
送り出し時の手延機の自重によるたわみ対策として、到達した手延機を、受梁で受け、それをセンターホイールジャッキで吊り上げる方法を採用した。また、受梁にローラーを設置し、たわみ処理を行う過程で変化する受け点の移動及び水平力を抑制した。
これらにより送り出し後のたわみ処理を予定の時間内で行うことが出来た。
3)荷重バランスの対策(写真ー6)
荷重バランスをとるためにP4 軌条設備上の油圧ジャッキ操作盤にて確認を行いながら慎重に送り出しを行った。
また、架設設計上での不均等荷重の割増は20%だが、安全性を考慮し、現場での目標は10%以内とし、施工を行った。
・送り出しステップの最大反力
4,400KN(1BOX 当たり)
6.2 降下作業(写真ー9)
送り出し完了後、橋台までH = 9m の降下作業を油圧降下装置(100t ワイヤークランプジャッキ)を用いて行った(写真ー7)。
ワイヤークランプジャッキは1BOX 当たり4台、計24 台設け、各ジャッキを連動して同じ降下量・所定荷重を保つ必要から、荷重モニター表示で全体を集中管理出来るものを採用し、施工を行った(写真ー8)。
また、ジャッキは上クランプ・下クランプの2重構造になっており、ジャッキストロ.クの盛替作業(ジャッキを掴み直す)を効率よく行った。
7.おわりに
送り出し・降下の架設作業は、約5 ヶ月の期間に計20 回の線路閉鎖で工事を行ったが、鉄道への影響もなく架設を完了できた。
現在、下郡中判田線は、橋面舗装工事、跨線橋に接続するアプローチ部の工事、交差点改良等の工事を行っている。
大分市中心部では、現在、大分駅高架化にあわせ、周辺の幹線道路の整備が進められている。
下郡中判田線も、この整備と合わせ大分都市圏の幹線道路網の一部として地域経済・産業活動を支えることが期待されおり、早期供用開始を図るため、鋭意取り組んでいきたい。