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新技術の普及・活用促進について~九州技術事務所での取り組み~
後田徹
栗尾和宏

キーワード:技術開発、新技術活用システム、NETIS(新技術情報提供システム)

1.はじめに
 新技術とは、「技術の成立性が技術開発した民間事業者等により実験等の方法で確認されており、実用化している技術であって、当該技術の適用範囲において従来技術に比べ活用の効果が同程度以上の技術又は同程度以上と見込まれる技術をいう。」(「公共工事等における新技術活用システム」実施要領抜粋)である。ひらたく言えば、民間で開発され、現場において利用可能な技術であり、コスト縮減、工期短縮及び品質等のいずれかにおいて従来の技術以上の技術を新技術と定義している。
 この新技術を積極的に活用促進することで、民間事業者等による技術開発の促進、優れた技術創出により、公共事業等の品質の確保、良質な社会資本の整備や維持管理、防災対策に寄与することを目指しており、このための仕組みが「新技術活用システム」(図-1参照)である。
 今回、このシステムの中で九州技術事務所としての取り組みを紹介する。

2.新技術活用システムの概要
 本システムは、民間事業者等(以下「開発者」という。)が新技術を「新技術情報提供システム(New Technology Information System)」(以下「NETIS」という。)に登録申請することから始まり、活用→事後評価→評価結果の開発者への情報提供を行い、技術のスパイラルアップを図るものである。
 特に活用にあたっては、現場のニーズ等により必要となる新技術を対象に発注者の指定により活用を行う「発注者指定型」、施工者(受注者)からの提案により活用を行う「施工者希望型」、開発者からの申請により試行現場を照会し活用を行う「試行申請型」、発注者が現場のニーズにあった新技術を募集し選考した技術の活用を行う「フィールド提供型」の4タイプがあり、それぞれのタイプで活用促進を図っている。
 また、事後評価結果を受けて、有識者等からなる「新技術活用評価会議」、「新技術活用システム検討会議」において、「有用な新技術」(図-2参照)の指定を行い、その活用を促進することとしている。

3.九州技術事務所での取り組み状況
3-1 登録について
 登録申請は、開発者が九州技術事務所において設置している「技術開発相談窓口」において、登録申請書類を揃え申請手続きを行うこととなり、登録申請書類に不備等がないことを「九州技術事務所建設技術推進会議」において審査し、NETISに申請情報として登録する。その内容は、概要・留意事項・活用の効果・活用効果の根拠・施工単価等(以下「申請情報」という。)であり、インターネット(http://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/NewIndex.asp)で公開している。
 平成23 年度の九州技術相談回数は313 回、技術件数は135 件、登録件数は41 件であった(図-3、図-4参照)。平成24 年度、九州技術事務所としては、開発者へ申請時当初にアンケートを実施し、申請者の認識を把握し、開発者の、実施要領・申請様式・様式記載例等に対する認識度に応じたヒアリングを実施し登録の効率化を図っている。

3-2 活用について
 国土交通省では、発注する工事の30%以上で新技術を活用することを目標としている。
 ここ数年の新技術活用率の推移を見ると、全国の活用率は横這い状態が続いているが、九州地方整備局の活用率は増加傾向で推移している(図-5参照)。

 新技術はNETIS(申請情報と評価情報)を検索し公共工事において活用され、新技術活用を促進するため歩掛支援を実施している。
 新技術は、標準歩掛の適用範囲外の工種がほとんどであるため、歩掛支援(平成23 年度345 件:発注者指定型活用数から標準歩掛適用技術等を除く件数に占める歩掛支援件数の割合は、9割程度)(図-6参照)を行うことで現場において積算作業の軽減を図っている。さらに、設計段階での支援として複数の新技術から現場に適応した工法を選定する支援(工法選定支援)を実施している。
 また、新技術を活用することにより工事成績で評価(有用な技術は更に高い評価)することにより更なる活用促進を図っている。

3-3 事後評価について
 各現場において活用された新技術の効果等は、発注課長、主任監督員、請負者が経済性、工程、品質・出来形、安全性、施工性、環境等の各項目の評価を実施したものが「新技術活用実施報告書」として九州技術事務所に集約される。集約された報告書は、九州技術事務所にてチェックしNETIS登録し、その結果が各地方整備局に設置されている有識者等からなる「新技術活用評価会議」において総合的に評価し有用な技術等とされることとなる。
 開発者には、この評価情報(NETISから「評価情報」として公開する)が提供されることにより、更に技術開発を進めることができる。このように新技術は活用するだけでなく、活用後に新技術の効果等を評価し、その情報を開発者にフィードバックすることにより、技術のスパイラルアップを目指している。
3-4 その他の取り組み
 (1)新技術現場説明会の開催
 九州地方整備局の各事務所の現場において、新技術の紹介や活用後の「新技術活用実施報告書」の記入方法など詳細な説明を実施し、活用の促進と適切な評価が得られるように取り組んでいる。

(2)新技術活用システム等説明会
  新技術活用方式の1つに設計段階で新技術を評価し、発注段階で新技術を指定する発注者指定型がある。この方式は、コスト縮減効果に大きく寄与することもあり、設計する立場での理解を深めるため、コンサルタント等を対象に九州7県において新技術の役割と意義の理解を深め、特に、設計段階でのNETIS情報の活用方法について説明するものである(図-7参照)。

(3)産学官との連携
  新技術の活用促進を進めるために、産・学・官による建設技術交流会や技術フォーラムの開催を行っているところである。
  新技術の種類によっては、大学との共同研究されている事例もあり、協働して取り組むことも重要となっている。
  そこで、知のシーズと行政ニーズがマッチした研究・開発について協働して九州の風土に適応した新技術の発掘と、その活用促進の方策等を研究するプロジェクトを推進することとしている。

4.おわりに
 新技術の活用促進のための九州技術事務所の取り組みについて紹介したが、新技術の更なる普及や活用促進のためには、登録→活用→活用後の事後評価について、各段階において、より適切な運用と精度向上を図ることであると考えている。また、活用されていない新技術、事後評価されていない新技術の活用促進、NETISに登録されていないが有望な新技術のシーズを発掘し登録すること等を促進したい。
 公共工事等において、新技術が活用されることにより、よりよい新たな技術が生まれ、社会基盤の形成に寄与できるように、九州技術事務所としても努力していくつもりである。

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