一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
新若戸道路(海底トンネル)における沈埋工法について
森山安夫

キーワード:海底トンネル、沈埋工法、渋滞解消と物流円滑化

1.はじめに
新若戸道路は、洞海湾を横断して北九州市戸畑区と若松区を結ぶ計画総延長約4.5㎞(Ⅰ期・Ⅱ期)の自動車専用道路で、若戸大橋の朝夕の慢性的な渋滞解消と響灘地区から発生する港湾貨物を円滑に小倉方面へ輸送する目的で計画された。
このうち、Ⅰ期事業の約2.3㎞、片側2 車線(往復4車線)が港湾整備事業、街路事業、有料道路事業の合併事業として平成13 年度から事業を着手し、約12 年をかけ平成24 年9月15日に開通を迎えたところである。開通により、本道路は北九州の新たな大動脈として期待されている。
当事務所では港湾整備事業として洞海湾(写真- 1)横断部を含む若戸トンネル(約1.2㎞)の整備 を行い、海底トンネル部分は沈埋工法を採用した。
本稿は、自動車専用道路の海底トンネルとして九州初となる沈埋工法について紹介するものである。

2.計画概要
洞海湾の横断は若戸大橋が唯一のルートであったため、朝夕のラッシュ時には慢性的な渋滞が発生するとともに、響灘地区において企業立地が進む中で、若松市街地への大型車両の進入も課題となっていた。
また、台風時における通行止めのリスクをかかえているため新たな横断ルートの整備が求められていた(写真-2、3)。

 

新若戸道路整備後は、交通渋滞の緩和による物流の効率化等による経済的効果に加え、交通の分散により若松側の中心市街地への交通流入を減少させることによる安全性の向上、環境改善、生活利便性の向上等の効果が期待されている。(写真-4)

若戸トンネルは全長約1.2㎞で、洞海湾を横断する海底トンネル部(沈埋工法:延長557 m、7函の沈埋函)と、その両側の陸上トンネル部、掘割部により構成されている(図-1)。
沈埋函の大きさは、幅27.9 m、高さ8.4 m、長さは66.5 ~ 106 m、コンクリートを充填した1函の重量は約15,000 ~ 24,000 tである(図-2)。

3.沈埋トンネルの技術的特徴
沈埋工法は、トンネル本体を延長方向に分割した「沈埋函」を、陸上やドックなどで製作し、あらかじめ海底を掘り込んであるトレンチ部に沈め、函同士を水中接合しその後、埋戻しを行ってトンネル全体を完成させる工法である。
若戸トンネルは、沈埋函部をフルサンドイッチ構造、充填コンクリート、キーエレメント工法、函体継手に伸縮性止水ゴムを用いた剛結合方式を採用するなど各種新技術を採用することにより施工上の課題に対応してきた。
次に、各々の技術の特徴を述べる。
3-1 フルサンドイッチ構造
若戸トンネルでは、函体を鋼板として製作後、内部空洞にコンクリートを打設することにより、鋼板とコンクリートが一体となるフルサンドイッチ構造を採用している。フルサンドイッチ構造の特徴は、鋼板とコンクリートを合成構造にすることにより、せん断力やひずみ力に対する抵抗性が向上し、外壁が鋼板となることより漏水などによるコンクリートの劣化が防止され耐久性が高い構造となる(図-4)。

3-2 充てんコンクリートの開発・採用
従来、フルサンドイッチ構造の沈埋函へのコンクリートの充填は、自己充填性の高いスランプフローが650 ± 50㎜の高流動コンクリートが採用されている。しかし、高流動コンクリートは通常コンクリートに比べ単価が高く、管理が煩雑であるという問題があった。そこで本トンネルでは、コスト低減を図るため、使用材料、施工方法について各種調査や実寸大モデル実験を行い、スランプフローが500 ± 100㎜のコンクリートを打設時に補助的な加振を行うことで高流動コンクリートと同程度以上の充填性および品質の確保ができる充填コンクリートを開発し採用した(表-2、写真-5)。

3-3 沈埋函継手に伸縮性止水ゴムを採用
若戸トンネルは、北九州都市高速2号線と連結するためトンネルの道路法線としては洞海湾の水域に曲線(R =540m)を設ける設計となり、沈埋函7 函全てにおいて平面形状として曲線が入ることから、函の接合部の方向修正の容易性が施工管理上重要な要素となった。そこで、最終函を確実に結合させる施工として製作誤差や施工誤差を柔軟に吸収することができる「伸縮性止水ゴムガスケット」を使用する伸縮性止水ゴムを一般継手部に採用した(写真-6)。
伸縮性止水ゴムは、一般的な止水ゴムと異なり、袋状のゴムガスケット内部にモルタルを注入し、モルタルが硬化した後に水圧接合を行うことで鋼殻端面の不陸や製作誤差等の比較的大きな変形も柔軟に吸収できる特徴を有している(図-5)。

3-4 キーエレメント工法の採用
従来、沈埋工法は、沈埋函同士の連結を「水圧接合」で接続することが主流であり、水圧を利用して沈埋函端面の外周に取り付けたゴムガスケットを圧縮することにより止水し、連結する。最終沈埋函である6号函の沈設時には、沈埋函の動揺やゴムガスケットの損傷防止のため、ある程度のクリアランスが必要となり、また、水圧接合時のゴムガスケットが圧縮することによる函体の水平移動も伴うため沈埋トンネルの施工時には、
1.最終沈埋函沈設のための既設函とのクリアランス
2.水圧接合時の水平移動
が最終的に隙間として残ることとなる。この隙間部分を「最終継手」と呼び、その部分の施工は、従来「最終継手工」としてVブロック工法が採用されてきた。しかし、若戸トンネルでは、伸縮性止水ゴムを用いた水圧接合による精度管理や沈埋函自身が最終継手を兼ねるキーエレメント工法を採用した。そのため、従来工法で必要であった最終継手を省略でき全体工期の短縮が可能となるとともに大型起重船等の設備が不要となる等のメリットがある。(図-6)。

4.沈埋トンネルの施工手順
沈埋トンネルの主な施工手順(図-7)としては、

①航路の下の海底部に沈埋函を設置するため、航路利用者との調整を図りながら航路内でのトレンチ浚渫を実施した。
②沈埋函は、鋼殻内部にコンクリートを充填するフルサンドイッチ構造で沈埋函の鋼殻は陸上やドックで製作し、沈設現場近くの浮遊打設場まで曳航した(写真-7、8)。

③コンクリートの充填は、浮遊打設方式(写真-9)を採用した。浮遊打設では、陸上ヤードの拘束期間を短縮するとともに、打設区画毎に打設順序を細かく設定し、打設中の変形に対応した。

④沈埋函は一旦仮置きし、仮置き場から沈設箇所への曳航・係留(写真-10)は、航行船舶の多い若松航路を航行禁止区域とするため、航行船舶の少ない日曜日の早朝に実施した。

⑤次に沈埋函を埋設位置まで曳航後、若松航路の航路制限を短縮させるため、1タワー2ポンツーン方式を採用した(図-8)。
沈設前には浮力に対して沈埋函に海水を注水し、ウインチタワーからの遠隔操作で所定の位置に沈設させジャッキで既設の沈埋函に引き寄せ水圧接合により接合し、函渠内の海水を排水した(図-9)。

全ての継手部に伸縮性止水ゴムを採用することにより、製作、据付時の誤差を接合前に調整できるため、水圧接合後の方向修正が不要となった(図-10)。

このように、海中で函同士を接合していき既に設置済みの5 号函と7 号函の間に最終函であるキーエレメント函(6 号函)を沈設し、平成22 年8月に全長557 mの沈埋トンネル全体が貫通した(写真-11)。

貫通後、引き続き道床コンクリート、トンネル内の耐火被覆、防災付属設備、舗装工事等を実施し、陸上部とあわせて新若戸道路全体が完成した。

5.おわりに
今回、新若戸道路(若戸トンネル)の沈埋工法について報告してきたが、若戸トンネルの工事は沈埋トンネル部の他に戸畑・若松側両岸の陸上部施工があり、隣接する精密機械工場等への影響に配慮しながら工事を進めてきた。
平成24 年9月15 日の新若戸道路(若戸トンネル)の開通により、洞海湾を横断する第二のルートが実現し、若戸大橋でこれまで生じていた朝夕の通勤時の渋滞や台風時の通行止めが解消され、市民生活の利便性が向上されるとともに、北部九州、山口地域の産業・経済をささえる港湾物流の円滑化に寄与することを期待したい。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧