省エネルギーとしての常温型舗装の紹介
建設省 九州技術事務所
副所長
副所長
西 原 廣 壽
建設省 九州技術事務所
調査試験課 材料試験係長
調査試験課 材料試験係長
服 部 兼 二
日本鋪道株式会社九州試験所
吉 郷 一 美
1 はじめに
近年,我が国を含めた先進国における資源の有効利用や地球温暖化などの環境問題が提起されている。また,二酸化炭素(以下,CO2という)による温暖化を防止するため,エネルギー消費の削減が大きな課題であり,先の地球温暖化防止京都会議が開催されたのは周知のとおりである。
建設現場において直接排出されるCO2の排出量は,我が国のCO2総排出量の1~2%程度にすぎないが,建設資材の生産,運搬などの建設事業に関連する分野において排出されるCO2を考慮するとその影響は約23%程度になるといわれている。このような背景から,建設省では環境問題に配慮した建設事業の推進を図っていくこととし,「省資源・省エネルギー資材利用技術開発」の一環として常温型舗装をとりあげている。
2 常温型舗装の開発
従来の常温型舗装は,加熱アスファルト混合物に比べて耐久性に乏しく,我が国では主に部分的な補修や応急処置のための補修材料として用いられ,表層用混合物としてほとんど使用されていなかった。しかし,近年の環境問題より,常温で混合物の製造および施工ができることからCO2排出量を削減できる常温型舗装に期待が高まっている。このため,建設省では平成6~7年度にかけて建設省土木研究所を中心とし,㈶土木研究センターと民間6社,1団体との共同研究を行って,表ー1に示す5種類の常温型舗装を開発している。なお,開発された常温型舗装は以下のような特徴を持っている。
(1)重交通路線(C,D交通)の車道表層および基層に適用可能
(2)動的安定度(DS)が3,000回/mm以上
(3)加熱アスファルト混合物と比較してエネルギー消費量を10%以上削減可能
これらの常温型舗装について室内試験結果では動的安定度はいずれも目標の3,000回/mmを十分満足した値を示している。
また,土木研究所構内での試験施工では,6時間以内に交通解放が可能であることと,わだちぼれ量が5mm以下と非常に耐流動性に優れた混合物であることも確認されている。
次に,常温型舗装のエネルギー消費量とCO2削減量の計算結果を図ー1および図ー2に示す。
図ー1および図ー2より混合物の製造から施工において,それぞれの工法ともに10%以上の削減が可能であるとの結果が得られている。
3 常温型舗装の試験施工と追跡調査
新たに開発された常温型舗装は現在,全国で8箇所において試験施工が行われており,九州地方建設局管内では平成9年10月に福岡県久留米市の一般国道210号で実施されている。九州管内で施工された工法は,常温型舗装A(マイクロサーフェシング系)L=190mと常温型舗装C(セメント・改質アスファルト乳剤系)L=200mの2種類であり,それぞれ供用を開始して半年後および1年後の2回について追跡調査を実施している。追跡調査における調査項目および一連の調査による常温型舗装の供用性に関する現状は,以下に示すとおりである。
(1)調査項目
すべり抵抗値(BPN,µ)
たわみ量(ベンケルマンビーム,FWD)
縦・横断凹凸量
ひびわれ率
(2)供用性に関する現状
① 常温型舗装A(マイクロサーフェシング系)
縦・横断凹凸量,すべり抵抗値に関しては,施工直後と比較してほとんど変化はみられず,線状ひび割れがわずかに発生している程度であり,路面の状態は良好である。
② 常温型舗装C(セメント・改質アスファルト乳剤系)
縦・横断凹凸量,すべり抵抗値に関しては,施工直後と比較してあまり変化はない。セメントの収縮による横断方向の線状および網状のひび割れがみられるものの,路面状態は良好である。
4 おわりに
開発された常温型舗装は,加熱アスファルト混合物と同等またはそれ以上の施工性や供用性が期待され,しかも省資源・省エネルギーであるという利点がある。なお,本工法の適用に当たっては乳剤との適合性に優れた骨材選定が必要なこと,施工時期(気温)に配慮が必要なこと,および所定の養生時問の確保などの制約があり課題として残されている。環境保護に寄与するこれら常温型舗装の普及のためにも,今後も継続して追跡調査を実施し,供用性を確認していく予定である。