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社会実験の取り組みについて
~佐賀市日新・新栄地区交通環境改善~

国土交通省 佐賀国道事務所
 調査課長
大 成 和 明

1 はじめに
近年,「社会実験」の言葉が世間に認知され始め,現在,全国的な動きとして取り組まれている。
社会実験の定義は,種々の状況に応じていろいろと定義づけされる。その精神は,「大規模に費用を投じて事業を行うには,事前の調整や検討に要する時間がかかりすぎてしまう。その結果実施に結びつかない場合が多くある。このため、『実験』として,小規模にでもやって見る。その成果から問題点や改善すべきことを見つけながら,実施に反映させる。」といったことであろう。
その中で最も広く知られるものは山口で行われた「道の駅」の実険である。平成15年度では,高速道路の料金割引など広域的実験を始め,全国でもいくつもの取り組みがなされている。
佐賀県においても佐賀市中心市街地に近い,日新・新栄で「交通環境改善」をテーマに実験を行うこととなった。
以下にその実験の取り組みの概況と,現在の進捗状況についての報告を記する。

2 実験の目的
本実験のテーマは,交通安全の確保といった観点から,地域内の狭い街路へ入り込んでいる通過車両を排除,若しくは走行速度を低減させ,歩行者を守るための「交通環境改善」である。
歩道などの整備が物理的に困難な地域においては,従来型のハード整備だけではなく,視点を変えたハード・ソフト両面からの対策が必要である。
また,規制には,地域外の車両だけではなく,地域内に居住する人に対しても不便さを強いるなどの副作用が発生することとなる。これまでなじみが少ない,新しい対策を講じようとする場合は,地域内の居住者の同意も重要な要素である。
このため,「実験」というフィールドを用意し,講じようとする対策の効果検証と同時に,地域内の居住者への受け入れ検証といった2つが,実験の目的となっている。

3 検討協議会の構成
本地区の「交通環境改善」を目的に,関係行政及び地域内関係者から構成する協議会を設置した。メンバーは,道路管理者,県警,小中学校,PTA,教育委員会,幼稚園・保育園,子供育成会,交通安全協会,自治会及び佐賀大学教授など25名で構成し,会長は自治会会長に務めていただいた。
検討協議会は,平成14年度に2回,平成15年度の12月までに3回ほど開催した。

4 対象地区の概要
図ー1が対象地区である。

地区内には,小学校2校,中学校1校,高校1校があり,その他にも保育園,幼稚園など文教地区的な特色をもっている。周辺道路は,国道207号,208号の他,幹線市道など,交通量が多い道路に囲まれている。このため,幹線道路の交通混雑を回避する車両が,朝夕のピーク時に地域内を迂回路的に通過している。迂回の車両は,平成14年度の調査で約1千台/2hであることがわかっており,通学の児童とふくそうする形となっている。

5 対策の検討
対策案は「交通安全の確保」として,
 ① 通過車両の走行速度低減
 ② 車両総量の抑制(通過車両の規制)
を考えた。その中から,現実的な対応が可能な「ハンプ設置」,「速度規制」,「車両進入規制」を行うこととした。
ハンプの設置は,学童の通学路で,ピーク時に一番危険になりそうな箇所を選定した。図ー1に示した「●」の22箇所が「ハンプ」設置位置である。また警察により,20km/h(一部30km/h) の速度規制を行った。さらに,通過交通が一番多く入り込んでくる箇所に対して,これも警察から「進入禁止」の規制を行い,総量の低減を計画した。
以下に,今回の調査検討のフローを示す。

6 実験期間
実施はすでに開始しており、
 第1期:平成15年11月17日から12月7日
 第2期:平成15年12月8日から12月28日
の2期計6週間実施する。1期・2期の違いは,2期目では,進入規制が追加されることで,さらに交通抑制を図るものである。

7 今後の展開
実験開始前から地域の方が心配されていたことは,実験終了後ハンプを残すのか,撤去するのか,とのことである。地域内に居住される方々にも不便さを強要することとなるため,実験後の効果検証と,地城内の合意形成が,非常に重要である。
事務局にはすでに「ハンプ設置」の副次的効果として,交通騒音の減少の報告など地域の方からのご意見も多数あっている。今後のアンケート調査などでより詳しいデータを把握する予定である。
また,今回の実験は,「くらしのみちゾーン」としての指定も同時に受けているため,地区内の皆さんが,今後のまちづくりといった観点からの議論をするきっかけとなれば幸いである。

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