火砕流と土石流
長崎県土木部長
犬 束 洋 志
プロローグ
平成2年11月17日200年ぶりに噴火した雲仙・普賢岳は今(4月末)なお活発な活動を続けており,地域は火砕流の危険はもとより降雨による土石流から身の安全を守るため,今なお1,946世帯,7,609名の方々が不自由な生活を余儀なくされて居られます。
本誌の読者はもちろんのこと,多くの方々から私共に寄せられたご好意に対し誌上をお借りして心からお礼を申し上げます。
火砕流
火砕流とは,火口から噴出した高温の溶岩,火山灰,ガスなどの混合物が高速で斜面を流下する現象を言うのですが,その火砕流が平成3年5月26日に起こったのです。この時は負傷者1名でしたのでその恐ろしさが浸透しなかったのでしょう。
6月3日の火砕流では40名の貴い命が失われ,行方不明3名,負傷者9名,焼失・家屋被害179棟という大惨事が発生しました。
この時以降警戒区域・避難勧告地域を指定して人命への被害防止の処置が取られたのでした。
更に6月8日にはこれまでで最大規模の火砕流が発生し,影響範囲約6km2,焼失・家屋被害は207棟にのぼりました。
更に9月15日には深江町側に流れ218棟の被害が生じています。
その後も毎日のように火砕流は発生していますが,人・家屋への被害がないのが幸いです。
土石流
土石流とは,大量の土石が水をともなって急激に流動する現象を言うのが一般的です。
雲仙・普賢岳噴火に関する最初の土石流は噴火から半年経過した平成3年5月15日,時間最大28mm,日雨量109mmで発生し推定10万m3の土石で,水無川が埋塞したものでした。
これまでで最大の土石流の発生は6月30日で時間最大57mm,日雨量180mmで,この時は水無川の左岸側の扇状地を流下し,土砂氾濫区域約35万m2,堆積土砂量は約38万m3と推定されています。この土石流で住家64戸,非住家87戸が全壊あるいは半壊しています。
しばらく無かった土石流も今年になって,3月1日・15日と発生し国道,鉄道を一部埋没させていますが,この時の日雨量は,43mm,88mmと比較的少ない雨量で発生しているのが特長です。
土木の対応
地域の安全確保のため砂防基本構想を策定して地域に示していますが,その内容はダム群と導流堤の組み合わせで地域を守ろうとするものです。
しかし,いつ鎮静化するかわからない山の状況から今年の梅雨期を非常に心配しており,その対策として8万m3が補足可能な遊砂池を2箇所と流路工を梅雨までに完成させるつもりです。
更に道路交通の確保が地域経済の活性化のため欠く事が出来ないとの観点から,現在何とか交通確保している国道251号の土石流流下区域に緊急連絡橋の突貫工事を行っているところです。
むすび
いずれにしても今しばらくは火砕流と土石流と共存しながら,地域復興の基本が生活再建にあるとの認識から,私共の対策がどの様に寄与出来るかを考える毎日です。